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旧統一教会「献金裁判2016年以降はゼロ」に弁護士反論 韓鶴子総裁の発言は解散命令請求を加速させるか

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影

7月11日、立憲民主党を中心とする第49回統一教会国対ヒアリングが行われて、全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士は「最近、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)は、教会改革のHPをリニューアルしましたが、そこに書いてあることが非常に欺瞞的ですので、客観的数字で知って頂く必要があるかなと思います」と話します。

旧統一教会は「教会改革のためのアクションプラン」をHPで掲げており、そのなかに「世界平和統一家庭連合 改革の現状」というページがあります。

阿部弁護士は「そのなかに相談件数のデータが出ています。『当法人に関する最近の相談は、全体の中では数(2~4%)とかなり少ない』『年々相談が減っていたにもかかわらず、今回の報道後に一気に増えた』とありますが、これは事実に反している」といいます。

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)HPより
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)HPより

阿部弁護士は反論として4つの点をあげます。

「1点目として全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が昨年9月に集計した、所属の弁護士が実際に事件として受任しているもの(単なる相談は含まない)で、旧統一教会がコンプライアンス宣言をしたという2009年以降の被害金額は、7億円以上あります」

「2点目として、日本弁護士連合会(日弁連)が今年の3月に出した『霊感商法等の被害に関する法律相談事例収集』では、全相談件数(762件)のうち、66.9%(510件)が統一教会に関する相談です。全相談件数のなかで『被害終期』(最後の被害を受けた時期)が、『現在も継続』と『10年以内』が229件になっています」

3点目として、今年の3月に法テラスが出した「相談状況の分析『霊感商法等対応ダイヤル』」をあげます。

「全相談(1754件)のうち677件(38.5%)が統一教会に関する相談です。677件中「金銭トラブル」が466件あり、その中で「最近の金銭支出時期」について、1年以内が167件、3年以内が60件、5年以内が61件、10年以内が116件であり、10年以内のものが404件にも上っています」(同弁護士)

「4点目として、全国統一教会被害対策弁護団は、第一集団交渉(2023年2月)~第四次(同年7月)の通知人109名のうち、「被害終期」が10年以内の方が53名(48.6%)に上っています。これらのデータから、コンプライアンス宣言以降も被害を受けている方は大勢いらっしゃる。教団はあたかも2009年以降は被害がありません。それに近いことを話していますが、実際に寄せられている相談などから、反していることが客観的に裏付けられます」としています。

献金裁判は2009年以降4件、2016年以降はゼロについて

次に阿部弁護士は「統一教会のHPは『献金裁判は2009年3月のコンプライアンス宣言により教会改革が進み、献金裁判は急減しました。宣言以降2016年3月までの7年間で4件ありましたが、16年3月以降はゼロとなっています』とありますが、非常に欺瞞的なものです」と指摘します。

「図の『献金裁判の数※』の左下に、小さな文字で『※最初の出金行為の時点』とあり、どうやらこれは最初の損害の時点を捉えたものとしており、非常に欺瞞的です」

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)HPより 黒マルは筆者修正
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)HPより 黒マルは筆者修正

「献金裁判は、2009年3月以降4件としていますが、私が知る限り(統一教会による高額献金をめぐる訴訟は)少なくとも14件、訴訟として存在しています。2009年以降だけで、統一教会側の責任が認められる地裁・高裁の判決が少なくとも、21件出されています。2009年以降の訴訟が4件しかないかのような表示は、事実に反します」(同弁護士)

「2016年以降はゼロ」の点について

「2016年以降はゼロということですが、14件のうち6件は2016年以降も訴訟が継続しています。また、2016年以降に新たな訴訟の提起が各地の裁判所でなされています。私の知る限り、東京地裁に何件か提訴されていますし(2017年に東京地裁、2018年1月に東京地裁他、同年5月に東京地裁、同年12月に東京地裁)、前橋地裁、札幌地裁でも提訴されています。ほとんどは、現在も続いています。ゼロというのは、事実に反することになります」

阿部弁護士は、具体的な数字と裁判事例をもって説明をします。被害現場の第一線で取り組む弁護士の反論は、旧統一教会の公式見解とまったく食い違っており、教団がHP上で示す数字の矛盾を、私たちはしっかりと覚えておく必要があります。

今後の献金集めは苛烈になる恐れ

鈴木エイト氏は、今後の献金集めは苛烈になる恐れを指摘します。

「5月7日の天苑宮奉献式では、27億円を使っています。最近6月にはアメリカでも、(文鮮明教祖の)三男の文顕進(ムン・ヒョンジン) 派と起こしていた訴訟、「UCI」という資産管理団体の所有権を争う裁判で、旧統一教会は敗訴しまして、それに伴って韓国のヨイドに超高層ビルがあり、土地の所有権を教団はもっていて、地上権の裁判をしていて、これもだいぶ前に敗訴しています。それが700億円の支払いで、アメリカの敗訴により、支払い猶予期間も過ぎて、700億円の支払いも迫られており、そうしたところから、韓国内などの不動産などを処分しています」

こうした理由もあり、これまで以上の日本からの献金集めの可能性が高まっているということです。

茂木幹事長に質問書

「安倍元首相の銃撃事件から1年が経ちますけども、実際、政治家との関係は何も解決していません。50年にわたる関係性を自民党は調べたのか。亡くなった人は限界があるので調査していない。疑わしい」とも話します。

鈴木氏は、6月に茂木幹事長に教団との関係について質問書を出しました。

「1年前に自民党の点検で、自民党には組織性がないと発表しましたが、『自民党はどうやって組織性がないことを調べたのか?』アンケート項目が8項目しかなく、それ以上の関係性について訊いていないのは、なぜかなどの質問をしました」

しかし「ガバナンスコードにのっとって対応しています」などという、まったくちぐはぐな回答しかなかったといいます。

「自民党としては、調べる気がないことがわかり、自分で調べるしかない」と話します。

「亡くなられた安倍晋三さんについてですが、2000年代中盤に、ある自民党系の人が選挙の応援の相談に行ったときに、その方は、支援してくれる宗教団体として統一教会もありますよ。といったら『そこはダメだ。祖父と父はつき合いがあったけど、ぼくはダメだ』と否定しています。それにもかかわらず、なぜ2013年に自ら組織票の依頼をして、2016年に統一教会の会長を首相官邸に招待までしたのか。その果てに一昨年のビデオメッセージを通じて、自ら命を奪われるきっかけになった。これは安倍さんの問題だけではなく、統一教会という宗教団体と接してから50年以上渡る関係性についてまったく調査がされていない」として、「教団を完全に排除するには、調査が必要。国としても調べた上で、こうした団体の影響のない政治、政界にしていくのかを、皆さんに考えて頂きたい」と話します。

「岸田を呼びつけて教育を受けさせなさい」の発言について

立憲民主党の山井和則議員は、6月末に幹部に向けて韓鶴子総裁が発言した内容について、文化庁に質問を行いました。

「配布資料のなかに、日本の幹部らを前に韓鶴子総裁が発言したという報道が出ております」

韓鶴子総裁「岸田を呼びつけて教育を受けさせなさい」内部音声を独自入手「日本の政治は滅びるしかないわよね」旧統一教会 (報道1930・TBS)

「岸田をここに呼びつけて教育を受けさせなさい。分かっているわね」「私を〝独生女〟(救世主)だと理解できない罪は許されないといったのに、その道に向かっている日本の政治はどうなると思う」と尋ねられて、信者らは「滅びます」と答え、韓鶴子総裁も「滅びるしかないわね」と話した部分を引用します。

「今、解散命令請求も視野に入れて調査されていますが、組織性、悪質性、継続性(解散命令請求の要件)のなかで、こういう発言を聞くと、一国の総理や政治に対して、ここまでひどいことをいう。これだけ(社会的)問題になって、国会で法律まで作らせているにもかかわらず、韓鶴子総裁の「岸田を呼びつけて、教育を受けさせなさい」「日本の政治は滅びるしかない」という発言自体が、統一教会の悪質性を補強して、解散命令請求を加速させる必要もあるのではないかと思いますがいかがでしょうか」と同議員は質問をします。

そこへ「『滅びます』といっている幹部信者の中に田中富広会長も入っています」と鈴木氏は合いの手をいれます。

文化庁は「この発言について(同庁として)コメントできるものではない」としながらも「解散命令の要件は、宗教法人法によって、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたことと厳格に定められていますので、今後の裁判との関係を踏まえて考えますと、発言一つが教団の活動の事実関係を明らかにすることの証拠として、どれだけ使えるか。そういう問題になってくるかと思います」と発言します。

この韓鶴子総裁の一連の発言が「教団の活動の事実関係を明らかにする証拠」の一つとなり、解散命令請求の後押しとなりうるのか。非常に注目されるところです。

<国対ヒアリング記事・前編「一日も早い旧統一教会への解散命令請求」の声をあげる被害者家族への誹謗中傷 組織的グループの可能性

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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