Yahoo!ニュース

「16歳で、3億6千万組の合同結婚式に参加しました」元2世信者の証言 「地獄にいく」と言われて

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

5月7日、韓国の清平にて、旧統一教会による8000組の合同結婚式が開催されました。

日本からはオンラインでの参加者も含めて1000人弱が参加したということです。世界約150か国から約1万6000人が出席したとされていますので、日本からの参加は6%ほどで、筆者が1992年に参加した3万組の合同結婚式の人たちの多くが日本人だったことを考えれば、かなり少なくなったものだと思います。

祝福の破棄は許されない大罪

旧統一教会では、人類始祖アダムとエバから続く原罪を脱ぐためには、神様(教祖)によって定められた人と結ばれることが必要と教えられています。そのため、教団のお墨付きを得て合同結婚式(祝福)で結ばれた相手とは一生、添い遂げなければなりません。

もし祝福を破棄すれば、サタン(悪魔)より下の立場になると教えられているからです。地獄の地獄に行く恐怖心から、どんなに相手のことが気に入らなくなっても、信者らは教義を信じている限り「相手と別れる」という選択ができず、人生の終わりまで、相手を受け入れ続けるしかないのです。

今はマッチングでの出会いを通じて「相手との交流を行い選べるようになった」といい、旧統一教会のHPにも「結婚式に参加する前にお断りすることは可能です」とありますが、”参加後”には言及していません。

以前の合同結婚式は、教祖が相手を決める

以前に行われていた合同結婚式は文鮮明教祖が、結婚相手(相対者)を決めていました。その時、教祖から与えられた相手が気に入ろうと、気に入るまいが関係ありません。自分の思いはサタンの思いとされていますので、相手を受け入れなければなりませんでした。

それゆえに多くの信者たちは、結婚生活を始めることになります。もちろん、なかには互いに気に入った者同士もいたと思います。しかし結婚生活がうまくいくかどうかは、生活をしてみてからわかることも多いものです。

別れられずに苦悩する信者夫婦の姿は、宗教2世たちの証言からも見えてきています。

「父と母はいつも喧嘩をしていて、双方ともお互いが嫌いだけれど、教祖によるマッチングですので別れられずに、やむをえず一緒にいるという感じでした。私が『離婚すれば』といったこともあります」(元祝福2世・20代信者)

「小さい頃、両親に『お互いに好きなの?』と聞いたところ、二人からものすごい形相をされました。子供心にそれは聞いてはいけないことなんだと思いました。両親の仲は悪かったですね」(元祝福2世・20代信者)

出会った時にはわからなかったことが、後になってわかり、嫌になっても本人の意思で自由に離婚できないようになっている。この点は、大きな問題だと考えています。

16歳で合同結婚式に参加の実態

筆者は1996年に脱会をしていますが、その後も合同結婚式は行われています。

1999年に行われた3億6万組の合同結婚式(3億6万双)に、参加した元2世信者である40代男性・東田さん(仮名)に話を聞きました。驚くのは、東田さんが式に参加した時は、16歳の高校1年生だったというのです。

筆者は元信者として当時、3億6万組、この式に7億2千万人が参加するという話を聞いた時、日本人の人口を約1億人とすれば、その7倍以上の数になりますので、「ありえない。無理だろう!」と叫びましたが、日本の信者らにとって、この掲げられた数字は文鮮明教祖の命令ですので、絶対に果たさなければなりません。

その必死さと組織の上からの目標達成の指示で、信仰の篤い親は、未成年である2世信者らを式に参加させざるをえなかったのだと思います。

教義をもとにして未成年者を合同結婚式に参加させる。信仰の強制に他ならないことであり、この行為のどこに、婚姻の自由があるのでしょうか。過去の旧統一教会の合同結婚式では、こうしたことが行われてきたのです。

両親による多額の献金で生活は困窮 

東田さんのご両親は、既成祝福という合同結婚式を受けており、そうしたなかで幼いころから、教会の礼拝に連れて行かれます。

「当時は友達がいたから、教会に行っていた感じでしたね。小学校の頃に修練会にも行かされて、創造原理や堕落論を教えられましたが、教義についてはほとんど信じていませんでした」と東田さんは話します。

東田さんの両親は、多額の献金をしています。

「親は2000万円位の献金をしていると思います。家には、龍壺、天聖経、サウナ、人参茶、着物など、ありとあらゆる統一教会の商品がありました。小さい頃はお金がなくて、ビンボーだったのが嫌で嫌で……」と話します。

結局、家にお金がなかったために、東田さんは大学進学を諦めます。

「それに、小学校の頃、テレビで有名人が参加した3万組を見ていたこともあり、学校で統一教会の信者であると知られることが、本当に嫌でした。恥ずかしかった。何より朝の敬礼などの儀式もすごく嫌でした」と話します。親からの信仰の強制に従わなければならなかった、幼い頃の苦しい胸の内を話します。

両親からの合同結婚式への誘い 信仰の強要

「ある時、両親から『合同結婚式あるけど』と誘われました。私は両親が信者になる前の子供でしたので、信仰2世になります。下の兄弟の一人は、祝福を受けた後に生まれた子供なので、原罪のない祝福2世でした」(東田さん)

東田さんは、教義を信じていないといいますが、長年、アダムとエバが堕落した話を聞かされて育っています。

「両親から『お前はサタンの子(信仰2世)だ。(メシヤによる)祝福を受けなさい。そうでなければ(原罪をぬぐえず)地獄にいく』と言われていましたので、断り切れませんでした。それに当時、母親は教会の責任者をしていたので『その子供であるあなたが受けないわけにはいかない!』と、プレッシャーもかけられましたね」

子供は親に養われている身です。信者である両親にいわれて「参加しない」という選択はなかったようです。

「それに教会の友達も参加するようでしたので、それなら、自分も参加してみようかなと思ったところもあります」と東田さんは当時を振り返ります。

しかし教団は「選んだように思わせて、選ばせられている」という手口を使う時があります。もしかすると、合同結婚式に参加する意欲のある子どもを使い、まだ決めかねている子供たちに参加を促す戦略を立てた可能性もあります。

当時、どれだけの数の未成年者が「祝福を受けなければ救われる道がない」と思わされて、この式に参加させられていたことでしょうか。

同い年の高校生とマッチング

東田さんは2泊3日で韓国にいきました。

「その時、親は『子供が風邪をひいて、熱を出した』と嘘をついて3日間、学校を休ませました」(東田さん)

合同結婚式は、ソウルのオリンピックスタジアムで行われました。事前に相手の女性の写真は送られてきており、同い年の高校生だったそうです。

「会場で文鮮明をみた時『これがメシヤなのか』と思う程度でした。その時は2月でしたので、とにかく寒くて、我慢して式に参加していたという印象しかありません。もちろん、その後には、祝福を受けた相手と互いのお尻を蕩減棒で叩き合う儀式も行いました」

韓国に行って驚いたこと

韓国では2世を担当者する日本人女性が付き添い、参加者8人が一緒の部屋で滞在していたそうです。その時、東田さんが驚いたことがあるといいます。

「部屋には、韓国人もいたのですが、たばこ吸って、ビールを飲んでいるんです。教会では、お酒もたばこも禁止のはずですので、これはマズイだろうと思って、アベル(2世担当女性)に報告しました」(東田さん)

しかし彼女からは「信仰が未熟な韓国人もいるからね」と一蹴されたといいます。

あまり信仰のない東田さんとはいえ、まったく教義に反する行為をする人も参加している状況に呆れたといいます。

帰国すると親は「良かったね。おめでとう」と喜んで迎えますが「特に女性はタイプの子でもありませんでしたし、嬉しさはなかったです」といいます。

彼はしだいに教会に行かなくなります。そして高校を卒業して、家を出たことをきっかけに教会から離れました。

父親は自己破産で目が覚める

その後、父親も離教しますが、きっかけは金銭苦です。

「父は教団のために身を粉にして働き、多額の献金をしてきて、その結果、家賃も払えなくなりました。父は教会に助けを求めましたが、長年、教会に貢献してきたにもかかわらず、教団側は何らの援助もしてくれませんでした。ここで目が覚めたようです。その後、母親も教会を離れました」(東田さん)

旧統一教会は「真の愛」や「神の愛」を口にします。しかし本当に困っている人に対しては、自己犠牲の精神をもって、愛を与えることをせず、常に教団の事情を優先させます。この「愛」の言葉がいかに絵空事であるか。それにより、どれだけの信者らの家庭が崩壊していったのか。本当に悲しい思いになります。

東田さんは「両親は年金も払っていなかったので、もらえない。何もお金がない。自分が両親を養っています。教団は信者からお金を取るだけ絞りとって、用が済んだら見捨てる。本当にひどい」と吐き捨てるように話します。

40代になった彼は、年金ももらえない両親に資金援助をするなどして、面倒を見ています。これが信仰をし続けた1世信者の成れの果ての姿です。

「当時、教会に通っていた16歳~17歳の5人の高校生が祝福を受けました。母から聞いたところでは、そのうち家庭を持った(祝福を受けて結婚した)のは1人だけで、あとは全員、離教したそうです」

未成年者を教義と親の信仰の強制に縛りつけて、結婚相手を教団側が決めて式に参加をさせる。婚姻の自由を侵害しているとしか思えません。

旧統一教会の合同結婚式は、一般の結婚とはまったく違う意味を持つ

先に述べたように、今はマッチングサイトを使って、出会える相手を選べるようになったということですが、あくまでも参加前のことです。

最初のうちにはわからなかった相手の欠点などがわかり、嫌になったとしても、教義上、一度受けた祝福を簡単に破棄することはできません。

中には祝福破棄による地獄に行くことへの恐怖心から「離婚」という選択を取れず、人生の終わりまで苦悩し続ける人もいるかもしれません。

教団の許可なくしては結婚もできず、離婚もできない。旧統一教会の行う合同結婚式は、一般の結婚とはまったく異質なものといえます。

過去から現在まで、行われ続けてきた合同結婚式の実態を多くの人が知り、今後、この式を通じて苦しむ人が一人でも出てこないように、私たちは厳しい目をもって見続ける必要があります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

多田文明の最近の記事