Yahoo!ニュース

買い取りトラブルが増加傾向!突然、家に訪問業者がやってきたら、即追い返してOK!他に、注意点は?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:tamu1500/イメージマート)

コロナ禍で在宅時間が多くなり、断捨離や終活などで、身の回りの整理をすることが多くなっています。今、そこで出た不用品を狙って、家に悪質な買い取り業者がやってきてトラブルになるケースが出てきています。

国民生活センターが発表した、自宅を訪れて貴金属などを買い取る訪問購入におけるトラブル相談をみても、2016年をピークに減少傾向でしたが、20年、21年と再び、増加の方向に転じてきています。

国民生活センター発表の訪問購入相談件数をグラフ化(2021年6月30日現在)
国民生活センター発表の訪問購入相談件数をグラフ化(2021年6月30日現在)

トラブルに巻き込まれないために、何に注意すれば良いのでしょうか?

全国で出張買取サービス「バイセル」を運営する「株式会社BuySell Technologies」のコンプライアンス担当者に、注意すべきポイントを伺いました。

「有名企業の名前を騙って、突然に家を訪問してくる事業者がいます」と、同社の担当者は強く注意を促します。

同社の買い取りサービスを利用したお客様に聞き取りを行ったところ、次のようなトラブルがあったといいます。

「有名な出張買取の事業者の名前を出して、『不用品を買い取ります』と訪問してきた業者に、商品を見せて査定をお願いしたところ、『後から、詳しい者が来ます』といって家を出て行った。しかしその後、査定してもらった商品の一部が持ち去られていたことに気づいた」

お客様自身が依頼していないのに、出張買取業者が突然、訪問してくることは、法律上、禁止されています。もし事業者が買い取りを名目に突然、やってきても、家には絶対に入れないようにしてください」

特定商取引法では、不招請勧誘の禁止が謳われており、私たち消費者が呼んでもいないのに、事業者が家を訪れて、商品の買い取りをすることは違法行為にあたります。

しかもこの時、家人を信じさせるために次のような手も使うといいます。

有名企業からきたことを信じさせるため、その会社の名刺を偽造して渡すこともあります。以前に、当社の名前も騙られて、お客様から問い合わせを受けたことがありますが、名刺には正規の電話番号が載っていました」

この辺りは、非常に巧妙な手口だといえます。

日本人は権威や肩書に弱いところがあり、渡された名刺に有名企業の名が記されているだけで、信じこんでしまいがちです。騙す側もそれがわかっていて、偽の名刺を使っての詐欺事件も起きています。

しかも今回は、正規の電話番号を記載して、ひと捻りを加えています。もし家人が突然の訪問に怪しみ、相手の身元を確かめようと、名刺に記載の電話番号にかけても実際の会社につながるわけですから、より信じこんでしまうことになってしまいます。

さらに、このケースでは、家人が目を離した隙に、金目になりそうなものだけを持って去っているところも非常に悪質です。査定後は、必ず事業者に見せた商品がすべてあるかの確認は必須事項になります。

電話をかけてから訪問してくるケースも

突然の訪問以外にも、電話をかけてきて、買い取る商品がないかを尋ねてから、事業者に訪問されてトラブルに遭うケースも、消費者センターには寄せられています。

「いらなくなった靴や洋服を買い取ります」と電話がかかってきて、家にくることを了承した。すると家にきた事業者から「(靴や洋服以外に)何か他にないんですか」「使っていない指輪はないですか?」と、貴金属などの金目の物を出すよう執拗に迫られたというものです。

この点について尋ねると「法律では、事前の約束とは違う物品について、買い取りの勧誘を行ってはいけないことになっています。『他に、貴金属はありませんか?査定します』などと、事前の約束なく商品を出すように促してくれば、悪質な事業者の可能性があります」(同社担当者)

ここにも注意が必要です。

訪問購入にも、クーリング・オフがあることを知っておく

買い取りをお願いしたけれど、やはりやめたいと思った時にはどうすれば良いのでしょうか?

「訪問購入にはクーリング・オフが適用されます。契約日から8日以内であれば、事業者に連絡することで解約できます。こうしたクーリング・オフについて、買い取り時に、書面及び口頭で説明をしているかも大事なポイントになります」

同社に寄せられた、別な買い取り業者とのトラブルには「クーリング・オフの連絡をしたら、品物は戻ってきたものの、送料や査定の手数料などを請求された」というケースもあったといいます。

「クーリング・オフにおいては、利用者側への送料負担や違約金は発生しません」

クーリング・オフは、無条件での解約ですので、この点も覚えておくことが大切です。

家族への相談が何より大事

最後に「買い取りを依頼する時には、その商品を本当に売ってよいのかを、事前に家族へ相談して、再確認をするようにお願いします」とも話します。

「夫にもらったけれど、あまり使っていなかった物があったので、断捨離しようと売却した。後に、そのことに気づいた夫から『なぜ相談せずに、売ってしまったのか』と怒られてしまい、夫婦間でのトラブルになった」

このような事例も、過去にはあったとのことで、家族に相談せずに品物を売ってしまったことで、家族間のトラブルに発展してしまうこともあります。

「売却する不用品について、手放しても後悔がないか、それを売ることに家族は納得しているかについても、十分にご検討することが大事です」

トラブルに遭わないためのポイントは、4つです。

1.突然、出張買い取りを謳う業者が訪問しても、家にはあげない。

2.依頼していない商品を買い取ると言われても、きっぱり断る。

3.買い取り契約をしてから8日間は「クーリング・オフ」が適用される。

4.出張買取を利用する前には、家族とよく相談する。

悪質業者の場合、一人暮らしの高齢者宅を狙って、買い取りに訪れることもあります。この時にはどう対処すれば、良いのでしょうか?

「一人での対応に不安があれば、家族や親族、知人に同席をするようにお願いをしてください」

そして、万が一トラブルに遭った場合は、『188』(消費者ホットライン)に電話をして、相談することも忘れないでください。

「9月20日は敬老の日です。高齢のご両親とお話をする機会もあるかと思います。その時には、ぜひこうした訪問購入のトラブルが身近で増えてきていることや、先にあげた注意ポイントなどを家族で話し合って頂ければと思います」

悪質業者による買い取り被害を防ぐには、身を守るための知識を事前に得ておき、家族間の話し合いを通じて情報を共有し、何かあった時にはどう対処すればよいのか、その手順も考えておくことがとても大事になります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

多田文明の最近の記事