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おびき出し「アポ電空き巣」が再燃の兆し。第三の手口が発生!家を出た隙にお金がなくなる恐怖!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:Wavebreak Media/アフロイメージマート)

特殊詐欺を行ってきた組織的犯罪グループは、私たちの警戒心を逆手に取る形で、お金を騙しとろうとします。

詐欺やキャッシュカードを騙し取る「詐欺盗」、「アポ電強盗・点検強盗」に加えて、三つ目の手口として「アポ電空き巣」を仕掛けてきています。

今、警察や公的機関を騙って電話をかけてきて、相手の家族状況や資産状況を把握するアポイント電話(アポ電)が多発しており、その後に詐欺だけでなく、強盗も行われています。これは事前に電話をかけて家に多額のお金があることを把握した上で、家に押し入る「アポ電強盗」ともいわれます。

さらに、この夏から秋にかけて、高齢者名簿をもとにガス会社を装って突発的に家に押し入り、現金やキャッシュカードを奪い取る「点検強盗」も発生しました。

このところ、警察による実行犯の逮捕や徹底した警戒の呼びかけにより、犯行がしづらくなったのでしょう。事件が少なくなったと思ったところに、新たに「アポ電空き巣」が出てきたのです。

アポ電空き巣の手口とは

10月中旬、神奈川県の女性宅に孫を装った人物から「お金が必要なんだ」という電話がかかります。その話を信じた女性は、100万円を持って待ち合わせ場所に赴き、孫を待っていました。

これまでのオレオレ詐欺であれば、ここに現金の受け取り役である「受け子」が現れて「お孫さんの代わりに来ました」といって、お金を渡すように指示しますが、今回は違います。

孫は一向に現れないのです。

不思議に思いながら家に戻ると、窓が割られて1200万円ほどが盗まれていました。

この他11月にも、高齢の女性宅に空き巣が入り金庫が盗まれています。

やはりその前月に息子を装う人物からの詐欺の前触れ電話がかかってきています。

手口は忘れた頃にやってくる。

この「アポ電空き巣」は、新手というよりも2009年にすでに発生しており、10年たってからの再燃です。

犯罪は忘れた頃にやってくるものです。

2009年1月中旬、埼玉県の高齢者夫婦の家に、偽の息子から「お金が必要だ」という電話がかかり「200万円を用意しておいてほしい」と言われます。その話を信じた高齢者が200万円を用意すると、偽の息子は「その前に食事でもしよう」と言います。その際「お金を外に持って行くのは、危ないからお金は持ってこないで」と話してきました。

高齢夫婦が待ち合わせ場所に行ったものの息子は来ず、家に戻ると、用意していた現金や貴金属が盗まれていたのです。

この他にも、女性宅に息子を装った人物から「100万円を用意してほしい」という電話がありました。お金を準備すると、偽の息子は「もっとお金が必要になった。100万円はとりあえず、自宅のポストに入れておいて」と指示して、女性が残りの金額をおろしに銀行へ向かっているうちに、ポストからお金が盗まれていたという事件もあります。

こうしたオレオレ詐欺を利用したアポ電空き巣は、過去にもあったのです。

今、コロナ禍で在宅率が高くなっている状況では、犯罪者らは「家人を外に出してしまおう」と考えており、今後、この種のおびき出しの手口にはより注意が必要です。

詐欺などの犯行は、全く同じ手口のように見えて進化するものです。

今回のものが10年前と違うのは、わざわざ100万円を家人に持参させて外出させているところです。それは持参した金額以上のタンス預金が家にあることを知っての犯行であり、資産を聞き出すアポ電がいかに洗練されているかがわかります。

被害に遭わないためには、「お金があることを教えない」という、アポ電の排除が重要になります。

空き巣と聞くと、「家にいればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。話はそう簡単ではありません。

犯罪者らは、窓ガラスを破っての侵入をしてきます。もし家にいて鉢合わせすることもあれば、強盗に変貌するかもしれません。

というのも、これまでの詐欺もそうでしたが、組織的犯罪グループは、犯行マニュアルを準備して、相手の状況に合わせ、あらゆる状況に応じた対処法を考えているはずだからです。「いざとなったら、強盗」ということも充分にありえるのです。

年末に向けて、どうしてもお金の出し入れが多くなり、家にお金を置いておく機会も増えることでしょう。しかしそれを狙って、犯罪グループは様々な罠をしかけます。

詐欺や強盗に加えて、三つ目の罠、空き巣もまじえてきていますので、私たちも手口を知り、警戒する必要があるのです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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