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ビッグモーターレベルのブラック企業はさっさと辞めよう 人生もお金もムダにせずにすむ

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
ビッグモーターレベルのブラック企業に勤めているならすぐに転職したほうがいい。(写真:つのだよしお/アフロ)

(本記事について解説したYouTube動画もあります。あわせてご視聴ください)

不法行為のオンパレード、ビッグモーター社の大騒動

中古自動車販売や修理、車検、自動車保険の代理店などを行っているビッグモーター社が話題です。

不正なビジネスはもちろんですが、店の前の植栽を無断で伐採、枯死させていた可能性が出ているほか、かなり強度の強いパワハラが蔓延していたという情報も出始めています。

不正については、「隠してもいつかはバレる」というタイプのものなので、隠しきれずにとうとう日の目を見たということなのでしょう。国土交通省の立ち入り検査や、損害保険会社各社の不正請求のチェックなどで全貌が明らかになり、不当な利得は返還することになるはずです。公正な裁きを受けて欲しいところです。

私は、このテーマから「そこで働いていた社員は、どうするべきか」という話を取り上げてみたいと思います。会社が不正を行っていたり、パワハラが酷いとき、社員はどうすればいいのか。

結論を先に言えば、ひどい会社ながらもマジメに働いていた人ほど、さっさと辞めて新しい会社で働くべきだと思います。

企業の自浄作用を期待し、待つのはあなたの人生のムダである

非上場企業というのは、創業者=株主=役員となっていて、そのカルチャーが歪んでいても、誰もこれを直せないという傾向があります。

社長や経営者に諫言をするとその人がクビになってしまうので、結果として誰も軌道修正できなくなるからです。下記のとおり、内部告発があったものの、封じられたという報道があります。(全文閲覧は有料会員のみ)

7/15 朝日新聞「ビッグモーター社長ら、内部告発もみ消しか 損保「自浄作用ない」」

労働基準法を外見的にはギリギリクリアしていたり(実際にはクリアしていないことが多いが)、労働組合がない場合(会社が意図的に労働組合を作らせないこともある)、労働者の権利がきちんと守られない可能性が出てきます。

こうした会社はパワハラが酷い傾向もあります。仙台けやきユニオン(社内労働組合がない会社員の支援を行う団体)のHPには、ビッグモーターとの団体交渉を行った記事がありますが、そこに掲載されている社員に配られていたものとおぼしき手帳には、非人道的な表現が含まれています。

(画像の真偽は確認できないものの信憑性は高いと考えられるので紹介します)

2019/6/28 仙台けやきユニオン 大手中古車会社のビッグモーターと第2回の団体交渉を開催しました。 責任者は欠席するという不誠実な対応。誠実に向き合ってほしい。

そこでは、「組織(要因)に関する方針」として「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」と過激な表現がなされています。「能力と考え方」という表では能力が○、考え方が×の人材について「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください」(太字も元のまま)、能力が×、考え方が×の人材については「会社と社長の思想は受け入れないし、仕事の能力もない。早く辞めてください」という尋常ではない表現があったりします。

「死刑」という言葉を上司が連打してメッセージを送ってきたというような報道もあり、パワハラが常態化していたことは間違いないと思われます。

2023/8/2 FNNプライムオンライン 【独自】LINEで「死刑」連呼…ビッグモーター前副社長の横暴ぶりは父の“後継者発言”きっかけか 上層部指示で「高評価口コミ」投稿も

ビックモーターに限らず、こういう会社に自分が働いているかも、と感じたら、とにかく脱出を考えてください

「マジメに働いていればいつかは良くなるだろう」と思っていても、多くの場合変化はありません。あなたの時間を無駄にするだけです。

それどころか、あなたの年収が低いままに抑えられたり、メンタルが痛めつけられて不調となったりするだけです。

今いるところよりホワイトな職場に移ることができれば、メンタルを削る必要もなくなり、健康という「財産」を守ることができます。そして年収でも遜色がないかむしろ増やすことができれば、こちらも「あなたの人的価値」をお金にきちんと換え、取り逃さなくてすむことになります。

とにかく辞める 退職ハラスメントに負けず辞める方法はあるか

最新報道によると、社員の歩合給が顧客の減少(減少は避けられない)による低下の見込みであることから、これを一定期間補てんし、人材の引き留めを図る方針であるとされます。

23/8/2 共同通信 ビッグモーターが給与補填 保険金不正請求で客離れ

23/8/2 ビッグモーター 社員の歩合給補てんへ 保険金不正請求問題で顧客離れ…大幅な減少見込まれるため

しかし、これを「会社は変わった!」と考えない方がいいでしょう。数カ月で業績が回復するとは思えませんし、仄聞する範囲でも、そもそもの人事評価制度が適切に運営されていない印象を受けます(パワハラが横行している、ということは管理職の人材研修が適切に行われておらず、これはすなわち人事評価も適切に行われていない可能性が大)。

こうした会社のイヤなところは、退職希望者にも辛く当たってくることです。実際、退職希望者にもハラスメントがあるようです

SNSなどで紹介されている画像では、退職届等の関連書類は会社側がテンプレートを用意しており「自己都合退職以外の選択肢がない」とか「念書を含めて提出しないと最終給与や離職証の発行を行わないという脅しに近い文言がある」などの問題もあるようです。

ブラック企業の典型的パターンとして

  •  上司が退職届を受け取らない
  •  離職にあたっての引き継ぎ等をさせてくれない
  •  残っている有給を消化させてくれない

といった問題がありますがどれも法律に反します。

辞める意思を示すことは労働者の権利でありこれを会社が拒否することはできません。退職の意思表示は14日以上前までに行えばよいとしています。

民法 第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

就業規則が業務の引き継ぎ等を理由として1月前まで、としている場合などは、円満に辞められる場合はこれに従い退職手続きをしますが、もめた場合は2週間の権利を行使するといいでしょう。

ビッグモーター社に関しては、今は外部の目が厳しくなっているため、退職希望者へのハラスメントが弱くなっている可能性があります。ある意味、辞めるチャンスかもしれません。

転職活動においても、「仕事はマジメにやっているが、会社が酷かったから面接を受けに来ました」と言えば、ほとんどの会社があなたに問題があって転職をしているのではない、と同情的に見てくれるはずで、これもチャンスです。

おそらく、退職の意思を伝えたら強く慰留をしてくるでしょうが、ここは引かず、有給を消化し、退職をしましょう。

厚生労働省 長野労働局 退職(退職金を含む)に関する相談

CANVASbyマイナビ 仕事を辞めさせてくれない...辞めたくても辞められない場合の対処法や注意点

転職Hacks 【状況別】辞めさせてくれない会社を辞める方法 

もし、不安に感じたら厚生労働省の総合労働相談コーナーを利用してみてください。「各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの379か所に設置」とありますので、あなたの近隣にも窓口があるはずです。

厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内

なお、自己都合退職の場合、雇用保険の求職者給付(いわゆる失業給付)がすぐ出ません。退職したらすぐ、ハローワークで手続きをしましょう。手続きをした日から7日+2カ月後が給付開始になります。

あるいは、ギリギリまで在職し続けて、転職活動をして内定獲得後、辞表を出すことも考えてみてください(とはいえ、こういうブラック企業は転職活動をするための休みも取らせてくれないことが多いので、在職中に次を見つけにくいという問題もあります)。

厚生労働省 パンフレット 離職されたみなさまへ

ブラック企業、危ないのは非上場の大きな企業か

改めて感じるのは、「創業者一族が役員もしているし株も持っている(株主構成は分からないことが多い)」会社に働くこと、「非上場であり、上場基準や情報開示等のチェック機能にさらされていない」会社に働くことは、少なからずリスクがある、ということです。

もちろん、ちゃんとやっている一族会社、非上場企業もたくさんあるのですが(例えば、会社が厳しくなったら社員の給与を優先したり、個人で借金するような社長もたくさんいる)、そういうホワイト中小企業に職を見つけたら、これはあなたの財産です。

しかしそうでなければ、とにかく早く逃げることです。あなたが悪いわけではないからです。

今回の一連のニュース、ビッグモーターじゃない「別のブラック企業」に勤めている人も、退職の勇気を振り絞るきっかけにしてみてください。

数年後、後悔よりも決断をして良かったと感じることのほうが多いと思いますよ。

(本記事について解説したYouTube動画もあります。あわせてご視聴ください)

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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