カブとローン返済はどちらを優先すべきか、「あつまれ どうぶつの森」の世界でFPは考える

カブのトレードに夢中になっている1200万人。ローン返済を後回しでいいのか。

Financial Times も関心を示す「どうぶつの森」の経済問題

Switchのゲーム「あつまれ どうぶつの森」はすでに1200万の国民を持つ(任天堂3月末決算による)。これはベルギーの人口を上回り、ひとつの国として成立するほどの数だ。

これだけの国民が、日々釣りや作物の収穫をしてこれを売っては生活の糧を得たり、家具等の物品購入を行っては庭や自宅の改築に余念のない日々を送っていることで、経済活動としても無視できない規模になっている。

経済誌Financial Timesもこれに注目、「世界の超低金利、どうぶつの森に波及」という記事を配信している。現下の世界経済の状況を反映してタヌキ銀行の金利も超低金利に引き下げられたのだ、とまじめに解説しているあたり、記者のハマり具合がうかがえ、記事としてはシャレが効いている。

( Financial Times 原文はこちらで読める )

たぬきバンクの衝撃的な利下げは、金利を引き下げ、膨大な量の債券購入を通じて長期借り入れのコストを引き下げ、新型コロナウイルスの流行の影響を緩和しよう躍起になっている世界中の金融当局の動きを反映している。

国際通貨基金(IMF)によれば、ここ数カ月に世界各国の政府が発表した経済対策に伴う歳出の総額は約14兆ドルにのぼる。世界中で繰り出された緊急対策は、株式からジャンク債まで、様々な資産の価格を押し上げた。

(略)任天堂、たぬきバンクとユーザーの行動は、日本の金融業界の体験や、今や20年になるゼロ金利下での暮らしを反映しているという。

出典:日本経済新聞転載(日本語訳 有料記事)

知らない人がマジメに読んで誤解したら、と考えると笑える記事だ。この記事の途中で「カブ」の話が出てくる。こちらについても、こういう風にマジメ解説をしている。

金利が大幅切り下げられた結果、効率的にお金を稼ぐ残された手段は、ゲーム内の「カブ」市場での投機に限られた。参加者がこの根菜市場でカブを買えるのは毎週日曜日の1度だけ。買ったカブは腐っていき、1週間後に価値がゼロになる。

出典:同上

筆者もカブに手を出している島民のひとりだ。この前の日曜日に買ったカブの値上がり益を得たら、次の住宅ローンの返済資金に回そうともくろんでいる。

しかし、ファイナンシャルプランナーとしてはひとつ問題がある。そう「住宅ローンの返済」と「カブ式投資」の優先順位はどうつけるかだ。

通常、ローン返済と投資の優先順位はどちらが上にあるか 2つの大きな条件の違い

リアル世界で考えた場合、「住宅ローンの返済のために、投資の収益を回そうと考えるのは絶対におすすめしない。なぜなら確実に生じる金利と不確実な収益可能性は天秤にかけるべきではないからだ」と私はセミナーで説明する。

しかし、私は「あつまれ どうぶつの森」の中でローン返済を後回しにして、カブ価に注目しトレードを優先している。現実とゲームでは違うことをしていることになる。そこにはもちろん大きな条件の違いがあるからだ。

前提条件をまず確認しておこう。

「あつまれ どうぶつの森」の世界では、住宅の建築費用や移築費用について、ローンが設定される。無人島にテント暮らしをし夜露をしのいでいた開拓者にとって、屋根があり、風を防げる家に寝泊まりできるありがたみといったらない。

しかし、その対価として98000ベル(現地通貨)のローンが一方的に設定され、返済を求められる(その後も増築のたび高額のローン設定を求められる)。ただ、このローンはリアル世界の返済とは異なる条件で設定されている。

それは「金利が設定されない」こと「返済期日がない」ことの2点だ。これは借金としては相当恵まれた条件である。

リアル世界で3000万円の住宅ローンに年3.0%の条件が設定されていたとしたら、1年後には90万円の借入残高増になる。つまり年間90万円の返済をしなければ残高は増えてしまうということだ。今は超低金利だが、金利はけっこう重い。

また毎月の返済期日が設定され、約束した金額を指定された日に返し続けなければならない。返済が遅れると遅延分にさらに金利がかかる。新型コロナウイルスの影響で収入減となった世帯では、返済に苦労しているところも少なくないだろう。借りた以上は返済期日があるというのは当然のことながらキツいノルマだ。

ところが「あつまれ どうぶつの森」の場合、返済は任意のタイミングで本人が行えばよい。永遠に踏み倒し続けることもできる(わが家の男子6.9がそうであるように)。随時分割払いをするもよし、満額を稼いでから一括で返済としてもよい。返済額に違いはない。

この2つの条件はリアル世界ではまず設定されない。ということは、「カブの売買かローン返済か」という議論も両者で結論が違ってくるということになる。

現実ではローン返済優先、あつ森ではカブ優先

結論をまとめよう。リアル世界では「ローン返済が優先」で考えるべきだ。返済期日は守る必要があるし、できれば早期返済を心がけたい。そもそもでいえば、「借入額を極力減らすこと」「返済期間をできるだけ短期にすること」「金利は低く借りること」をいかに工夫するかが、リアル世界での住宅ローンの重要な選択肢だ。できるだけ借金は避け、また負担を軽いものとした。

とはいえ、住宅ローンの返済完了まで投資完全NGとするかどうか、という悩みもある。未経験のままリタイアして、引退後初投資というのはむしろ危なくて、老後に退職金を巻き上げられるリスクがある。

投資をする場合には、短期的な騰落でカブもとい株に手を出すのではなく、少額からの積立投資をしたほうがいいだろう。株を買うとしたら、10万円以下の個別株を少し手を出すにとどめたい。毎月数万円程度の分散投資された投資信託での運用をオススメする。

「あつまれ どうぶつの森」の世界では逆に考える。ローン返済はいくらでも先送りすればいい。返済に回す予定の資金でカブを買うのもいいだろう。何せ期限はないし利息ものらないわけだから、返済額を全額貯めて、さらに余裕ができたころに一括返済をすればいい。

カブについてはどうか。こちらも失敗したとしても、雑草や魚や化石を売りさばいて稼いだベルを失うだけのことだ。返済が遅れても支障はない(督促がないし)。またベルを貯めてカブにチャレンジすればいいだろう。

巣ごもりの時期、「あつまれ どうぶつの森」を現実世界を学ぶ糸口に

「あつまれ どうぶつの森」をプレイしている人それぞれにハマり方がある。博物館を充実させるためにひたすら化石を掘ったり、昆虫採集、魚釣りにいそしんでいるとき、ちょっとスマホの検索をすれば、これは生物の学習にもなる。タガメの生態や恐竜の最新学説などは、調べ始めるとなかなか楽しい寄り道になるだろう。学校がない子どもにはぜひ、博物館学習をしていただきたい(今日からスタンプラリーイベントも開催されるし)。

マネーの世界でも何か学べることがないかな、と思っているが、「預金金利」「住宅ローン」「カブ」あたりが現実と少し連動しているところのようだ。しかし、現実とはちょっと条件設定が異なるので、そのまま参考にはしにくいが、子どもに銀行の役割を話すにはいいスタートラインかもしれない。

また、興味を持った人が野菜のカブ売りから、株式投資に世界を広げていってくれれば、これはちょっとおもしろいことだと思う。

……ところで、中の人にお願いがある。

前場と後場の2回、カブの価格は値付けされるのだが、たぬき商店が夜10時に閉店してしまうのが地味に困っている。子どもが寝静まってからこっそりとSwitchを取り出すので、10時に間に合わないことが多いのだ。

できれば24時間トレードに対応してもらえないだろうか。つまり時間外取引の市場開設だ。あと、日曜午前しかカブを買えない設定も地味に厳しい。カブ購入についてももう少し時間を増やしていただけないものか。

Switchの起動権が子どもにある、親ゲーマーとしては2つの設定を変えていただけると助かるところである。