3軒に1軒はおひとりさま世帯の時代がやってきた~誰でもおひとりさまになる時代にあなたはどうするべきか
おひとりさま世帯が最多となる時代
日本経済新聞(9月24日付け)に「単身・無職が最多 しぼむ4人家族」という記事がありました。このテーマで今回は少し書いてみたいと思います。
記事で指摘されていますが、日本の「世帯」でもっとも多数なのは今や「おひとりさま」です。
国の「平成27年国勢調査」の結果によれば、日本の世帯は5344.9万あり、一般世帯を家族の種別で分けてみると、
単独世帯 1841.8万世帯(34.6%)
ファミリー世帯(夫婦と子供) 1428.8万(26.9%)
夫婦のみの世帯 1071.8万世帯(20.1%)
ひとり親と子の世帯 474.8万世帯(8.9%)
となっているそうです。
日本の玄関をたたけば、3軒に1軒はおひとりさま、ということになり、それは夫婦と子ども、といういわゆる「ファミリー」世帯より多いというわけです(ファミリー世帯は4軒に1軒)。
おひとりさま世帯、といっても
・結婚を決めていない若い世代
・生涯独身を心に決めた現役世代
・結婚していたが今は単身の人
・家族は皆成人になって家を出たり死別して単身の人
など、若いおひとりさまから、おじいちゃんおばあちゃんのおひとりさままでいろいろあります。しかし、日本で一番多い世帯は「おひとりさま」ということはもっと知っておいていいでしょう。
おひとりさま世帯が増える理由は「未婚」だけじゃなく「高齢化」も大きい
おひとりさま世帯の増加は近年の急激な変化のひとつで、割合でいうと「ファミリー世帯」と「おひとりさま世帯」の割合はたった15年でほぼ逆転していたほどです。つまり今世紀に入ってからの大きな動きということになります。
理由を考えれば「未婚社会」と「高齢化社会」の問題にたどりつきます。
1.未婚社会はおひとりさま世帯をたくさん生み出す
ここ数十年続いた生涯未婚率の上昇はようやく頭打ちになってきたかと期待されているものの、国勢調査で30歳代後半の男性未婚率35%、女性未婚率24%と高い数値を示しています。おひとりさまの増加は世帯数を大きく変化させます。
例えば男性が10人、女性が10人いたとして、10組とも結婚をすれば、世帯数は10です。ところが、未婚率が30%になるだけで、夫婦7組、おひとりさま6組(男女3人ずつ)と割合もほとんど拮抗します。
未婚率が5割にならなくても、世帯「数」では逆転するというわけです。シンプルなモデルで考えれば34%の未婚率で世帯数は逆転、未婚率4割に達すると夫婦6組に対し、おひとりさま世帯は8(男女4人ずつ)とひっくり返ります。
もちろん両親と同居する人もあるので単純ではありませんが、未婚率の上昇がおひとりさま世帯増加につながっている最初の要因でしょう。
2.年金生活者が増えるほど「おひとりさま」も増える
おひとりさま世帯を分類すると、働いている人(多くは現役世代の会社員)と働いていない人(多くは年金生活者)は、年金生活者のほうが増えているそうです(冒頭の日経新聞記事などによる)。
先ほど紹介した国勢調査の単身世帯の1841.8万世帯のうち、65歳以上のおひとりさまは592.8万世帯、つまり32%を占めています。おひとりさま世帯の3分の1は若者ではなく老人なのです。過去15年大きく増えたおひとりさま世帯の中で、全体の伸び率より高い増加を示しています。
まず、もともと独身で暮らした人は年金生活に入ってもおひとりさま世帯です。これに加えて夫婦であった世帯も、どちらかが先立てばやはりおひとりさま世帯になります。
老後は幅広く、70歳で死ぬケースから100歳まで長生きするケースまでありますから、夫婦のどちらかが長生きして、どちらかが早く亡くなれば、おひとりさま世帯は増え、かつずっとおひとりさま状態が続きます。
単純に男女の平均寿命差を考えれば、女性は6年はお一人さまになります。夫婦の年齢差があればこの期間はもっと長くなります。
高齢者施設に入居することで状況が変化するものの、高齢者はおひとりさま世帯になりやすい傾向があります。
この2つの傾向はこれからも続くことでしょうし、むしろ2つの要因は結びついているので、おひとりさまが中心となる社会になっていくは今後ほぼ間違いないでしょう。
おひとりさま多数社会に対応したビジネスや社会システムの再構築が進む
元の日経新聞記事は統計調査がおひとりさま世帯の増加に答えきることができていないという指摘でしたが、社会全体が「おひとりさま多数事態」に対応していくことが必要になります。
小売り店舗、食品や日用品のメーカー、旅行サービス、教養娯楽など「おひとりさま消費」に合わせたモデルチェンジが必要です。「家族向けパッケージ」と「おひとりさま向けパッケージ(おひとりさま同士、友達との旅行のようなものも含む)」はほとんど併存してもいいわけです。
住居問題も様変わりです。現役世代のおひとりさまが自分の終の棲家として購入する物件も増えてくるでしょうし、高齢者のおひとりさまが住み替えとして駅近のシンプルな間取りを求めることもあるでしょう。
高齢者のお一人さまについては独居化を防ぐことも重要で、地域のコミュニティを再構築したり、介護施設等にまとまって生活するような課題もあります。
いずれにせよ「ファミリー世帯がもはや普通ではない」ということに、ビジネスモデルや社会サービスがどう適応していくかはこれからの課題となっていくでしょう。
個人はおひとりさま社会にどうマネープランで備えるか
最後は「お金」の話です。ファイナンシャルプランナーとしては、お金の問題でおひとりさまにどう対応していくべきか個人にメッセージしておく必要を日々感じています。
まず「独身おひとりさま」については、自分の人生をひとりでやりくりする覚悟を早く決めて、家を確保するなり資産をため込むなりの努力を行うことが求められます。
子どもは当然いませんし、親戚にお金を求めることは難しいでしょうから、自分の人生をまっとうするためにお金を貯めておくことが欠かせません。公的年金もひとり分では正直不足なので正社員であろうとやはり老後に向けた貯金が必要です。
次に「結婚したあとおひとりさま」の問題です。結婚しているとピンときませんが、誰でも最後はおひとりさまになるわけです。特に女性は夫が先立ったあと相当長い「おひとりさま」生活になることがあります。一方で体力的には不安が高まる年齢です。
すべてを頼ると子どもの生活や仕事にも支障が出ますから、子のサポートを受けつつも、自立して(必要に応じて介護サービス等も利用して)生活をしたり、介護施設への入居等も考えながら暮らしていくことを、早めに考えておくことが大切になります。もちろん、経済的余裕が選択肢を広げることになりますから、まだ現役世代であれば子育て夫婦も老後に向けた備えが必要でしょう。
あまり未来を悲観する必要はありませんが、ある程度の危機感を持つことが、将来に向けて備える原動力になるのは事実です。税制優遇のある制度(言い換えれば、国が資産形成をするよう誘いをかけている)は利用しておくといいでしょう(代表的な制度はNISA、つみたてNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金))。
「おひとりさま」ライフ、死ぬまで、堂々と楽しんで、最期の日を迎えたいものです。