今夏100万口座達成のiDeCoに「iDeCo+」が爆誕! で、プラスって何?【訂正あり】

iDeCoにiDeCo+が誕生。画像は国民年金基金連合会ホームページ。

iDeCoこと個人型確定拠出年金がこの夏100万口座達成の見込み

老後のためにお金を増やしておきたいと考えるなら、真っ先に検討するべきは生命保険会社の「なんとか年金保険」ではなく、「iDeCo(イデコ。個人型確定拠出年金)」です。

iDeCoの口座の仕組みを簡単にいえば「自分のお金をiDeCoの口座で自分の老後のための仕送りとして貯めておくなら、国としてはその分について税金を払わなくてもいい」という仕組みです。

年収や控除の状況にもよりますが、仮に20%税金を引かれている人なら、100万円積み立てたということは国に本来納めるべき20万円を自分の老後に繰り越したということになります(普通なら税金を引かれて80万円になっているので)。このような強力な税制優遇はiDeCoか住宅ローン減税くらいしかありません。

さて、iDeCoの制度そのものは2002年1月からスタートしていたものの(法律は2001年10月から施行)、2017年1月より国民のほとんどが利用できるように規制緩和され、またiDeCoというニックネームもついたことから一気に利用者が拡大しました。

今年に入ってからの利用者増のペースと、最新の情報から推定するところ、8月末に100万人に達するものとみられます。

国民年金基金連合会ホームページによれば6月末加入者が94.6万人で毎月2.5~3.5万人くらい増加している)

利用できる国民のボリュームゾーンでいえば6000万人くらいあるので、利用率はまだまだですが、100万円というひとつの壁を突破したことになります。

新たなiDeCo、iDeCo+が堂々誕生?

そんなiDeCoですが、制度を所管している厚生労働省と国民年金基金連合会のホームページに「iDeCo+」なる新制度の案内が掲載されています。

4年で1000万口座以上を獲得し、国民の投資を促してきた税制優遇口座NISA(ニーサ。少額投資非課税制度)が、さらなる拡大を目指し、2018年1月より「つみたてNISA」という新制度をスタートさせたのにどこか似ていますが、この「iDeCo+」とは一体何ものでしょうか。

実はこれ、一昨年に法律が成立済みであって、今年の5月に施行された「中小事業主掛金納付制度」のニックネームです。

iDeCoは個人型の確定拠出年金というように、基本的に「個人が任意に加入して、自分の所得の一部を毎月積み立てる」という仕組みです。企業型の確定拠出年金が原則として会社の退職金制度として位置づけられ、お金は会社が負担するのと真逆の仕組みです。

ところがこのiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、「個人が任意に加入して、自分の所得の一部を積み立てる」iDeCoに、「会社が一定の金額を負担し上乗せする」という仕組みです。つまり「個人の老後の備え」+「会社の退職金的な仕組み」ということになるのです。

退職金のない中小企業の社長なら検討の価値あり

iDeCo+は、「社員がやりたい」と考えるものではなく「会社がやるかやらないかを決める(いくら出すかを決める)」仕組みです。その意味では「私やりたいなあ」ではなく、中小企業の社長が判断して行うものになります。

また、この制度は従業員数100名に満たない会社、つまり中小企業を想定しています(厚生年金適用の有無で判断する)。社員数が30~99名の中小企業では退職金制度の実施率が低い状況にあり、72%という数字もあるほどです。大企業では実施率は94%ですから大きな差です。(厚生労働省「平成25年就労条件総合調査結果」) 

このとき、iDeCo+を活用すれば「社員にiDeCoに自分で入ってもらい」「会社が一定金額を上乗せする」というやり方でシンプルな退職金制度を作ることができるわけです。会社が負担し、支払ったお金については会社の経費として損金算入することができます。

会社と社員のポイントを簡単にまとめておきます。

会社にとっての注意点:

・iDeCoの掛金は会社がとりまとめて国民年金基金連合会に納付する天引き形式にしなければいけない(iDeCoでは社員個々人の銀行口座からの引き落としが主流)

・中小企業を対象にしている総合型の確定給付企業年金や厚生年金基金に加入し企業年金制度を実施している場合、iDeCo+は利用できない(社員はiDeCoに加入し月12000円まで積立できる)(※8/30この項目を追記しました)

・制度のスタート時には労使合意を必要とする(国民年金基金連合会にいくつかの提出書類が必要でちょっと面倒)

・いくら上乗せしてあげるか、基本的なルールを決めておく必要がある(平社員と管理職で金額の差をつけるのは可)

・全社員にiDeCo+利用を強制することはできない

社員にとっての注意点:

・上乗せした会社の掛金については「退職金」的ではあっても60歳まで原則として受け取れない(中途退職時にはもらえない)

・iDeCoの口座管理手数料については社員が負担する(内枠で掛金から引かれる。企業型確定拠出年金の場合、会社が事務費を別途全額負担するのが一般的)

・会社が掛金を出してくれる場合、毎月の拠出限度額はその分下がる(月23000円の限度額は変わらない)(※8/30訂正 確定拠出年金や厚生年金基金に加入している会社はiDeCo+は利用できないので限度額は23000円のみです。訂正しました。)

・iDeCo+であっても、口座管理手数料は社員が負担する

・iDeCo+を利用しない(あるいはiDeCoに加入しない)人が、プラス分の会社の掛金を現金でもらうことはできません(iDeCo+がある場合、使わないと損)

詳しくは厚生労働省ホームページのパンフレット国民年金基金連合会ホームページの紹介ページを参照してください。 

iDeCo+、普及すればおもしろいが金融機関の取り組みが重要か

さて、iDeCo+は会社としてやる仕組みなので、個人の意思だけでスタートできるわけではないところが普及するかどうか予想のつきにくいところがあります。

認知度の問題もあります。そもそも知られていない制度は誰も利用しません。iDeCo+というのは悪くない名称ですから、行政の広報にも期待が寄せられます。

仕組みとしては、中小企業が退職金を「初めて」導入するには悪くない仕組みです。しかし対象が中小企業に限られており、中小企業の社長にとってはちょっとわかりにくい(書類の準備も大変)点もあるため、金融機関や社労士・税理士等の出入りしている先生のアドバイスが欲しいところです。

りそな銀行などはiDeCo+の案内パンフレットを自社ホームページに掲載して、顧客アプローチを積極展開する構えを見せています。これに続いて顧客へのアプローチをしていく金融機関がいくつか出てくれば、一気に普及する可能性も考えられます。

いずれにしても、社長がある日突然出社して「そうだ、iDeCo+しよう!」と言い出すタイプの仕組みではありません。中小企業がこの制度を活用して、社員の退職金の備えにも意識するようになることに期待したいと思います。