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この年末に早期退職を会社が募集してきたら応じるべきか

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
早期退職を会社が募集してきたらあなたはどうする(東芝子会社が早期退職を募集開始)(写真:つのだよしお/アフロ)

東芝子会社が、早期退職を募集

今後の行く末が厳しい会社としては東芝があります。事業の売却や縮小が報じられ、早くも転職に成功した人の記事がネットのアクセス数上位に入っていたりします。

30代「東芝」社員の転職日記 残す1社の結果は、そして迎える“さらば東芝”(デイリー新潮)

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171129-00533283-shincho-bus_all

先日、東芝の子会社が300名の早期退職を募集することがニュースになりました。12月にもなろうとしている年の瀬のこの時期に早期退職募集の通知を見ることになる社員の気持ちを思うとなかなかつらいものがあります。

東芝、子会社で早期退職=300人募集(時事通信)

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171129-00000054-jij-bus_all

しかし、早期退職は退職金の割り増しがあったり、一定期間については賃金を支払ってくれたり、自己都合で退職するより有利な条件で辞められるチャンスと考えることもできます。

しかしこれをチャンスと捉えるべきかは、当事者にとっては難しいところです。そこで、「年の瀬に早期退職に応じるべきか」という人生の分岐点で考えておくべきキーワードを整理してみましょう。

この冬のボーナス額を見れば会社の元気度が分かる

あなたがもし、50歳より若いのであれば、過去よりも今、今よりも未来の方がスキルは高くなっていくはずですし、その分の対価として会社からは今よりもこれからのほうが年収を多く受け取らなくてはいけません(今までのあなたが能力分不相応に年収が高かったのなら話は別ですが)。

その点でいえば、これから年収が上がる余地があるかどうかは、早期退職に応募するかどうかの分岐点になります。まずチェックしてみたいのは「この冬のボーナス」です。

この冬のボーナスが上がっていない、というかむしろ下がっているということは全国平均ともずれている感覚ですし、今後も続く可能性が高いと思います。見切りをつけて違う会社に移ることも真剣に考えるべきタイミングです。

気になる人は会社のいろんなところを見てみましょう。早期退職に応じて外に出た方がいいかヒントが隠されています。たとえば

  • 新卒採用がない(新しい人材を採用する余力がない)
  • 歓迎会より送別会のほうが多い(中途退社する同僚が多い)
  • 経費削減がしきりにアナウンスされる
  • 会社の売り上げは下がり続けている
  • 会社の決算は赤字が続いている(あるいは赤字転落寸前である)
  • 閉鎖している支店や店舗が多い
  • 事業を切り離して売り払っている
  • 役員の入れ替わりが多い(銀行から役員が来た)

のような傾向がいくつか当てはまるところに「ボーナス減」ということであれば、これは早く動いたほうがいいように思います。

ときどき「会社が大変なときに一緒にがんばりたい」と言う人もいるのですが、あなたの稼ぐ力がもっとも高まっている5~10年、昇級や昇格のチャンスを逃したとしても、業績回復後の会社が10年後に差額を補てんしてくれるわけではありません。

仮にボーナスが20万円ずつ取りこぼし、10年がたつ、ということは生涯賃金が400万円減ったと考えるべきですし、年収アップが据え置かれたとしたらこれまた数百万円以上の損失になります。

むしろ会社はあなたを能力以下のギャラで安く使うことで業績回復をたくらんでいる、とくらいに思うのがいいと思います。少なくとも、会社に対して義理とか恩義を感じないほうがいいでしょう。

早期退職の条件をよくみる

ただし、あなたが注意するべきは早期退職の条件です。

退職時期はいつが設定されているか……募集の時期と退職の時期を確認します。募集については希望人数に達したらストップする場合、熟慮していたら乗り遅れた、ということもあります。また退職時期がいつに設定されているかも確認します。

割増退職金はどれくらいか……一般的には自己都合退職ではなく会社都合退職扱いで退職金を支払うだけでなく、退職金額を割り増しすることが一般的です。この割り増しが「6カ月分の給与」なのか「12カ月分の給与」なのかによって条件はまったく違ってきます。実は24カ月ということも少なくありません。多いほど転職活動のあいだ有利な条件を探す心理的余裕にもなります。有給日数が残っていた場合、これを買い上げて支払い額に上乗せするケースもあるようです。

転職活動中の保障があるか……ないことのほうが多いのですが、一定期間は仕事をせず転職活動に励んでよい、とする場合があります。この場合給料をもらいながら転職活動することで、無職期間をゼロにするチャンスがあります。

退職金の受け取り条件があるか……確定給付企業年金の場合、勤続20年以上なら受け取りを留保して60歳から年金受け取りが可能ですが、経営が厳しくなっている会社の運営する企業年金ですからこれは避けて受け取っておくほうがいいでしょう。また確定拠出年金(企業型)の場合、退職時には一円も受け取ることができず、口座をそのま個人型確定拠出年金(iDeCo)に移すことになるので、無職期間中の生活資金には使えないので注意が必要です。

早期退職を前向きに捉え、2018年をチャレンジの年にしよう

「まさかうちの会社が早期退職を募集してくるとは!」とショックに思う人も多いでしょう。しかしここは頭を切り替えるチャンスだと思います。

給与がアップしない、ボーナスが増えない(というかむしろ減っている)けれど、仕事はし続けているというのは、あまり危機感が生まれにくい状況かもしれません。ヤバいかもなあと思いつつ、転職活動を避けていることがあります。しかし早期退職募集になったというのはかなり状況が緊迫しているということです。

たとえば100人に仮に毎月50万円の人件費を払っていたとすれば会社は100人の退職により月5000万円の人件費を削らないといけない状況にある、と考えることができます(これにより年間6億円も人件費を削ることになる)。それくらいキツい状態にある会社があなたの給料をアップしたりボーナスをたくさんくれるでしょうか(特にボーナスは業績連動の傾向が高いので増えない可能性が大です)。

むしろ年末にすべてのマイナスは吐き出してしまい、2018年は心機一転、チャレンジと飛躍の年にする、と考えてみてはどうでしょうか。

この時期の早期退職募集ということはおそらく、年末退職ということはないはずです。お正月休みを無職で過ごさず、むしろ転職のための準備に使えると思えばこれも勇気を出す理由になるのではないでしょうか。

幸いにして有効求人倍率は高く、正社員の有効求人倍率は1倍を上回っています。過去をみても求人する人に有利な方向にあります。上り調子の会社に就職がみつかれば、一気に年収も増えて仕事も楽しめる環境が得られるかもしれません。

早期退職募集、焦らず、しかし勇気をもって、しっかり検討してみてください。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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