あなたの年収は7段階でこれから下がり続ける~「年収ダウン7つの崖」とは何か

人生の後半は、年収が下がる「7つの崖」があるという。(写真:アフロ)

年収は7つの崖を転がり落ちるように下がっていく

週刊ダイヤモンド2017年9月2日号「定年後の歩き方」の特集がなかなかうまいことを言っていたので、これをフックにお金の話をしてみたいと思います。それは「7つの崖」という例えです。

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年収がなかなか上がらない、という苦しみに団塊ジュニア以降の世代は苦しんできたわけですが、昇格がようやく実現して年収が上がったからといって、そこからもう下がらないわけではありません。

むしろ「ここまでうまくやってきた」50歳代ほど年収が下がり続けていく崖を何度も飛び降りることになります。それが「7つの崖」です。

現役時代からすでに年収は減り始める

あなたの収入が下がり始めるキーワードとして、同紙では「5+2」の崖があるとしています。ファイナンシャルプランナーとしての筆者の見解もほぼ同じでした。それぞれ筆者のコメントも交えながら解説してみましょう。

第1の崖:役職定年……これは管理職になった人だけの話ですが、一定年齢になると役職を外れることが慣例となっている会社が多くあります。55歳になると部長等の肩書きが外れ、その分年収が下がります。役職についてなくても関連会社に出向・転籍などを命じられることで年収が下がるケースもあります。同紙ではこの崖で20%ほど年収が下がるとしています。

第2の崖:定年退職(再雇用)……次の崖は60歳です。多くの会社は60歳定年を維持していますが、65歳までは働き続けることができます(再雇用制度)。65歳まで働くことは法律上の権利ですが、給与はがくんと下がります。雇用保険の継続雇用給付がもらえますが、穴埋めできるほどではありません。この崖は25%ほど下がるといえます(継続雇用給付の支給要件が25%ダウンなので)。

小さな山1:(第2の崖については退職金が出る場合、まとまったお金が入りますが、ここで穴埋めに使わないことが大切です。その後の崖の落差に備える必要があるからです)

第3の崖:年金受給開始……公的年金は65歳受給開始に完全移行が進んでいます。しかも夫が65歳でリタイアしても自分の公的年金しかもらえないので、かなりの収入減になります(妻が年金をもらい始めるまで加給年金がプラスされるが、妻の満額年金額には満たない)。老齢厚生年金と老齢基礎年金のモデル年金額合計は、一人分だけだと約16万円というところでしょうか。

小さな山2:(ここにも少しだけ山があって、妻が自分の年金を満額受給開始になった場合、収入総額は少し増えます。妻が年下であった場合、妻が65歳になったとき、と考えておくといいでしょう)

第4の崖:企業年金の給付終了……会社員のおおむね4人に1人は企業年金制度があって、会社からも年金を受けられます。しかし多くの企業ではこれを有期年金(一定年数で支払いが終了する)にしています。10年もしくは15年が主流で、65歳から受けたとすれば75歳ないし80歳でまた収入が下がります。ただし、年金払いを選択せず退職時にキャッシュで受け取った場合は対象外になるのでそもそも「崖」すらありません。

第5の崖:配偶者との死別……夫婦合計の年金額でなんとかやりくりしていた家計も、どちらかの死別によりさらに年収が下がります。このとき、国民年金分(老齢基礎年金)はもらえなくなり、厚生年金分は遺族厚生年金として約4分の3がもらえます。ただし共働きで厚生年金をふたりとももらっていた場合、二重取りはできず調整されるので、もっと収入はダウンします。

そしてもう2つの「見えざる崖」がある

さて、「7つの崖」の記事のもうひとつのポイントはさらに2つの崖を設定し「見えざる崖」としているところです。この崖は落ちる場合と落ちない場合がある、という崖でもあります。

見えざる崖1:病気……病気というのは「いつなるか」「どれくらいの期間療養になるか」「どれくらいかかるか」という要素がすべて未確定なので、予想困難なのですが、負担が高額で長期に及ぶことは家計のリスク要因になります。高齢者の高額療養費には上限があるため、無制限にかかるわけではありませんが、やはり高額になるかならないかでは大きな違いです。

見えざる崖2:介護……介護もまた予見が難しい不確定出費のひとつです。これまた「いつから必要になるか」「どの程度介護を必要とするか」「どこまで介護保険で利用でき、どこから完全自己負担となるか」といった要素がからみあいます。

もうひとつ、介護は「親の介護」に40~50歳代の子が負担を求められるようになることもあります。この場合、50代でやってくる家計の崖になります。

「収入の崖」対策を4つ考えてみた

さて、ここまでなら雑誌のポイント解説止まりですから、ここから少し筆者のアドバイスを加えておきたいと思います。4つの収入の崖対策です。

対策1:崖の存在を早く理解し、下がり始める前に貯められるだけ貯めておく……「彼を知り己を知れば百選危うからず(孫子)」の例えではありませんが、「知っている」ことと「知らない」ことでは崖の対処はまったく違ってくるでしょう。覚悟している崖の登場なら乗り越えられても予期せぬ崖ではパニックになります。そして、下がり始める前に、少しでも貯める努力を続けておくことです。貯められる家計ということは、少し年収が下がっても維持できる家計でもあります。

対策2:崖を下り始めたら、収入ダウン=支出ダウンを徹底する……次の対策は「崖を落ちて年収が下がった分、生活水準もきちんと落とす」ということです。崖が発生するまでは「年収増=生活水準増」を続けていくわけですが、その流れは止まったのだと腹をくくるしかありません。逆にいえば、年収減と出費減がきちんと同期できれば崖はそれほど脅威にはなりません。

対策3:働くことによる収入をできるだけ長く、できるだけ多く得られる方策を模索する……60歳時点での崖は継続雇用を甘んじて受けることに起因します。もしあなたに確固たるビジネススキルがあり準備もできていれば個人事業主として稼ぐか別の会社に再就職を試みることで年収減の歯止めをかけることができます。また、定年がない会社に働くか個人オフィスとすることで、働く期間を延ばせば、崖のタイミングを遅らせ、また崖の高低差を小さくできます。

対策4:引退したら田舎暮らしを真剣に考える……最後の対策は年金生活スタートと同時に首都圏は離れて田舎に戻ることです。もちろん戻れるかどうかは個人のケースによりますが、田舎がある人は生活水準を落とすことで収入減に対応できます。老後の経済的余裕が微妙であれば、東京の生活水準ではない生活をすればいいからです。東京の家があってもし貸家にできるならさらに収入が増えるかもしれません。

「収入の崖」は誰にもやってくる

週刊ダイヤモンドを読んでいると、「これは上場企業の管理職だけの話じゃないのか」と思うかもしれませんが、基本的に収入の崖は誰にでも訪れるものです。

どんなに少なくとも「定年(再雇用)」と「年金受給開始」「配偶者との死別」の崖は避けられません。また「病気」「介護」の見えざる崖も誰にも訪れるものです。

雑誌の特集は一過性かもしれませんが、「崖」の存在は消えるわけではありません。できる限り早く「知る」ことがまず大事だと思います。そして、できる限りの対策をもって、きたるべき崖の登場に備えておきたいところです。