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ドラマ「トリリオンゲーム」は低視聴率。だが同作品は、日本に新しい可能性を生み出すヒントが満載だ(上)

鈴木崇弘一般社団経済安全保障経営センター研究主幹
日本からGAFAのようなビッグビジネスは生まれるのか(写真:當舎慎悟/アフロ)

 現在最も注目されるアイドルで若手俳優の一人である目黒蓮さんが連続ドラマ単独初主演のドラマ「トリリオンゲーム」(目黒さんが、主演のハル/天王寺陽役)が、ドラマの内容以外の面で注目されている。

 その一つが、同ドラマが、低視聴率を記録していることだ。7月4日に放映された第1話は視聴率7.4%でまずまずだったが、その後は5%の半ばからさらに下降傾向で、第7話はなんと4.9%で、5%を切った。第8話では5.1%とやや盛り返したが、同ドラマが放送されているTBS金曜日ドラマ枠の最低視聴率を更新したという残念な状況にある(注1)。

ドラマ「トリリオンゲーム」の視聴率は低下傾向だ
ドラマ「トリリオンゲーム」の視聴率は低下傾向だ提供:イメージマート

 このような低い視聴率の要因としては、目黒さんの役柄や演技力だといわれることが多い。確かに、目黒さんの最近出演した作品、例えば、フジテレビのドラマ「silent」、NHKの連続テレビ小説「 舞いあがれ! 」映画「わたしの幸せな結婚」などでは、冷静でクールそして優しそうでかっこいい役柄が多く(アイドルの時にも、同様のラインだ)、ファンの間ではめめ(目黒蓮さんの愛称)のそのイメージができていた。それに対して、ドラマ「トリリオンゲーム」では、かっこよくて、高いコミュニケーション力およびプレゼン力があり、枠を超えた非常に優秀な能力を備えてはいるが、裏に何かがありそうで読めない詐欺師まがいの胡散臭そうな「あんちゃん」のような人物を演じている。これは、目黒さんのこれまでのイメージとは大きく異なるものだ。その意味で、従来のファンにとり、なかなか受け入れがたい役柄だと感じる。

 またメディアでは、目黒さんのこの役での演技が下手と酷評されている記事が散見される。だが、筆者は、他の作品同様、目黒さんはこのドラマでの役柄に合った非常にいい演技をしていると考えている。だからこそ、目黒さんの従来のイメージとのギャップが生まれ、演技力への違和感が生まれ、演技力への疑問を生んでいるようだ。

 以上のようなことから、そのドラマではこれまでの目黒さんの出演した作品とは大きく異なる役柄であり、それに正に合致した演技をしているがゆえに、特に従来のファンなどの期待を裏切っていることになり、それが残念ながら低視聴率につながっているように感じる。それは、逆説的にいえば、目黒さんは、ファンの期待を裏切るぐらいに演技力が高いことの証明であるということもできよう(注2)。

 それは、目黒さんのタレントのブランディング的には短期的には問題だといえるが、タレントの中長期的な価値としては、いい経験になっていると考えることができるだろう。また作品は、その内容や演技力の良さが、高視聴率には必ずしも結び付かないことも多いのが現実だ。そのようなことから、そのドラマは、その低視聴率が、メディア等で話題になることが多い。

 それ以外にそのドラマで良く取り上げられる話題は、同ドラマにおいて、主役の重要なカウンター役およびヒロイン役であり最近大注目の若手女優であるチャーミングな今田美桜さん(同ドラマのドラゴンバンク社の社長の令嬢で同社の取締役の桐姫/ 黒龍キリカ役)がドラマで着るファッションだ。今田さんは、毎回異なる豪華で華やかかつアピーリングなファションを着て登場しているが、そのことやドラマのインスタにあげられる写真が、ドラマの内容や展開そっちのけで、その度にSNSやメデイアで取り上げられている。筆者は、今田さんのファンなので、そのこと自体は非常にうれしく思っているが、そのドラマの扱いとしてはもったいないと感じるところだ。

ドラマ「トリリオンゲーム」に出演するチャーミングな今田美桜さんのファッションには注目が集まる
ドラマ「トリリオンゲーム」に出演するチャーミングな今田美桜さんのファッションには注目が集まる写真:つのだよしお/アフロ

 これらのことが、そのドラマの今のところの評判であり、評価になっているようだ。

 だが、このドラマは、その内容も社会的にもっと注目されるべきだと考えている。そう断言できるのは、このドラマには、日本の新しい可能性を生み出すヒントが満載だからだ。

 そういえるのは、このドラマは、小学館の『ビッグコミックスペリオール』で、2021年1月から掲載開始され現在も連載中の稲垣理一郎さんの原作漫画作品『トリリオンゲーム』(作画:池上遼一さん)を基に作成されており、しかもその原作は、原作者の稲垣さんとスペリオール編集部が、さまざまな外部の人材・企業等(投資家、起業家、実業家、スタートアップ企業、ゲームプロデューサー、関連企業)による取材や技術監修・協力なども受けており、高いリアリティーが確保されているからだろう。

 以上のことを踏まえて、そのドラマから学べる、日本における今後の新しい可能性を生み出していける方策やスキルについて、次号で説明していきたい。

                …次号に続く…

(注1)この点に関しては、次の記事等を参照のこと。

「ついに『最低視聴率』を更新...近年の『ドラマ』と比べても、もちろん最下位」(いまトピランキング、2023年8月29日)

「Snow Man目黒蓮が“TBSの最低視聴率”を更新!? 初主演でいきなり爆死」(まいじつ、2023年8月22日)

「『トリリオンゲーム』視聴率【一覧表&グラフ推移】目黒蓮主演ドラマ」(ドラマの噂話、2023年8月28日)

「金10ドラマ歴代視聴率【TBS22時】過去ドラマ視聴率一覧&グラフ比較」(ドラマの噂話、2023年6月26日)

(注2)目黒さんの出身大学は、筆者が教鞭をとっていたことのある大学でもあり、この点を誇りに思う。

一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て、東京財団設立に参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・フロンティア研究機構副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立に参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。㈱RSテクノロジーズ 顧問、PHP総研特任フェロー等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数

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