週末に調査されて10月18日に発表された報道STATION・ANNの世論調査によれば、19日公示、31日投開票の衆議院選挙の投票について、59%が「必ず行く」、27%が「たぶん行く」と回答している。また読売新聞社が衆院選の序盤情勢を探るために実施し、20日の紙面で発表された全国世論調査では、投票に「必ず行く」と回答した者は77%だった。

 これら数字をみる限りでは、世論調査へのリップサービスもあろうが、それなりに関心が高いと考えられる。先の自民党の総裁選の関係で、4日に新しい総理大臣が誕生したことも関係しているかもしれない。他方、前者の世論調査における同総理の政権への支持率は、43.4%と、新政権成立直後の数字としては割とかなり低い数字が出ている(注1)。これはある意味、国民・有権者が政治をキチンと見て、辛辣な評価をしているからだともいえなくもないだろう。

衆議院選挙が間近だ
衆議院選挙が間近だ写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 このような政治状況であるが、改めて「選挙」について考えてみよう。

 日本をはじめとする民主制度を採用している国や地域は、そのほとんどは「間接民主制」(注2)をとっていて、そこの主権者(国民・有権者)が、選挙を通じて、自分の代表者を選び、その代表者(議員)が、行政と共に、基本的に政治や政策づくりに関して責任を持ち、政治や政策的な決定を行っている。主権者は、その政治や決定・執行された政策の結果や状況をみて、次の選挙で継続させるかあるいは変更させた方が良いかを決めるということになる。

 多くの民主制の国・地域では、選挙以外にも民意を反映する方策やチャネルがあるが、やはり政治選択としては、また社会全体としては、その結果が明確に反映されるという意味において、「選挙」は非常に重要な機会である。

 主権者は、日常的には、仕事や活動、家事・育児、学習などで多忙であり、政治や政策について常時考えたり、知ることはあまりないだろう。その意味からも、「選挙」は数年に一度政治や政策等について考える貴重な機会になるのだ。また政治や政策について考えるということは、自分の住む国や地域の将来やその行く末、そしてどんな社会であってほしいかなどについても考える好機になる。

 さらに「選挙」の時は、たとえ本人が「選挙」に行かずとも、街角で街頭演説を聞いたり、街宣車(選挙カー)をみかけたり、候補者や候補者のポスターあるいはその選挙チームのメンバーをみることも多いはずだ。その意味で、「選挙」の時期は、国・地域で生活する主権者にとって、政治や政策を最も身近にみたり、感じる可能性の高い「時間」「環境」だともいえます(注3)。

 このように、「選挙」は、本来は非常に得難い貴重な機会なのだ。

選挙前には党首討論会も開催される
選挙前には党首討論会も開催される写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 しかし、何千万人もいる有権者の一人に過ぎない自分が、自分の貴重な時間をわざわざ使ってまで(注4)、投票所にいって投票する必要があるのかと思っている方も多いかもしれない。特に若い有権者の方々は、これまでの投票率などから考えても、そのような傾向が強いかもしれない。

 そんな方々に興味深い記事がある。それは、「若い世代の投票率が1%下がると、年間7万8000円損をする?私たちが選挙に行くべき理由を考えてみた。」(ハフポスト日本版、2121年10月19日)である。

 この記事によると、世代別の投票率の差と若い世代の財政的負担と受けられる利益について、次の2点から分析・試算すると、「若年世代の投票率が1%下落すると、合計78,049.1円経済的な地位が損なわれる」という。

・政府の支出を賄うための資金調達を「税金」で行うか、将来世代の負担につながる「国債」で行うかについて、世代別の選挙の投票率が影響しているかどうか。

・政府の「年金・高齢者医療・老人福祉などの高齢者向けの社会保障支出」と、「児童手当・児童福祉・育児休業・出産関係費など子育て若年世代向けの社会保障支出」に及ぼす投票率の影響。

 この試算をした吉田博・東北大学大学院経済学研究科教授らは、これは世代間の対立を煽るためでなく、「ゼミの学生たちと『若者の投票率を上げるために何をしたらいいか』と考えたなかで、経済学部であれば、選挙に行く価値や棄権する価値を、金額で示すという経済的な視点で示したらわかりやすいのではないか、というところから始ま」ったそうである。

世代間での負担と受益のアンバランスも存在する
世代間での負担と受益のアンバランスも存在する提供:イメージマート

 これは、以上のことからもわかるように、あくまでも参考となる試算に過ぎないが、若い世代も選挙にいかないと、まずいかもしれないと考えるきっかけになるかもしれない。

 またこれまでもあまり投票にいったことのない方や若い世代で今回がはじめての選挙を経験される方々などの中には、「選挙に参加したり、投票することが重要なのはわかった。でも、どう投票すればいいんだ。誰あるいはどの政党に投票すればいいんだ」と思われている方も多いかもしれない。

 これまでに何度も投票の経験をされている方は、投票所がどんなところで、そこでどうすればいいか、自分の投票すべき候補者や政党をどうやって選べばいいかはよくわかっているであろう。でも、そうでない方はどうすればいいのか。

 まず今回が選挙初心者の方は、投票所はどんなところかを知るつもりで、好奇心を持っていってみてはどうだろう。そのうえで、もし事前に候補者や政党などについて調べて、良いと思われる候補者や政党がいたら、それらに投票する。

 しかし、もしそんな時間も気持ちもないなら、たとえば次のような質問項目を目安にして考えれば、投票先も決められるはずだ。

①現状に満足しているか(Y)、あるいは必ずしもそうでないか(N)。

②今のままであってほしいか(Y)、あるいはかわってほしいか(N)。

③社会の今後に不安や疑問を持っていないか(Y)、あるいは持っているか(N)。

どう投票すればいいのか
どう投票すればいいのか提供:イメージマート

 もし回答がすべてYかYが多ければ、現在の与党に投票するのが良いだろう。逆に回答がすべてNかNが多いなら、与党以外の野党(のどれかの政党)の所属議員に投票するのがいいだろう。

 上記の質問に対してよくわからないなら、小選挙区投票と比例投票での投票者所属政党を与党と野党(のどこかの政党)にたすき掛けなり別の政党に選択するというのも一つの手である。

 もしそれも面倒、選びたくないなら、積極的にはお薦めしないが、候補者等書かずに白票で投票するというのもあるかもしれない。白票は有効投票にならないが、ある意味の政治の意思を示すことになる。そしてその白票数がある程度多ければ、今の選挙制度や政治・政策に対する不満や注意喚起等の表れになり、社会や政治がそのことに必ず注目して、何らかの変化が起きうるとも考えられる。

 また選挙の当日、用事がある方もいるだろう。そんな方には、期日前投票という仕組みがある。最近の選挙期日前の投票は、以前と違って、非常に手軽にかつ簡単に利用できる。投票所同様、期日前投票場は自宅付近にあることが多いので、外出する用事などがあり、ちょっと時間的余裕のあるときに立ち寄れば、すぐに投票でき、自身の貴重な権利を即行使できる。

 このように書いてきても、有権者の方々の多くは、自身の声・意見や投票の重要性を感じることはないし、重要だとは思っていないかもしれない。だが実は候補者や議員は、有権者が考えているよりもはるかに有権者のこと(意見や動向など)を大いに気にしている。その意味で、実は皆さんの一票は非常に重要なのだ。何なら、もし皆さんが社会や自分の住んでいる地域に問題や課題があると思ったら、きちんと考えをまとめたり、関連の情報を整理して、近くにある彼らの事務所などに電話をしたり、訪問してみるといい。議員・候補者あるいは秘書の方等が、話を聞いてくれるはずだ。

 さらにもう一つ。もし皆さんが、投票して、投票した候補者や政党が当選したり、与党になったりしたら、その後どのような活動をしているか、掲げていた選挙公約・政策公約がどうなっているか、ぜひ確認したり、調べてみよう。また選挙後の生活や社会・経済がどのようになり、皆さんがそれをどう感じているかをたまに確認してみることが大切だ。それらの情報や気持ち・感情、さらに意見は、実はその次の選挙でどのように投票するかを考えるときに非常に参考になり、かつ重要なのだ。またそのようなプロセスや活動こそが、議員や政党などに国民などの声を聞くことを努めさせ、政治や政策における緊張感と改善をもたらすのだ。

 最後に、昨年度米国大統領選で副大統領になったカマラ・ハリス『勝利宣言』のスピーチが、私たち日本人が、民主主義社会で、自分たちが主権者として果たすべき役割を明確に指摘しているので、ここに引用しておきたい。

民主主義で問われているのは国民・有権者だ
民主主義で問われているのは国民・有権者だ提供:barks/イメージマート

「ジョン・ルイス議員は、亡くなる前にこう書きました。『民主主義とは状態ではない。行為である』と。そして、彼が言わんとしたのは、アメリカの民主主義は保障されているものではないということです。民主主義は、それを求めて戦うわれわれの意思の強さと、それを守り、それを当然のこととは決して見なさないわれわれの意思の強さと、同等の強さでしかありえないのです。そして、民主主義を守るのには大きな努力が必要ですし、それには犠牲が伴います。しかし、そこには喜びがあり、進歩があります。なぜなら、われら人民にはより良い未来を築く力があるからです」(注5)

 私たちは、この言葉をかみしめて、来るべき衆議院選挙をはじめとする今後の選挙に、臨んでいくべきだろう。

 その意味からも、まずは選挙・投票に行こう!

(注1)拙記事「岸田政権で試みてほしいこと。」(Yahoo!ニュース 2021年10月10日)を参照。

(注2)「デジタル民主主義」が国・地域で採用されれば、選挙以外にも、主権者や人々が、より日常的に政治や政策づくりに関わることができるかもしれない。「デジタル民主主義」については、拙記事「デジタル民主主義…今こそ、新しい政治制度の構築を!」(Yahoo!ニュース、2021年9月10日)「『デジタル民主主義』って何? 暮らしどう変わる? 10月22日にオンラインでパネル討論会」(東京新聞HP。2021年10月4日)などを参照のこと。

(注3)政策は実はすべての主権者のほとんどの生活や活動に関わっているのだが、現実にはかなり想像を働かさないとそれは実感できないのも事実だろう。

(注4)選挙は、最寄りの小学校や公民館などの投票所などの投票所への歩く時間が約10分間なので、「10分間の民主主義の実践(行為)」と定義する方もいます(出典:『シチズン・リテラシー』P113 )

(注5)『バイデン&ハリス勝利宣言』(朝日出版社、2020年)の「カマラ・ハリス『勝利宣言』」p33から引用。なお、ジョン・ルイスは、「キング牧師らとともに1960年代の公民権運動で指導的役割を果たす。その後、南部ジョージア州選出の連邦下院議員(民主党)に当選し、1987年から2020年まで連続17期務めた。2020年7月、80歳で病没」(同上書、P12 )