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「共に読む」ことで移民の子どもと社会のつながり作る、カナダの移民向け「読書」事業が日本に示すヒント

巣内尚子研究者、ジャーナリスト
読書プログラム「LIRE ENSEMBLE(共に読む)」のスタッフ。筆者撮影

 日本語を母語としない子どもたちが社会の中で自分の人生を切り開くにはなにが必要なのか――。日本では外国にルーツを持つ子どもたちの不就学や高校進学の問題が指摘され、こうした子どもたちに対するきめ細かな学習支援体制を構築することが急務となっている。

 一方、「移民国家」カナダでは、大学の中から、移民の子どもたちに読書を通じ同国の公用語(注1)の一つであるフランス語と文化に触れる機会を作る動きが始まっている。既に公立学校では、母語がフランス語ではない子どもを対象にフランス語を学ぶための授業が提供されているが、それにとどまらず、子どもたちが読書の楽しみを知り、文化を理解するのを促す取り組みが大学の中から生まれているのだ。

 移民の子どもが本を読む機会を得るのを後押しするのが、カナダ東部ケベック州ケベック市のラバル大学で実施されている移民の子ども向け読書プログラム「LIRE ENSEMBLE(共に読む)」。このプログラムは親子で本を読む機会を作るもの。対象となるのは4歳から12歳の移民家庭の子どもたちと、その保護者だ。プログラムは計3回で構成され、母語をフランス語としない移民の親子が本の選び方や読書の方法、本を読むことの楽しみを知る機会を作ることが目指されている。

 ラバル大学の図書館のほか、研究者や学生、NPOの職員らが連携して2018年から試験プロジェクトとしてスタート。スタッフにも移民としてカナダにやってきた人が含まれており、プログラムを主導する同大教育学科のマリオン・ソヴェール准教授はフランス出身、カティンカ・アドリアーナ・スタン准教授はルーマニア出身だ。

◆読書をめぐる非母語話者の悩みを共有

読書プログラム「LIRE ENSEMBLE(共に読む)」の部屋に置かれた子ども向けの本。筆者撮影
読書プログラム「LIRE ENSEMBLE(共に読む)」の部屋に置かれた子ども向けの本。筆者撮影

 2018年4月28日。土曜日の午前10時半。ラバル大学の図書館には、保護者に手を引かれた子どもたちが続々と集まってきた。就学年齢の子どもだけでなく、ベビーカーに乗せられた幼児の姿も見える。子どもたちの肌や髪の色、そして保護者と交わす言語は様々だ。共通点と言えば、「移民」としてケベック市にやってきた世帯の子どもだということ。保護者の大半の母語がフランス語ではないことも共通する。中には両親のいずれかがフランス語を母語とし、もう片方が別の言語を話すというバイリンガル家庭の子どももいる。

 図書館の入口では担当のスタッフが待っていて、参加者にプログラムの開催される部屋を案内してくれる。指定の部屋に向かうと、その小さくも明るい空間には様々なフランス語の絵本が用意されていた。中には、移民や難民をテーマにした絵本も置かれている。日本に移民や難民をテーマにした絵本がどの程度あるのだろうかと思う。ケベックだけではなく、フランスの絵本もあるなど、広くフランス語圏の子ども向けの本が集められているようだ。カナダのみならず、当然のようにフランスでも移民や難民はどこか遠くの出来事ではなく日常的な存在だ。その中で、子ども向けの本の世界でも、移民と難民についての表現が展開されている。

移民や難民をテーマにした子ども向けの本。筆者撮影
移民や難民をテーマにした子ども向けの本。筆者撮影
難民をテーマにした子ども向けの本。筆者撮影
難民をテーマにした子ども向けの本。筆者撮影

 ふと部屋を見渡すと、集まった子どもたちのうち何人かは誰に何も言われることなく、絵本を手元に引き寄せページをめくり始めている。就学前の年齢の子どもたちもいるため、子ども同士でじゃれあう姿もあり、にぎやかなものの、そこにぽんと置かれた絵本をじっと食い入るように見ている子どももいる。

 ただし、絵本をじっくりと読むのはもう少し後のようだ。スタッフから説明を受けた後、保護者は子どもとは別の部屋に移動することになった。

 子ども向けの活動が別の部屋で行われている中、保護者がしたことは、家庭での子どもとの読書やそれに関連する課題を話し合うことだった。

 保護者とスタッフが指定の部屋に入り、テーブルを囲んで席に着くと、このプログラムの中心メンバーであるソヴェール准教授が、「まず、みなさんの考えや問題を知りたいと思います。家でどんなふうに本を読んでいるのか、そして、子どもと読書することについてのご自身の考えや悩みを話し合いましょう」と切り出した。

 「うちでは毎日、フランス語の本を読むようにしています。子ども自身も本が大好きです」と、まずは主催者を喜ばせるような発言がはつらつとした雰囲気の女性から飛び出した。親自身もフランス語が堪能で、子どもも抵抗なく一緒に本を読むのだという。

 だが、実際には、移民の親たちの心境はもっと複雑だ。

 「子どもと本を読みたいのですが、読んでいる途中で子どもが飽きてしまって、読み終わらないうちに、どんどんページをめくってしまいます。だから、本を読めないんです。本当は一緒に本を読みたいのに。どうすればいいのかと、思っています」

 男の子の父親だという背の高い黒人の男性が、困ったなぁという表情でこう語った。流ちょうなフランス語をあやつるインテリ風の男性だ。しかし、「本を読むことは子どもにとって良いこと」だと親が思っていたとしても、子どもというものは親の思う通りにはいかない。とりわけ母語ではない言語の本を与えられたとき、子どもはどう反応するのか。内容がよく理解できずに、飽きてしまうということは起こり得るだろう。

 「子どもと本を読むときの一番の問題は、自分自身の疲労です。仕事もあるし、疲れているので、子どもと本を一緒に読むということを継続するのはとても大変なことです」

 夫婦で参加した中南米系の女性は、心の奥底にずっとたまっていた思いを吐き出すように、一気にこう話した。隣に座っている夫と見られる男性も、それを聞いて、うんうんとうなずいている。

 保護者からはこうした悩みがどんどん出てくる。「子どもにとって本を読むことは大事なこと」だと、保護者の多くはそう確信している。だからこそ、親たちはこのプログラムに参加した。

 しかし、保護者自身も母語がフランス語ではないし、たいてい仕事や学業をしているため、日々の忙しい生活の中で、自分たちの母語ではないフランス語の本を子どもと一緒に継続して読んでいくということは、言うほど簡単ではい。 

 他方、本、あるいは絵本を読むという行為は単純に知識を得るという目的のために行われるわけではない。文章、または絵の中に込められた作者の世界観に触れ、人間が生きている社会の在り方を理解したり、人間という存在そのものについて考えたりするきっかけになる。そのことを通じて子どもたちは何かを感じ、自分の感情を働かせる。子どもたちに向けて書かれた絵本や児童書は、子どもたちが世界を知り、自分自身について考え、そしてほかの人たちとつながるきっかけを作る可能性を提供する。同時に児童書や絵本はそれが書かれた言語を使う人々の持つ世界観や文化、社会の在り方を子どもたちに伝える。

 さらに「移民」としてこの地にやってきた人々にとって、自身の子どもたちが本を読むことを通じて語彙など語学の力を身につけていくことは、子どもたちの学業や進学面、ひいてはホスト社会に適応していくために重要な意味を持つ。「移民の子どもたち」がホスト社会の中で生きていくための力をつけるためには、言葉を覚え、その言葉を使い勉強し、そして進学をしていくことが最初のステップとして重要になる。

 もともとその土地で暮らし、その土地の多くの人が話す言葉を母語として使ってきた人たちよりも、移民はずっと多くの時間と労力をさかなければ、ホスト社会で生き抜くための力はそう簡単には身につかない。移民の子どもの親たちにとって、子どもたちが言葉を覚えることを足がかりに、社会的に自立していくためのスキルや知識を得ることは、それこそ、かけがえのない願いだ。

 だが、それはそう簡単ではない。

◆移民の親子が共に読書をする経験

 5月19日のプログラムでは、いよいよ親子で本を読むという時間がとられた。スタッフが子どもたちの好みや希望を事前に把握した上で、子ども1人につき数冊の本を渡す。そして、保護者と子どもが一緒にこれらの本を読むのだ。特に子どもが小さい場合は、親が絵本を読み聞かせることになる。

 ソヴェール准教授は「知らない単語が出てきても心配しないでください。少しわからない単語があったとしても、本を読むということにおいては、本の中で描かれる物語のあらすじやその物語の構造を理解することのほうが大事なのです」と、保護者を励ます。

 同時に、ボランティアとして参加した学生を含むスタッフが、各テーブルを回り、アドバイスをしたり、助けを出したりして、親が分からない言葉の発音や意味を教えてくれることもある。

 ボランティアの女子学生が、「この絵はきれいだね。この絵はなにを描いたものかな?」「この絵本にはどんな話が書かれていると、思う?」と、子どもたちに話しかける。これは子どもに絵本の“読み方”を教えつつ、実際のところ、親たちに対しても絵本の中に示された物語について子どもたちと共有する方法を知らせているのだ。

 ほかのスタッフも、子どもたちの様子を見つつ、子ども一人ひとりが興味を持ちそうな本を探してくれている。子どもは飽きっぽい上、好みも様々なので、絵本を読むことがつまらなくなった子どもたちが床に座り込んだり、ほかの子とじゃれあったりする場面もある。しかし、それでもよほどのことがなければ、とがめられることはない。スタッフが、その子の関心をもちそうな絵本を持ってくると、床に座っていた子はすぐにその絵本に関心を示した。 

 4歳から12歳という子どもたちの言語発達の度合いは、母語もフランス語も、バラバラだ。カナダに暮らしている期間も異なる。母語では読み聞かせや読書を楽しむ子であっても、フランス語となると、そう上手くいかないこともある。スタッフはこうした子どもたちの状況を観察し、それぞれの子どもに合った読書の方法を見つけ出すのを手助けしながら、親子の読書を後押しする。

 

◆非母語話者が自分への「信頼」を持つ機会に

 それにしても、なぜ、移民の子ども向け読書プログラム「LIRE ENSEMBLE(共に読む)」が実施されることになったのか。5月15日にプログラムの中心メンバーであるソヴェール准教授の研究室をたずねた。

読書プログラムの中心メンバー、ソヴェール准教授(中央)とスタン准教授(右)。筆者撮影
読書プログラムの中心メンバー、ソヴェール准教授(中央)とスタン准教授(右)。筆者撮影

 ソヴェール准教授はこう語る。

 「このプログラムの大きな目的は移民の子どもたちにフランス語の本を読むことの楽しみや文化を伝えることです。そのための第一歩として、保護者が自ら本を選び、子どもと一緒に自立的に本を読めるようにすることを後押しします。実は子どもの前に、保護者がターゲットなのです。子どもが本を読めるようにするためには、保護者自身が自分で本を選び、子どもとの読書の時間を持てるよう『自立』できるよう促すことが大事なのです」

 本を読むことは、移民としてこの土地にやってきた子どもたちにとっては、語彙を増やすなど言語の力を引き上げるとともに、その地域の文化を知る貴重な機会になる。言葉は移民がホスト社会で生きていくために重要だ。学校での勉強や進学、就職において言語能力は問われる上、子どもたちの情緒面の発達にも言語は欠かせない。一方で、様々な背景を持つ移民の子どもたちにとって、母語ではないフランス語の本を読むことは時に困難が伴う。そこで、子どもが本を読む機会を得るためには、それを家庭内でサポートする親自身がどのような本があり、どのように読んでいけばいいのかを知る必要があるのだ。

 ソヴェール准教授はまた「その上で、目標としていることは保護者と子ども双方が読書をすることを通じて、自分自身への信頼を獲得すること」だと説明する。言語面で課題を持つ可能性のある移民は、時に、学業や仕事、教師や同僚、友人らとのコミュニケーションにおいて、自信をなくすことさえある。母語ではない言語で学業や仕事を行うことは、容易ではない。同准教授は「親子で一緒に継続して本を読んでいく中で、自信を持つことが大事です。フランス語の発音はたいした問題ではありません。親子で一緒に読書を続けていくということが重要なのです」と話す。

 

 このプログラムは読書を通じ、子どもたちの言語の発達を促すとともに、文化の共有を促している。それは突き詰めれば、読書という営みを通し、子どもたちが自分への信頼を確保し、さらには社会につながっていくことを後押しするということだろう。

◆包摂と排除の中で

 カナダは言わずと知れた移民国家だ。“後から”「先住民」と呼ばれることになる人々の暮らす土地に、フランス、イギリスから入植者が訪れ、後に現在のカナダが形成される。その後、日本からの移民も含め多様な背景を持つ人々がカナダに移り住んだ。また、現政権は移民と難民の受け入れに積極的な姿勢を打ち出している。2015年にトルドー政権の発足時に組閣された内閣では、大臣の半数が女性だった上、アフガニスタン系カナダ人で、1984年生まれの女性、マリアム・モンセフ氏も入閣するなど、カナダ社会の”多様性”を内外に示した。

 他方、カナダでも、歴史を振り返れば、あるいは、現在の社会状況を概観しても、女性に限らず、移民、難民、マイノリティーに対する差別は存在し続けてきた。現在、受け入れている「移民」に関しても、その人の学歴や職歴、年齢などが評価対象となり、国家により「選別」されることが「移民」の法的地位を獲得するのに欠かせない。移民受け入れ国というと、すべての人に開かれた「理想郷」との錯覚をおこしそうだが、実際には、国家に「選別」されなければ安定して居住するための法的地位を得ることはできない。国家が国境を管理し、「国民」とそうではない人、あるいは「市民権を持つ人」とそうではない人とを分断するシステムが構築され、テクノロジーの“進歩”と共に国境や移民の管理の手法が“洗練”される中で、国民ではない人や市民権を持たない人は憧れの「移民国家」を前にして排除される局面に出くわす。

 国家により「選別」されて入国を許された人であっても、例えばカナダでは以前から、農業部門で働く短期滞在移住労働者の就労の過酷さや搾取の実態が指摘されてきた。人種差別や排外主義の動きもあり、移民や難民の受け入れに反対する集団も存在する。時に排外主義集団によるデモ行進が新聞紙面をにぎわすこともある。移民への就職差別があるという話も聞く。

 「寛容」「包摂」「多様性の尊重」「差別」「排除」といった言葉で表現される事態が複雑に絡み合いながらも進行する一方で、政府や草の根レベルでのニューカマーの”社会統合”に向けた様々なプログラムが講じられている。「社会統合」という言葉には注意が必要で、ホスト社会における「模範的な移民」を評価し、一方では社会統合しない、あるいはできない人を「問題ある移民」と眼差し、結果的に排除してしまう懸念もある。

 一方、現実の暮らしの中で、移民の家族、特にこれからこの社会で自分の人生をつくっていく必要のある子どもにとっては、現地の言語を学び、学業に当たることは、社会で生き抜いていくために欠かせないことだ。そんな中、カナダでは政府が言語教育などの制度的支援を取り入れつつ、市民社会や大学の中から移住者の定住支援に向けた様々な取り組みが行われ、それに市民や研究者が参加している。それは、移民を取り巻く課題を社会の側が受け止め、共に生きていくための場を作ろうとする挑戦でもある。移民の子ども向け読書プログラム「LIRE ENSEMBLE(共に読む)」は、こうした社会的背景の中で行われている。

◆「移民国家」日本で生きる移民の子どもたちへの視点

 翻って、日本ではどうだろうか。未だに日本語を母語としない子どもたちの日本語教育は十分ではなく、そのことがこうした子どもたちの学業や進学、アイデンティティーの形成において課題となっている。 

 法務省の発表によると、日本の在留外国人数は2017年末時点で前年比7.5%増の256万1,848人に達した。そもそも歴史的な経緯から中国大陸、台湾、朝鮮半島の出身者はこの日本に長く暮らしてきた。80年代以降、「興行」ビザで入国した東南アジア出身の女性たちが日本で就労し、中には後に日本人と結婚し子どもを産み、日本に定住した人も少なくない。90年代以降は、日系人が多数来日し、日本で働きつつ、家族を呼び寄せ暮らしの場を作っていった。

 その後、技能実習生の受け入れが広がり、2017年末には在留資格「技能実習」の在留外国人数は既に27万4,233人となり、30万人に手が届きそうだ。同年末には在留資格「留学」の外国人の数も31万1,105人に上り、こちらは既に30万人を超えている。歴史的にはインドシナ難民としてやってきたベトナムやカンボジアの出身者も日本に暮らす。国際結婚カップルの子どもや帰化した人を含めれば外国にルーツを持つ人々の数はもっと多い。

 こうした状況を見れば、今聞かれる「日本は”外国人材”に門戸を開くことが必要だ」「外国人労働者の受け入れは是か非か」という言説や議論が、いかに現実を見ていないのかに気が付かされる。日本は既に「移民国家」であり、外国出身の労働者なくして日本の産業はもう立ち行かないし、外国にルーツを持つ人が家族の一員だという人も少なくない。今求められているのは現在既に居住している外国人が日本社会で生きていくための制度的支援を講じることであり、外国人を「労働者」としてだけを見るのではなく、私たちと何ら変わらない「人間」であり、社会のメンバーであることを認識することだ。その上で、新たにやってくる人のためにも共に生きるための受け入れ体制を整備することが求められる。

 日本の政府、そして社会はこれまで、自分たちの社会が既に異なる背景を持つ人々と暮らす場となっていることを自覚し、移住者の定住支援を十分に行うことができていたのか。

 ハヤシザキ・カズヒコ『移民の子どもの教育の現状と課題』(2015)によれば、外国人生徒の高校進学率は近年上昇している。例えば外国人が集住する浜松市では外国人生徒の高校進学率は近年、70%台後半から80%台前半で推移しているという。ただしハヤシザキ氏は「高校進学率が80%といっても、日本人をふくむ全体の進学率 98%とはまだ差があるのと同時に、高校中退者もおおいといわれる」と指摘する。その上、浜松市では外国人生徒の高校進学者に占める定時制・通信制への進学者が全体の47%(2013年)を占め、学力の開きがあると推測されるようだ。

 外国にルーツを持つ子どもたちを取り巻く課題は、日本の政府と社会が「移民」をいないものとして扱ってきたことの帰結の一つではないか。移民の子どもたちが日本語を十分に学んだ上で進学という選択肢を選べるようにしながら、自信を獲得し、人生を切り開いていくことを後押しするための取り組みが必須だ。そんな中、他の移民国家の取り組みを見ることは、それを「理想郷」としてあがめるのではなく、包摂と排除といった事態が複雑に絡み合いながら進行する現実の中でどんな取り組みがなされているのかを学び取ることにつながる。それは日本社会の現実の問題に実効力ある形で取り組むためのヒントになり得るだろう。

 「共に読む」こと。そのための空間を形作ることが、日本社会に求められている。(了)

注1:約3,515万人が広大な国土に暮らすカナダは英語と共にフランス語が公用語だ。カナダ政府のまとめによれば、「フランス語が母語」だとする人の数は2016年時点で約745万人で、これは人口の21.4%に当たる。特にケベック州では母語をフランス語とする人の数は約634万人と、同州の人口の約80%を占める。また「フランス語で会話できる」とした人の数はカナダ全体で1,036万人(人口の29.8%)に達している。

研究者、ジャーナリスト

東京学芸大学非常勤講師。インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本で記者やフリーライターとして活動。2015年3月~2016年2月、ベトナム社会科学院・家族ジェンダー研究所に客員研究員として滞在し、ベトナムからの国境を超える移住労働を調査。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。ケベック州のラバル大学博士課程に在籍。現在は帰国し日本在住。著書に『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社、2019年)。

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