E1選手権を経て海外組との距離を縮めた国内組の選手とは
E1選手権で最後に対戦した韓国に、内容のよくない敗戦を喫した日本。大会を通して目を見張るようなプレーをした選手も特段いなかった。
海外組不在。さらに天皇杯のベスト4に進出したチーム(鹿島、神戸、清水、長崎)の選手は、選考から除外されたので(選出された鹿島の2人、上田綺世と相馬勇紀は、前所属チームで天皇杯を戦っているので鹿島では出場できない)、ベストメンバーの度合いで韓国が若干、勝っていた可能性はなきにしもあらずだが、筆者としては選手がよく映らないサッカーをした森保采配を、敗因のひとつに挙げたくなる。
最も割を食った選手は仲川輝人だ。横浜F・マリノスで4-3-3の右ウイングとしてプレーする彼に、森保ジャパンの3-4-2-1の右シャドーが適性外であることは誰の目にも明らかだった。それだけに右ウイングでプレーしたらどれほどやるだろうかと、逆に想像を掻き立てられた。
ライバルは伊東純也(ゲンク)だ。ともに右利きの右ウイングである。同タイプであるだけに比較してみたくなる。伊東が先発して仲川が交代で入る。その逆でもいい。それぞれの違いがあぶり出されるシーンを見たくなる。
以前にも述べたが、右利きの右ウイングは希少な存在だ。世界的を見渡しても、日本サッカー界を見渡しても(その過去を振り返っても)よい選手の絶対数は少ない。主流を占めるのは堂安律(PSV)のような左利きの右ウイングだ。それとの比較も見たくなる。日本の実情にはマッチするのは3人のうち誰か。
内に切れ込むことが好きな堂安はさておき、伊東にも2シャドーに適性があるようには見えないのだ。森保監督が今後、3-4-2-1を多用すれば、この希少な才能は埋もれることになる。
E1選手権で仲川がプレーしたのは香港戦(第2戦)の90分と後半33分に交代で入った韓国戦の12分間だ。今季のJ1最優秀選手にしては短い出場時間だった。故障明けという事情を森保監督が考慮したのだろう。
大島僚太(川崎)も実力の割に出場時間が短かった選手だ。理由は仲川と同様だったと考えられる。プレーしたのは香港戦の90分と後半17分に交代出場した韓国戦の28分間で、ポジションは3-4-2-1の守備的MFだった。
4-2-3-1を布く川崎とはプレーの環境は若干異なっていたが、こちらは十分適性の範囲内だった。格の違いを見せたのは先発した香港戦。相手が弱すぎたので割り引いて考える必要はあるが、大島にボールが渡ると局面は幾度となくガラリ一変したことは事実だった。交代出場した韓国戦では、香港戦ほどの特別感を出せなかったが、悪くない印象を残しながら大会を終えた数少ない選手になる。
大島は2年前、東京で開催されたこの大会で故障。その頃からずっと故障を繰り返している。ロシアW杯でもコンディションを落とし、出番のないまま大会を後にした。柴崎岳(デポルティーボ)とのポジション争いに敗れる格好となった。その明と暗の関係は現在も継続中で、柴崎はロシアW杯後もずっと代表のスタメンを維持している。
しかし所属のデポルティーボでは出番に恵まれていない。交代出場さえままならない状態だ。チームは現在、スペイン2部で最下位だというのに、である。柴崎はこのE1選手権にさぞや出場したかったのではないか。
欧州組であっても、大島の株が少しでも上がれば、所属チームで出場できていないというマイナス面が、クローズアップされることになる。大島と柴崎の関係は急接近したと見ていい。
もう1人の守備的MFも混沌としている。初戦の中国戦にスタメンフル出場をはたした橋本拳人(FC東京)が、後日の練習で故障しチームから離脱。その間隙を縫って出場時間を伸ばしたのがU-22の田中碧(川崎)だった。香港戦、韓国戦と2試合連続スタメン出場。香港戦では、川崎との戦い方の違いに戸惑った様子が見え、韓国戦でも活躍したとは言い難かったが、それでも、筋のよさ、まだまだ伸びしろがあるように映った。
このポジションは、今年1月のアジアカップで遠藤航(シュトゥットガルト)が活躍。しかしその準決勝対イラン戦で故障して以来、代表から遠ざかったままだ。その間に常連となったのが橋本で、スタメンをたびたび飾るようになった。最近では、山口蛍(神戸)も代表復帰している。今回のE1選手権でも天皇杯がなければ、招集されていたに違いない。
さらに、ハリルジャパン時代に一瞬、台頭した井手口陽介(G大阪)も先のベネズエラ戦とE1選手権と2回連続で招集された。森保監督が次回チョイスする選手は誰なのか、混戦に拍車が掛かっている状態だ。
センターバックでは畠中槙之輔(横浜FM)が重用された。吉田麻也(サウサンプトン)と冨安健洋(ボローニャ)の間に割って入ることができるのか。畠中がこのEI選手権で安定感のあるプレーを見せつけたわけではないが、チャンスありと見る理由は、キャプテン吉田の現状にある。サウサンプトンで出場機会に恵まれていないのだ。
海外組を絶対的な存在とすれば今回、E1選手権に臨んだ国内組は1.8軍クラスになる。しかし従来の1軍の中には、出番に恵まれずにいる海外組も含まれている。この1.8軍の集団は、近々1.6軍に昇格する可能性を秘めているのだ。
GKは、従来の1軍――川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(ポルティモネンセ)、シュミット・ダニエル(シントトロイデン)の3人の中で、川島と権田の2人がスタメンから遠ざかっている。E1選手権で中国戦と韓国戦でゴールを守った中村航輔(柏)が次回、この中に割って入る可能性は大いにある。
韓国にスコア(1-0)以上の内容で惨敗し、厳しい視線に曝された国内組だが、それでも浮上した選手もいる。ベストメンバーにはほど遠い布陣だからといって、目を離すわけにはいかないのだ。門戸を広く開放すれば、中にプライオリティーを上げる選手は必ず生まれる。代表チームとはそうした特性を持つ集団なのだ。
W杯アジア最終予選の本当に重要な試合以外は、常に1.4軍程度のメンバーで戦うべきだと言いたくなる。そうしながらW杯本番を戦うベストメンバーを探った方が、真のベストメンバーは発掘できる。代表チームは常にベストメンバーで戦わなくてはならないという発想では、真の強化は望めない。1.8軍が出場したE1選手権を観戦して、改めてそう思うのだった。