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J1初ゴールを決めるも久保建英に太鼓判を押せない理由

杉山茂樹スポーツライター
(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 現在アジア大会を戦っているU−21。21歳以下の日本代表だが、この中から年齢枠がないA代表に昇格する選手はどれほどいるか。これまで五輪本大会を戦ってきたU−23の歴代メンバーでさえ、その後の足取りを辿れば、大成できなかった選手が意外に多くいることが分かる。

 96年アトランタ五輪、2000年シドニー五輪。メンバーの質がとりわけ高かったのはこの2つの五輪を戦ったメンバーだ。96年アトランタ五輪を目指す23歳以下の五輪チームは当時、A代表と戦っても勝つのではないかと囁かれたほど。また、23歳以上のオーバーエイジを加えて戦った2000年シドニー五輪は、まさに代表チーム同然の顔ぶれだった。監督も代表監督のフィリップ・トルシエが兼任していた。

 今回の五輪チームもA代表との兼任監督だ。当時のトルシエ役を森保監督に期待しているのだろうけれど、現在、アジア大会を戦っているU−21はベスト4入りしたとはいえ、率直に言って強くない。選手個々の能力も、96年、2000年のレベルには遠く及ばない。これは将来の日本代表クラスだと太鼓判を押したくなる選手は正直、見当たらない。

 その中で三好康児(札幌)は、三竿健斗(鹿島)らとともに、2013年U−17W杯本大会に出場したメンバーで、順調に昇格をはたしてきた数少ない1人だ。期待の選手なのだけれど、彼にも同じ印象を受ける。この先どうなるのか、A代表まで行くのかと問われると、太鼓判を押せる状態にはない。

 MFなのかFWなのか。つまり、プレーの武器は何なのか。定かではないところにプッシュできない理由がある。左利きの技巧派MFで終わるのか、縦に勝負できるアタッカーとなれるか。森保U−21同様、所属のコンサドーレ札幌では3-4-2-1の2でプレーする。シャドーストライカーと言えば、アタッカーに聞こえるが、設定はルーズだ。MF的か、FW的か、どちらもありなポジションだ。選手のキャラに委ねられがちなポジションである。選手自身が描くイメージを出しやすいポジションと言ってもいい。

 そこで三好は、限りなくMF的なプレーをしている。どちらの選手として大成した方が、商品価値が高いかといえば断然、FWだ。

 想起するのはエデン・アザール。この高い技術を誇るベルギー代表選手もMFなのかFWなのか、微妙だ。3-4-3の左ウイングなのか、3-4-2-1の2の左(2シャドーの一角)なのか。ベルギー代表の布陣はアザールの動きに委ねられていた。アザールは中央寄りで、2シャドーの一角のように構えたので、その3-4-3は左サイドだけ3-4-2-1的だった。つまりMF色を引き摺ってプレーしていた。

 近い将来、バロンドールを狙えるか否か、微妙だと言いたくなる理由だ。FWの方が候補として、圧倒的に優位な立場にあるからだ。MF全盛だった頃はともかく、いまはFW全盛の時代。高い位置でプレーする選手の方が貴重な存在として見なされている。メッシ、クリスティアーノ・ロナウドが、ほぼ交互に同賞を受賞している理由もそこにある。ゴールという決定的な局面に関与する機会が多いことが、スーパースターであり続けている理由だ。アザールがその座に就こうとすれば、ゴール数が問われる。貴重なのはパッサーよりシューターなのだ。

 3-4-2-1といえば、ポステコグルー監督率いる横浜Fマリノスも先日から布陣を4-3-3からこちらに変えた。成績が出ないためか、攻撃的サッカーから守備的サッカーに大転換を図ったわけだが、同時に、このタイミングで久保建英をFC東京から獲得した。日曜日の神戸戦では、J1初ゴールとなる先制ゴールを鮮やかに決めた。

 嬉しいニュースとして報じられているが、ゴールシーン以外のプレーは決してよくなかった。期待を裏切る低調さだった。ゴールを決めたのは後半11分だが、それは横浜ベンチが久保をベンチに下げようとしていた瞬間でもあった。次のホイッスルで仲川輝人が投入される予定だった。

 現在17歳。横浜でプレーするのは、バルサの入団試験を受けるまでだと言われているが、久保はバルサに無事、戻ることができるだろうか。見る度に中盤選手化している印象だ。心配になる。FC東京時代も、この3-4-2-1のツーシャドーの一角としてプレーしたこの神戸戦のプレーも、躍動感がなかった。若々しさに欠けていた。

 もう少し具体的に言えばドリブル力を発揮できなかった。相手を横にかわすのではなく縦に抜く力がどれほどあるか。選手としての価値は、ここで決まる。FW的なのか、MF的なのか。久保は三好と似た傾向を歩んでいる気がして仕方がない。

 メッシはバルサのトップチームにデビューした頃、もっぱら右ウイングでプレーした。そこで相手の左サイドバック相手に縦勝負を挑むことで、FWとしての能力=突破力を開花させていった。現在でこそMF的なプレーをよく見せるが、当時は右ウイングの道を邁進していたのだ。

 久保、三好にMFではなくFWだと言いたくなる理由だ。2人ともメッシと同じ左利きだ。右ウイングで縦突破のドリブルを磨くべき。アタッカーの道を歩むべきだと言いたくなる。安住の地を求めるように3-4-2-1の2シャドーの一角でする姿を見せられると、小さくまとまってしまいやしないか将来を案じずにはいられないのである。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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