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日本に欠如する俯瞰する文化と森保ジャパン誕生の因果関係

杉山茂樹スポーツライター
傾斜角に問題を抱える新国立競技場 Photo : 杉山茂樹

 ロシアW杯。広大な国土面積を誇るロシアを1ヶ月強、右往左往したその観戦旅行で、疲労困憊、ヘロヘロに陥りながらも、スタジアムを目指す足が軽かったのは、その観戦環境が秀逸だったからに他ならない。

 全12会場中、僕は実際10のスタジアムで観戦したが、視角はすべてパーフェクト。ゲーム性を存分に堪能できる環境を整えていた。

 ピッチを眺める視角は、スタンドの傾斜角に比例する。よいスタジアムの定義にはいろいろあるが、その角度が、優劣を分ける大きな物差しであることは言うまでもない。

 それは、サッカー専用スタジアムか否かより先に来る。現在建設中の新国立競技場は五輪後、球技場に改修される。サッカー専用スタジアム同然の仕様になるが、その座席数の半分近くにあたる3万4千席を占める1階席の傾斜角は20度以下だ。ならば、トラック付きだった旧国立競技場の方がサッカーは見やすかった。建て替えた意味がないと言いたくなる。

 日本のメジャーなスタジアムで、最も劣悪な環境にあるのは横浜国際日産スタジアムだ。記者席があるその1階席部分からピッチに目を投じても、ゲームの魅力は詳らかにならない。両軍が交わる図を高みの見物する行為を、贅沢な観戦方法と位置づける人には不評を託っている。

 その完成からおよそ20年経ったいま、再び新国立競技場で同じ過ちを犯してしまった日本。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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