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本田圭佑、香川真司を押しのけて、 ロシアW杯に行ける攻撃的MFは誰だ

杉山茂樹スポーツライター
対レアル・マドリー戦(3月3日)後半14分に交代出場した柴崎岳(ヘタフェ)(写真:ロイター/アフロ)

 3カ月後に迫ったロシアW杯に挑む日本代表。23人枠を巡るメンバー構成はどうなるのか。今回は、中盤の高め、攻撃的MFのポジションを担う人選について検証していきたい。

◆代表入りの可能性(枠数は微妙)

60%=柴崎 岳(ヘタフェ/スペイン)

50%=森岡亮太(アンデルレヒト/ベルギー)

45%=倉田 秋(ガンバ大阪)

40%=本田圭佑(パチューカ/メキシコ)

30%=香川真司(ドルトムント/ドイツ)

25%=長澤和輝(浦和レッズ)

10%=清武弘嗣(セレッソ大阪)

10%=高萩洋次郎(FC東京)

10%=土居聖真(鹿島アントラーズ)

5%=阿部浩之(川崎フロンターレ)

15%=その他

 攻撃的MF――ここが花形ポジションだったのは過去の話。いまでは布陣次第で居場所が変わる、定義を説明することが難しい曖昧なポジションになった。

 ハリルジャパンがこれまで使用してきた布陣に落とし込むなら、4-3-3の場合はインサイドハーフ、4-2-3-1の場合は1トップ下(「3」の真ん中)となる。だが、一般的な使用頻度が上記2つと同じくらい高い、中盤フラット型4-4-2になると居場所はない。

 また、4-2-3-1の1トップ下も、FW系の選手が務めるケースがある。「2トップ下」という昔ながらの概念にハマるのは、中盤ダイヤモンド型4-4-2ぐらいに限られるのだ。

 W杯本大会に臨む代表チームの枠は「23」。けっして広くない。その中で、攻撃的MF系の選手に与えられる枠はどれほどあるのか、判然としない。選考は難航が予想される。

「能力が同じなら多機能性が高いほうを選ぶ」と述べたのはフース・ヒディンクだが、さすがのハリルホジッチも、そのイメージはあるはずだ。4-2-3-1で言うならば「3」の両サイドに加え、「2」(守備的MF)でもプレー可能だとすれば、評価はさらに増す。

 そうした点を踏まえると、海外組で昨秋から招集されていない本田圭佑(パチューカ/メキシコ)の評価は上昇する。一方、本田と同様な立場にある香川真司(ドルトムント/ドイツ)の評価は下がる。

 多機能性という点で本田は、香川に大きく勝る。CSKAモスクワ(ロシア)時代には、守備的MFもこなしている。個人的にはボランチ本田は、面白いアイデアだと考える。

 それはともかく、ここに来て外せない選手に昇格してきたのが、森岡亮太(アンデルレヒト/ベルギー)である。

 昨年11月の欧州遠征でハリルジャパンに初めて招集された、海外組の中では知名度の低い選手ながら、今年1月末、ベルギーの超名門に移籍。以降、4戦中3試合でスタメンを飾っている。海外組に高いプライオリティを置くハリルホジッチが、彼を放っておくことはないだろう。

 これに、実力者の柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)が加わる。海外組の4人がそろって選ばれれば、国内組のチャンスは激減する。本田をサイドアタッカーとしてカウントすれば、かろうじて1枠は見える程度。本田、香川が外れても国内組は最大2~3。いずれにしても狭き門だ。

 現在、国内組で最もチャンスがありそうに見えるのは、倉田秋。ガンバ大阪では10番を背負う。

 4-3-3を敷く代表では、インサイドハーフが最もしっくりくるが、Jリーグの開幕戦(vs名古屋グランパス/2月24日)では、4-2-3-1の「3」の左で出場した。プレーに華はないが、キレがある。そしてユーティリティ。まさに今日的な10番だ。

 唯一の問題は、昨季の10位から今季はさらに順位を落とすのではないかと予想されているチームの成績だ。代表入りを狙う倉田としては、10位以下には落としたくない。

 多機能性という点で倉田と双璧なのが、元G大阪の阿部浩之(川崎フロンターレ)だ。昨年末の東アジアE-1選手権で代表初招集。交代出場ながら、3試合すべてに出場した。多機能型選手の生かされ方を見た気がしたが、Jの開幕戦(vsジュビロ磐田/2月25日)では、スタメン落ち。交代出場さえかなわなかった。

 阿部同様、東アジアE-1選手権で初めて代表入りした土居聖真(鹿島アントラーズ)も、開幕戦(vs清水エスパルス/2月25日)では、スタメン出場を逃した。

 鹿島はJクラブの中で最も選手層の厚いチーム。スタメンを巡る争いはどのチームより激しい。土居は交代出場を果たし、ケレン味のない代表レベルの動きを見せたが、所属クラブでのスタメン出場はやはり代表選手に課せられた最低条件だ。その数を増やさない限り、有力候補にはなれない。

 状況がそれ以上に悪いのは、清武弘嗣(セレッソ大阪)だろう。シーズン前のトレーニングで故障。近い将来の代表復帰は難しいという。

 昨年末の東アジアE-1選手権も、ケガで棒に振り、昨年の春もケガで長期離脱を余儀なくされている。前回ブラジル大会にも出場した実力者ながら、暗雲が立ちこめた状態にある。

 FC東京の高萩洋次郎は、開幕戦の浦和レッズ戦(2月24日)でスタメン出場を果たし、アシストも決めた。結果は残したが、プレーの内容はよくなかった。FC東京の39.9%というボール支配率は、ミスが多発した結果に他ならないが、これは高萩の問題というより、FC東京の問題と言うべきだろう。

 一方の浦和は、昨年末クラブW杯に出場したため、東アジアE-1選手権に選手を送り込んでいない。そのため、評価が宙に浮いた格好になったのが長澤和輝だ。

 11月の欧州遠征に加わり、ベルギー戦で代表デビューを果たした。10段階評価で言うならプレーは5〜5.5の間で、後半16分、森岡にその座を譲った。代表でプレーした時間は、そのわずか61分間だ。東アジアE1選手権を経て、代表選考レースでの長澤のポジションはどのように変化したのか、見えにくい状態にある。

 開幕戦のFC東京戦では、4-3-3のインサイドハーフ(左)でスタメン出場を果たした。しかし、プレーを採点すれば、これまた5〜5.5。案の定、後半19分、交代でベンチに退くことになった。勢いを感じさせるプレーはできなかった。

 長澤とともにインサイドハーフ(右)でスタメンを飾った柏木陽介は、一時期、ハリルジャパンでスタメンを務めて計7試合に出場したが、昨年は出場なし。復活はないと見る。

 2015年の東アジア選手権(中国・武漢)で、2試合に出場した経験がある武藤雄樹も同様。開幕戦では左ウイングとしてまずまずのプレーを見せたが、代表でプレーするイメージは湧いてこなかった。

 若手では、開幕戦で鹿島の左サイドハーフとして、土居を押しのけて先発した安部裕葵(19歳)がイケている。この試合ではイマイチだったが、大きなことをやってくれそうなムードの持ち主で、それは本田がいなくなった現代表に不足したエッセンスでもある。ブレイクを期待せずにはいられない。

(集英社webSportiva 3月3日掲載)

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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