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選手の言葉に寄りすぎてはいけない。コメント重視主義への違和感と反論

杉山茂樹スポーツライター

 世界陸上で解説の増田明美さんは、女子マラソンは監督と選手とが深い固い絆で結ばれていると解説していた。

 その話を聞きながら思い出したのは、フィギュアスケートの世界選手権で優勝した浅田真央選手が、表彰式を終えるや授与された金メダルを佐藤信夫コーチの首に掛け、2ショットに収まった映像だ。両者の関係性を見た瞬間だ。佐藤コーチは浅田真央から先生と呼ばれていたように記憶する。

 シンクロの井村雅代ヘッドコーチもしかり。選手から先生と呼ばれている。監督(コーチ)と選手は、個人競技ほど師弟関係の度合いが強くなる。

 報道は、それを美談として描こうとする。スポーツ全般にそのノリを適用したがっている。例外はいくらでもあるというのに、だ。

 例えばサッカー。監督は、選手にとって恩師だろうか。恩師だと思っている人もいれば、そうでない人もいる。理由は分かりやすい。監督の一番の願いはチームの勝利であり、選手の願いは自分が出場し、活躍することだ。監督と選手の思惑が一致するのは、選手に出場機会が与えられた場合に限られる。ベンチを温め続ける選手は、チームが勝利しても、本心から喜ぶことはできない。それぞれには、計り知れない温度差が存在するのだ。

 試合に出ている人と、出ていない人。この差は大きい。サッカーには、選手の能力や調子、すなわち優劣を判断するデータが、得点ランキングぐらいしか存在しない。すべては監督の頭の中で決まる。監督のお眼鏡に叶った選手と、そうでない選手。強引に言えば、好き嫌いで、監督の選手評は変わる。選手にはつまり、相性の悪い監督、もっと言えば嫌いな監督がいる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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