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ユベントスとレアル・マドリード。CL準決勝 第1戦の勝因はサイドバックにあり

杉山茂樹スポーツライター
バルサ時代のダニ・アウベス(左)(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

チャンピオンズリーグ(CL)準決勝、アウェーでの第1戦を2-0で制し、決勝進出の可能性が増したユベントス。だが、内容そのものは競っていた。モナコに対して2-0というスコアは、考えられる限りにおいて最良の結果と言っていい。

まさに抜け目のないユーベの勝利には、2人の選手が大きく貢献していた。元レアル・マドリードのストライカーと元バルセロナの右サイドバック。2ゴールを奪ったのはゴンサロ・イグアインで、彼にラストパスを送球したのは、いずれもダニ・アウベスだった。

とりわけ開始早々から、ユーベに勢いをもたらす“はじけっぷり”を見せたのは後者だ。この選手を抑えないとやられそうだと思っていたら案の定、そのような結果になった。

モナコのホーム「ルイ2世スタジアム」とD・アウベス。両者の関係で想起するのは、2006~07シーズンの初頭にこのスタジアムで行なわれたUEFAスーパーカップだ。バルサ(2005~06のCL覇者)がセビージャ(同UEFA杯の覇者)に0-3で敗れた一戦である。

その試合でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたのが、セビージャの右サイドバック、D・アウベスだった。

対峙する関係にあったバルサの左ウイング、ロナウジーニョを完全に封じ込んだ。というより、時代の寵児だったロナウジーニョに対し、恐れるどころか、無視するように攻撃参加を仕掛けることで、その攻撃能力を鈍らせたのだ。

サイドバックが活躍したほうが勝つ。サイドバックをいかにして活躍させるか。サイドバックでありながらマン・オブ・ザ・マッチに輝いたこのD・アウベスの活躍は、サイドバックの価値と重要性を一段と高める結果になった。

それから10年と少し後に、今度はユーベの一員として再度、マン・オブ・ザ・マッチ級のプレーを披露したD・アウベスを見ていると、その流れがいまなお途絶えていないことが再確認できる。

一方、モナコは、D・アウベスと対峙する左サイドバック、ベンジャミン・メンディを直前に故障で欠き、代わりに普段、右サイドバックでプレーすることが多いジブリル・シディベを置くことになった。そこがウィークポイントとなり、開始直後から、D・アウベスにガンガン突かれてしまったというわけだ。

その結果、マンチェスター・シティ戦(決勝トーナメント1回戦)、ドルトムント戦(準々決勝)で活躍した左サイドハーフ、トーマス・レマーは沈黙。モナコは左サイドの攻撃にすっかり活路を見いだせなくなり、プレーのリズムを狂わせることになった。

D・アウベスのユーベ入りは昨シーズン。ベルリン五輪スタジアムで行なわれた2014~15のCLファイナル(3-1でバルサがユベントスに勝利)の後だ。そこで勝者に輝いたバルサから、敗者となったユーベへ移ったわけだが、この移籍でバルサのチーム力は後退を余儀なくされた。

D・アウベスの代役不在がバルサの痛手となっていることは、ユーベと争った今季のCL準々決勝戦の完敗劇で、いっそう鮮明になったのだ。

付け加えれば、現地時間5月2日に行なわれたもうひとつの準決勝、レアル・マドリード対アトレティコ・マドリード(3-0でレアルが勝利)も、明暗を分けた原因はサイドバックにあった。右サイドバックのファンフランとシメ・ブルサリコをいずれもケガで欠き、ルーカス・エルナンデスという左利きの選手をそこで起用しなければならなかったアトレティコ。これに対して、R・マドリードは、マルセロとダニエル・カルバハルの両サイドバックが圧倒的なパフォーマンスを見せつけた。試合を分けたのはこの差だった。

サイドバックが活躍したほうが勝つ。バルサ対ユーベ、R・マドリー対アトレティコ、そしてモナコ対ユーベと、終盤を迎えた今季のCLで、その解釈に正当性が見いだせる試合が続いている。

ユーベ対モナコの準決勝第2戦も、そこが見どころになる。モナコの左サイド対ユーベの右サイド。第1戦でユーベの完勝に終わったこの局地的な戦いが、今度はどう転ぶか。メンディは左サイドバックとして復帰することができるのか。2-0で折り返したユーベが勝ち上がる可能性は8割。モナコとしてはサイドバック問題の解決に加えて、奇襲を仕掛ける必要性も感じる。

普通に戦っては勝ち目がない。ではどうするか。想起するのは2004~05シーズンの決勝で、ミラン相手に前半、0-3で折り返したリバプールだ。

後半に臨むにあたり、時のリバプールの監督、ラファ・ベニテスは、それまでの4-2-3-1を中盤ダイヤモンド型の3-4-3(3-3-1-3)に変更。高い位置から猛然とプレスを掛ける作戦に出た。それが奏功。リバプールは0-3から3-3に持ち込み、延長、PK戦の末、まさかの優勝を飾った。

ハーフタイム明けのミランが露呈したのが、残りの45分間、じっとしていればそれでいい、何もする必要がないというモチベーションの低さだった。

相手のリバプールはミランに前評判で大きく劣っていた。立ち位置は、今回のモナコに似ている。捨てるものが何もない100%チャレンジャーで臨むことができる

ユーベがやりにくさをのぞかせるか。モナコがそこにつけ込むことができるか。むしろ絶対に負けられない立場に追い込まれることになったユーベ。一方のモナコには、負けてもともとと、開き直れる強みがある。モナコが先制点を奪えばユーベは硬くなる。楽勝ムードは一変する。

モナコの気鋭のポルトガル人監督はどう出るか。レオナルド・ジャルディムの采配こそが、第2戦を迎えるにあたっての一番の注目点になる。

(集英社 Web Sportiva 5月4日掲載原稿)

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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