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“ネクスト・モンスター”中谷潤人、2階級制覇の鍵は 米メディアが注目ファイトを予想

杉浦大介スポーツライター
Mikey Williams/Top Rank

5月20日 ラスベガス MGMグランドガーデン・アリーナ

WBO世界スーパーフライ級王座決定戦

前WBO世界フライ級王者

中谷潤人(M.T/25歳/24戦全勝(18KO))

12回戦

元WBA世界スーパーフライ級王者

アンドリュー・モロニー(豪州/32歳/25勝(16KO)2敗1無効試合)

 スーパーフライ級の実力者対決がラスベガスで行われる。 

 井岡一翔(Ambition)が返上して空位になったWBO王座を手にするのは、稀有な才能で“ネクスト・モンスター”とまで称されるようになった中谷か。1週間前に1階級上の世界王者になった兄・ジェイソンとともに、双子同時王者を目指すモロニーか。

 決戦を目前に控え、殿堂MGMに集まった3人の地元メディアに3つの質問をぶつけ、この注目ファイトを占ってみた。 

パネリスト

スティーブ・キム(元ESPN.comのメインライター。韓国系アメリカ人。業界内に幅広い人脈を持つ Twitter : @SteveKim323)

マルコス・ビレガス(Fight Hub TVの創始者、インタヴュアー。かつてFOXのボクシング中継で非公式ジャッジを務めた Twitter @heyitsmarcosv)

ショーン・ジッテル(FightHype.comのレポーター。ラスベガス在住。全米を飛び回って取材し、著名選手からも信頼を得る Twitter : @Sean_Zittel)

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1.中谷対モロニー戦の鍵は

キム : 両者ともに基本がしっかりしていて、確かな技術を持った選手たちだ。ただ、これまで多くの好選手を目にしてきたベテラントレーナーのルディ・エルナンデスが「私の兄チカニト(ヘナロ・エルナンデス)以降では最高の選手だ」と呼ぶほどの才能を持つサウスポー、中谷がやや優位だろうとは思う。モロニーも経験豊富な選手だから、一方的な試合にはならない。おそらく判定勝負。激しい戦いの中で、総合力に優れた中谷が抜け出すのではないか。

ビレガス : モロニーの双子の兄・ジェイソンは1週間前、アウトボクシングを完遂することで世界タイトルを勝ち取った。一部のファンから退屈な試合だったと酷評されたが、それでもその方法で世界王座奪取という目標は果たした。アンドルーもその成功を見て、同じことを試みるのではないかと感じている。中谷のような選手が相手なら、まずは勝つための戦略を徹底すべき。モロニーはアウトボクシングに徹し、中谷の勢いを止められるかが鍵になると思う。

ジッテル : より大きく、より優れたパンチャーである中谷がフィジカル面で大きく上回っている。オスカー・デラホーヤ(アメリカ)のキャリア序盤のように、中谷は若さを生かしてあえて下の階級で戦っているような印象を受ける。フレームを考えれば、いずれバンタム、スーパーバンタム級に上げていくのではないか。この相手との対戦を承諾したモロニーを称賛したいが、やはり中谷が明白に上回るだろう。ストレート、アッパー、フックにしろ、中谷の試合では常に強力な左パンチに注目だ。

スティーブ・キム記者 撮影:杉浦大介
スティーブ・キム記者 撮影:杉浦大介

2.中谷は階級を上げるにつれて力が増すタイプの選手と感じるか

キム : 今戦に向けた練習での中谷はいい動きをしていた。エルナンデス・トレーナーに「フライ級への減量はどれくらい難しかったのか」と聞くと、「中谷の足、身体全体の強さに大きな影響を及ぼしていた」と話していた。階級を上げた中谷は過去2ヶ月、LAで充実したトレーニングキャンプを送ってきた。昇級による3パウンドの違いが、リング上でどれだけの差を生み出すかを私も楽しみにしている。

ビレガス : 中谷の減量がどれくらい厳しかったかにもよるが、彼のボディタイプを考えれば、昇級によってパフォーマンスが向上することは十分に考えられる。体重調整から解放され、パワーが解き放たれるかもしれない。ただ、パワー、タフネスは練習時に測れられるものではなく、試合をやってみないとわからない。フィジカルのアドバンテージがものをいう下の階級でこそ力を発揮する選手が多いのはご存知の通り。中谷がどちらのタイプか、モロニー戦の戦いぶりから見えてくるかもしれない。

ジッテル : その通りだが、現状ではかなり痩身であることを考えれば時間をかけて昇級するべきだと思う。階級を上げたらより強靭な選手と対戦することになり、特に接近戦が難しくなる可能性がある。私は中谷がスーパーバンタム級で井上尚弥(大橋)と対戦することを望んでいるが、井上は今が全盛期なのに対し、中谷はまだ若いのだから、焦る必要はない。まずはスーパーフライ級でファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との対戦を目指して欲しい。

マルコス・ビレガス記者 撮影:杉浦大介
マルコス・ビレガス記者 撮影:杉浦大介

3.試合予想は

キム : 中谷の判定勝ち。モロニーも好選手なので、いい試合になるだろう。116-112、115-113くらいの判定で中谷の勝利を予想する。

ビレガス : 50/50の試合だと思う。中谷は勢いのある選手だが、ラスベガスでの重要試合の経験ではモロニーが上回っている。序盤にどんなスタートを切るか、そして終盤にどう締めくくるかが重要なのは間違いない。

ジッテル : 中谷の6、7回KO勝ち。モロニーはタフだが、中谷の強烈かつ多彩な左が決め手になると見る。井上がモロニーの双子の兄・ジェイソンをストップしたのと同じように、中盤決着だと考えている。

ショーン・ジッテル記者 撮影:杉浦大介
ショーン・ジッテル記者 撮影:杉浦大介

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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