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デビュー20連勝、16連続初回KO ボクシング界の期待の星はなぜFAを望んだのか

杉浦大介スポーツライター
Mikey Williams/Top Rank via Getty Images

 プロデビュー以来、スーパーミドル級で20戦全勝16KO という快進撃を続けてきた人気ボクサーがまだ無冠にもかかわらずFAになった。

 1月中、ニューヨーク出身のプエルトリコ系プロスペクト、エドガー・ベルランガはトップランクとのプロモーショナル契約を終了。25歳のベルランガは現在、新プロモーターを決めるべく話し合いを続けている。

 デビューから16戦連続初回KOを続けたベルランガは、世界タイトル獲得前からニューヨークのアリーナを満員にするほどの人気者となった。ただ、対戦相手の質を上げるとともに勢いに陰りが見え、過去4戦はすべて判定勝利だった。

 昨年6月、ロアメル・アレクシス・アングロ(コロンビア)戦に勝ちはしたものの、試合途中に相手に噛み付いたことでニューヨーク州アスレチックコミッションから6ヶ月の出場停止処分を科された。その試合後、成長度に不満のトップランクとベルランガ陣営の間で意見の相違があったようだ。

 人気ボクサーとプロモーターの別離はあることだが、まだ売り出し中の段階での契約終了は珍しい。ベルランガとトップランクの間に何が起こっていたのか。

 2月上旬、ニューヨークで行われたマッチルーム・スポーツの興行に姿を見せたベルランガに話を聞いた。その言葉から、両サイドの思惑の違いが興味深い形で見えてくる。

トップランクとの間に何があったのか

――トップランクとの別離が決まったあと、何人のプロモーターと面談を重ねてきたのでしょう?

エドガー・ベルランガ(以下、EB) : まずはフロイド・メイウェザーから電話があり、その後にアル・ヘイモンとも話しました。あとはオスカー・デラホーヤ、エディ・ハーンです。これだけメジャーなプロモーターが揃って名乗りをあげてくれたことは嬉しいですし、光栄です。私は多くのボクサーが夢見るような立ち位置にいるといっていいのでしょう。

――最終的に新プロモーターを決断する際、あなたの中でプライオリティになる条件とは?

EB : お金と対戦できる相手選手の質です。ビッグファイトにつながる道を提示してもらえるかどうかが大事。また、どれだけ私を効果的にプロモートしてもらえるかも大切です。人生にとって重要な選択なので、最善のパッケージを選びたいと考えています。

――FAの立場を保ち、1試合ごと、ベストの条件を選んでいくというオプションもありますが、複数戦契約が基本線なのでしょうか? 

EB : 現在考えているのは、2、3、4戦といった複数戦の契約です。現状では、1戦ごとや、あるいはトップランクとの契約時のように数年という期間ではなく、試合数での契約を追い求めるのがいいと思っています。

Mikey Williams/Top Rank via Getty Images
Mikey Williams/Top Rank via Getty Images

――トップランク興行で名を売り、あなたは特にプエルトリカンの多いニューヨークでHuluシアター(マディソン・スクウェア・ガーデン・シアター)を満員にするほどの呼び物になりました。ここでトップランクと別離した理由はどこにあったのでしょうか?

EB : 今後の方向性に関して意見の相違があったんです。(トップランクは)私を“co-main event(メインイベントに準ずる試合。事実上のセミ)”で起用することを望みました。私が敗北を味わったのであれば理解できますが、前戦では実績あるアングロを大差で下し、Huluシアターを舞台に2戦連続、素晴らしい興行成績を残したばかりなのに。トップランクは私をスローダウンさせようとしましたが、私はさらに前に進みたかったんです。

目標はカネロとの対戦

――当面の方向性では相入れなくても、最終的にはトップランクとは友好的に契約を打ち切ったという話も聞きました。

EB : その通りです。ここまで私を導いてくれたトップランクのことはリスペクトしています。おかげで興行の看板になるという夢を叶えることができました。素晴らしい仕事をしてくれたボブ・アラム、トッド・ドゥブーフといったトップランクの幹部たちには脱帽するしかありません。私のキャリアはまだあと7、8年は続くのでしょうし、背後の橋を焼き落としてしまうのは得策ではないことは理解しています。ここでFAになりましたが、将来的に私が戦いたいと思う選手はトップランク傘下かもしれないですからね。

――トップランク傘下のジェシー・ハート(アメリカ)が対戦相手候補に挙がっていましたが、それについて言えることは?

EB : 現時点でハートのような相手と戦うことに意味があるとは思えなかったんです。私はジョン・ライダー(英国)との対戦を希望し、開催地はイギリスでもアメリカでも構わないと考えていました。ただ、トップランクはその試合を組んではくれず、ライダーは代わりにサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)と対戦することになりそうです。

――あなたはニューヨークではすでに人気者になりましたが、さらなる成長のために地元を離れるべきだという意見はどう思いますか?

EB : 現在はニューヨークを訪れていますが、もうフロリダに6ヶ月も住んでトレーニングを続けていますよ。このままフロリダでキャンプを張り、次の試合に備えていくつもりでいます。

――今の目標はスーパーミドル級4団体の王座を持つカネロとの対戦なのでしょうか?

EB : その通りです。私とカネロが対戦すれば、プエルトリカンとメキシカンの間のライバル関係が盛り上がることは間違いありません。ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナやT-モバイルアリーナを埋め尽くすくらいのファンが集まるでしょう。プエルトリコとメキシコの国旗が大量に振られるはずです。彼はメガスターであり、私と彼はどちらもハンサム。誰が見ても理に叶うファイトですし、ぜひともカネロに勝って、プエルトリコの男子ボクサーとしては史上初の4団体統一王者になりたいですね。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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