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3階級制覇王者デービスは“危険な前哨戦”を突破できるか 米メディアの予想は三者三様

杉浦大介スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

1月7日 ワシントンDC 

キャピタル・ワン・アリーナ

WBA世界ライト級タイトル戦

3階級制覇王者

ジャーボンテイ・デービス(アメリカ/28歳/27-0, 25KOs)

12回戦

WBA世界スーパーフェザー級王者

エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国/31歳/16-0-3NCs, 10KOs)

 これまでスーパーフェザー、ライト、スーパーライト級を制してきた強豪王者、デービスが現在保持するWBAライト級タイトルの5度目の防衛戦を迎える。

 4月、ライアン・ガルシア(アメリカ)との直接対決が内定したデービスにとって、大事な前哨戦。対戦相手のエクトル・ルイス・ガルシアは1階級下ながら過去2戦、クリス・コルバート(アメリカ)、ロジャー・グティエレス(ベネズエラ)という実力者を連破した難敵である。

 ビッグファイトが視界に入ったこの時期、デービスがこの相手を選んだことは業界関係者を少なからず驚かせることにもなった。

 デービスの故郷ボルチモアから近いワシントンDCで行われる2023年最初の注目カードはどんな試合になるのか。2020年に起こしたひき逃げ事件の裁判が来月、待ち受けるデービスは、ライアン・ガルシアとの対決に駒を進められるのか。今回は3人の在米メディア、関係者に3つの質問をぶつけ、今後の行方を占ってみた。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

パネリスト

キース・アイデック(BoxingScene.comのライター、コラムニスト。ニュージャージー在住。全米記者協会(BWAA)の副会長を任される Twitter : @Idecboxing)

ライアン・オハラ(NYFights、FightsNights.comのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

ハンス・セミストーデ(ニューヨーク在住のボクシング記者。BoxingSceneのライター、FightHypeの通信員を務める Twitter: @themistode)

1.今戦の注目ポイントは

アイデック : 技術に恵まれ、経験も豊富なガルシアにデービスがどう対処するかに注目している。300戦以上に及ぶアマ歴を持つガルシアは昨年、コルバートを相手に大番狂わせを起こし、ハードパンチャーのグティエレスにも快勝した。強烈なボディーパンチャーであり、今戦では序盤にボディを攻めてデービスの足を止めようとするだろう。ローブローを混ぜて来た際、ローランド・ロメロ(アメリカ)戦では相手のローブローに上手に対処できていなかったデービスはどう戦うか。フィジカルな戦いになり、ガルシアはデービスのゲームプランを狂わせようとしてくるに違いない。一方、ガルシアの方ももちろんデービスほどのパンチャー、フィニッシャーには対峙したことがなく、注意深く攻めなければいけない。

オハラ : スタイル的に非常に興味深いマッチアップ。リング上でどんな戦いが展開されるかを楽しみにしている。

セミストーデ : “タンク”がどんなパフォーマンスを見せてくれるかにエキサイトしている。今回のプロモーションの間、トレーナーのカルビン・フォードは「“タンク”もう悪ふざけは止めたんだ」と何度も話していた。それがどういう意味なのか、今週末のリングで明らかになるだろう。

リング外のトラブルが続いているデービスだが、人気と知名度の高さは抜群だ Amanda Westcott/SHOWTIME
リング外のトラブルが続いているデービスだが、人気と知名度の高さは抜群だ Amanda Westcott/SHOWTIME

2. 勝敗予想は

アイデック : デービスが自己3度目の判定勝負を経験することになり、3-0判定勝ちを飾ると見る。ガルシアがいい戦いをする場面もあるとは思うが、勝つためにはKOが必要で、デービスをKOできるほどのパンチャーではない。ライアン・ガルシアとのビッグファイトが具体化した状況で、デービスがこれほどクオリティの高い前哨戦を承諾したことは評価したい。

オハラ : ガルシアが番狂わせの判定勝ちを収める。“タンク”・デービスは今戦への準備中、集中するのが難しかったはずで、容易な試合にはならないだろう。

セミストーデ : エクトル・ガルシアも好選手であり、素晴らしい2022年を過ごすことで注目を集めた。ただ、デービスはこれまでの相手とは格が違う。開始ゴング直後からデービスが試合を支配し、10回までにストップ勝ちを飾るに違いない。

3. デービスが今戦に勝てば、4月に内定と伝えられたライアン・ガルシア戦は本当に実現するか

アイデック : 実現するとは思うが、いつになるかは2月の(ひき逃げ事件の)裁判の結果次第だろう。そこでデービスが収監や自宅監禁の処分となった場合、トレーニングキャンプの時期も変わってくる。予定されている4月の挙行とは限らないと思う。それでもデービス、ライアン・ガルシアはともに対決を望んでおり、商業的な意味でボクシング界からも必要とされているカードだけに、挙行されるのではないか。

オハラ : 予想は容易ではない。すべては2月に予定されているひき逃げ事件の裁判の結果次第であり、予断を許さない。

セミストーデ : この質問に答えるのは難しい。2月の裁判は懸念せざるを得ないからだ。ただ、その点さえクリアになれば、“タンク”とライアン・ガルシアの次戦は直接対決であると信じている。

”もう1人のガルシア”は快進撃を続けるデービスの撃破に静かに意欲を燃やしている Amanda Westcott/SHOWTIME
”もう1人のガルシア”は快進撃を続けるデービスの撃破に静かに意欲を燃やしている Amanda Westcott/SHOWTIME

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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