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「日本代表でのプレーは自信になった」 NCAA1部でプレーする期待の星・富永啓生

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本バスケ界屈指のシューター、富永啓生(21歳)がNCAAディビジョン1の舞台で腕を磨いている。ネブラスカ大に編入して2年目のシーズンを迎えた3年生の富永。2022~23シーズンは開幕から6戦中3戦で二桁得点、その間はFG成功率50%、3ポイント(3P)も同40%とまずまずのスタートを切った。

 今夏、日本代表でも初めてプレーし、2022FIBAアジアカップで存在感を誇示した富永は、自身の現在地をどう捉え、どんな未来予想図を描いているのか。

 11月17日、ニューヨークで行われたセントジョンズ大戦の後、富永が単独インタビューに応じてくれた。その一部は「Number Web」に掲載された渡邊雄太「日本では見たことないシューター」21歳の新星・富永啓生のリアルな現在地とは? NBAに上り詰めた先駆者の言葉から紐解くで公開されたが、ここでは完全版をお届けしたい。

課題はディフェンスの強化

ーー昨季と比べて、ショットセレクションとディフェンスが向上した印象がありますが、ご自身ではいかがでしょう?

富永啓生(以下、KT) : オフシーズンはディフェンスを強化してきました。全然まだまだなんですけど、ちょっとずつレベルアップできてはいると思います。ショットセレクションに関しても、徐々にいいセレクションでシュートが打てるようになってきているかなとは思います。

ーーもともとシュートレンジの広さが持ち味です。思い切りの良さを忘れず、同時により効率的なシュートを打つというバランスの難しさは感じますか?

KT : 日本代表などでプレーするときと、こっちでやっているときでは多少考えが違うかもしれません。カレッジではショットクロックが30秒と長く、ポゼッションが少なくなるので、なかなかそういうショット(ディープスリーなど)を打つ機会がないんです。今の状況ではなかなか打てないですよね。

ーーセントジョンズ大戦ではディープスリーは1本。もっと打つ機会があったようにも見えましたが、今はより良いショットセレクションを徹底ということですね。

KT : はい、その通りだと思います。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

ーーそれ以外の課題としては、シュートレンジを広げることと、3P以外のプレーの強化ということになるでしょうか?

KT : その2つと、あとはやはりディフェンスです。ディフェンス時のリバウンドのボックスアウトだったり、フィジカルの部分。身長が高い選手を相手にした場合、自分から身体を当てにいかないと、オフェンシブ・リバウンドを取られてしまうんです。そういうところがまだまだです。

ーー1〜2年目でフィジカルが少し強くなったと感じますか?

KT : 身体が強くなったのかはわからないですけど、ディビジョン1で1年間やってきて、慣れというのも多少あると思います。1年目と比べ、当たった感じも違いますし、適応できてきているとは思っています。

ーーこの1年間で身長、体重の変化はどうでしょう?

KT : 身長は伸びていないです。体重はこの1年で3、4キロ増えました。4キロくらいですかね。

日本代表デビューで印象的な活躍

ーーフレッド・ホイバーグHCからは昨季、「シュートを打てる時はとにかく打て」と言われていました。今季、何か伝えられていることはありますか?

KT : 今年も基本、同じことは言われています。ただ、打てるときにはもちろん打つんですけど、先ほども話した通り、ショットセレクションが大事になります。無理に打つのではなく、開いたら打て。無理に打つところは減らして、開いているときは絶対に打てと言われています。

ーーホイバーグHCは冨永選手のプレースタイルを認めているという印象があります。NBAでも選手として実績を残したコーチからそうやって買われていることはやはり自信になりますか?

KT : もちろんそうですね。自信になりますし、もっともっとこのチームのバスケットにうまく適応できるように頑張っていきたいです。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

ーー過去にはシュート重視のプレースタイルに疑問を呈されたこともあったと思いますが、間違ってはいなかったと感じられているのでは?

KT : 今までいろいろと言われたこともありましたけど、それが自分のプレースタイルです。崩すことなく全然やってきた結果がこうなっている、だからこそここにいることができているんだと思っています。

ーー今夏には初めて日本代表のメンバーに入り、2022FIBAアジアカップで平均17.5分で15.2得点、3P成功率41.3%と活躍しました。そこでの経験は自信になりましたか?

KT : アジアカップは強豪オーストラリアとも2回やりましたし、すごいレベルの高いところでああやって活躍できたことはいい形での自信になっていますね。

ーー最終目標はNBAだと繰り返し話していますが、その気持ちは変わらずに持っていますか?

KT : はい、もちろんです。

ーー現在、ハイレベルのビッグ10カンファレンスでプレーし、こういうところでやっているからこそ、さらに上を目指すことの難しさは感じるのでは?

KT : その通りです。やはりこういうところでやると、やるべきことがたくさんある、改善していかなければいけないことがあると感じます。1つ1つ、毎日毎日成長して、どんどんNBAに近づけるように頑張っていきたいです。

NCAAからNBA入りした先駆者、渡邊雄太から学んだこと

ーー日本代表で渡邊雄太選手というNBAプレーヤーとチームメイトになり、一緒にプレーした中で感じたことは?

KT : プレーももちろんすごいんですけど、コート上でのリーダーシップだったり、コートにいないときでも安心感がすごかったです。とにかくずっと声を出してくれますし、アドバイスもいろいろしてくれます。一緒にやっていてめちゃくちゃやりやすかったですね。頼もしかったです。

ーー渡邊選手から受けたアドバイスで覚えているものはありますか?

KT : まずシュートはどんどん打てと言ってもらいました。ちょっとミスしても、大丈夫、次だよ次と言ってくれるので、めちゃめちゃやりやすかったです。

ーー普段の生活ではゴルフを楽しんでいると聞きました。

KT : アメリカ生活を楽しんでいます。ゴルフも今はシーズン中なのでなかなかできていないですけど、徐々にうまくなっているとは思います(笑)

ーーコート上やハドルでの姿を見る限り、英会話も問題なさそうですね。カレッジライフは勉強との両立が大変ですが、その点はいかがでしょう?

KT : 言葉に関しては、普通のコミュニケーションは全然問題ないです。授業の単語とかになるまた難しかったりもするんですけど、日常生活は全然大丈夫です。ただ、勉強は嫌いなんで、できればやりたくないですけど(笑)。あともうちょっとなんで頑張ります。

ーー今シーズンの目標は?

KT : まずはNCAAトーナメント進出に出たいです。ビッグ10というレベルの高いカンファレンスで1勝でも多くして、自信をつけたいですね。

ーー個人としてはいかがでしょう?

KT : 3Pで成功率40%越えはしていきたいです。あとは1試合1試合、アグレッシブにプレーすること。自分にできることをしっかりとやっていきたいです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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