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デュラント、アービング、シモンズ率いるネッツ。スーパースター軍団上昇の鍵は?

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 強敵との接戦を制して今季初勝利

 「このチームが粘り強さを示せたことは気に入っている。二桁リードを奪ったけど、そこから2度も追い上げられてしまった。アップ&ダウンの激しいゲームだったけど、それでも私たちは戦い続けた」

 10月21日のトロント・ラプターズ戦を終えて、バークレイズセンターの会見場に登場したケビン・デュラントの表情と言葉からは安堵が感じられた。

 2日前の開幕戦ではニューオリンズ・ペリカンズに108-130と惨敗してファンをがっかりさせたネッツ。この日の今季2戦目ではラプターズとの激戦を109-105で制し、デュラント、カイリー・アービング、ベン・シモンズが軸になったスター軍団は2022~23シーズンの初勝利を挙げてみせた。

 デュラントの言葉通り、両チームに流れがゆらゆらと揺れ動いた中で、ネッツの良い部分が少なからず見えたゲームではあった。

 デュラント、アービングという両輪は合計57得点、13アシストを挙げ、特に最終クォーターには勝利を手繰り寄せる決定力を見せつけた。足首のケガで離脱していたチーム最高級のシューター、ジョー・ハリスは2021年11月14日以来の復帰を果たし、約18分を無事にプレーして首脳陣を喜ばせた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 23歳のビッグマン、ニック・クラクストンは19得点(FG8/11)、11リバウンドをマークし、2試合連続ダブルダブルを達成。ジョージア大時代にも見せたようなボールハンドリングも誇示した成長株は、試合後、「自分らしくプレーしているだけ。すべてをカイリーとKD頼みにすべきではない」と頼もしい言葉を残していた。

注目はシモンズの働き

 このように多くのことが起こったゲームだったが、それでも試合後、最大の話題となったのはやはりシモンズのプレーだった。

 当然ではあるのだろう。昨年2月のトレード期限にネッツ移籍後、しばらくプレーの準備が整わなかったシモンズは、ペリカンズとの開幕戦で久々にコートに立ったものの、約23分でファウルアウトと散々だったからだ。

 迎えたラプターズとの2戦目。シモンズは6得点、8アシスト、10リバウンドと、得点以外は上質な数字をマーク。守備でもマッチアップした相手のスター候補、スコッティ・バーンズを前半は6得点のみ(ゲームを通じて17得点)に抑えた頑張りは評価されてよかった。

 「ベンはステップアップしてくれた。試合開始からより積極的だった。彼がペイントに入っていけば、いつでも相手を困らせられる。彼は自分がどんな選手かを示し始めているが、まだ伸びしろはある。初戦の不振を乗り越え、よりアグレッシブにプレーしてくれたことを誇りに思う」

 シモンズこそがチームの“エンジン”だというスティーブ・ナッシュHCはそう述べ、その働きを称えていた。実際に前述したディフェンスに加え、アシスト数はチーム最多であり、背番号10が一定の貢献を果たしたのは確かだろう。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ただ・・・・・・ゲームを見たファンの中には、シモンズはもっと果敢に攻めてもいいと感じたファンも少なくなかったのではないか。確かに開幕戦よりは積極的ではあったが、まだ中途半端なポゼッションが多かった。おかげで2大エースとシューターたちに有効なスペースを切り開くまでには至っていなかった。

 ペネトレイトから相手ディフェンダーと接触するのをよしとせず、安全なパスで終わるプレーが多かった感は否めない。その背景には、やはり散々喧伝されて来た通り、自身のシュート力不足に対する不安があるのかもしれない。

パワーハウスの浮沈を左右するポイントとは

 昨季全休のあと、今季のシモンズはやっと2戦をプレーし終えたところなのだから、もちろん必要以上に厳しく見るべきではない。

 「互いに感覚を確かめている段階だ。より快適にプレーできるように。まだ時間はかかるけど、日々よくなっている」

 試合後のシモンズのそんな言葉は単なるエクスキューズには感じられなかった。錆びつきを落とし、ケミストリー養成のために時間が必要なのは真実に違いない。そして、プレシーズンまで含めたここまでの6戦を見る限り、シモンズがプレーのレベルをどれだけ上げられるかが今後のネッツにとって大きなポイントの1つになりそうではある。

 前半で述べたとおり、ラプターズ戦でのネッツはポジティブな要素も多かったが、結局のところ、最後はスター選手の驚異的なショットメイキングで組織力で勝る相手をねじ伏せた印象もあった。

 ネッツはそれができる陣容であり、もともとデュラント、アービングのタレントを軸とするコンセプトで作られたチーム。そこに昨季は存在しなかった武器であるシモンズがプレーメイキング、ディフェンスの力を追加供給すれば、より優れたチームになる可能性は高まる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 注目チームにありがちな開幕直後のタフなスケジュールは続き、ネッツは24、26日はアウェイでメンフィス・グリズリーズ、ミルウォーキー・バックス、27日はホームでダラス・マーベリックスと強敵との対戦が続く。そんな中でシモンズのプレーはどれだけ研ぎ澄まされ、ネッツのチーム全体のケミストリーはどのように養成されていくか。

 まだ先は長いが、ラプターズ戦の後には楽観的な空気が漂っていたのも事実。ファンとアンチ両方の興味を惹きつけ、シモンズとネッツの道のりに、これから先も大きな注目が集まり続けることは間違いなさそうだ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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