今季のブルックリン・ネッツの真価が依然としてはっきりしない。

　開幕前、多くの関係者から優勝候補筆頭に挙げられながら、現時点でイースタン・カンファレンス８位。このままいけば、ポストシーズンはプレーイン・トーナメントからの出場を余儀なくされそうだ。

　ケビン・デュラントは故障で長期離脱し、ワクチン未接種のカイリー・アービングはホームゲームに出場できない状況になるなど、様々な誤算に見舞われてきた。こんな状況に嫌気がさしたか、移籍を希望したジェームズ・ハーデンはトレード期限にフィラデルフィア・76ersに放出。ハーデンの代わりにチームに加わったシモンズはケガでまだ一戦もプレーしておらず、本来であれば、今季の上位進出は難しいはずなのだろう。

　ただ、現役最高級のスコアラーであるデュラントを擁するネッツはそれでも危険なチームではある。アービングがプレーオフ前、いやプレーオフ中にでもホーム戦の出場が可能になれば？シモンズが何らかの形でチームに貢献できれば？今後は極めて読み辛く、それゆえに興味が惹かれるチームでもある。

　ネッツの現状を分析すべく、ESPN.comのネッツ番記者、ニック・フリーデルに意見を求めた。2010年代後半にはデュラントが中心になったゴールデンステイト・ウォリアーズも取材したベテランライター、フリーデルは、迷走を続けるスター軍団をどう見ているのか。

　実行せねばならないトレードの結果

　ネッツのスタッフ、選手たちは今すぐに勝たなければいけないと考えている。今季中に多くの誤算を経験した後で、リーグの多くの人間はネッツが今季中に優勝するのは難しいと考えていることに選手たちはモチベーションを得ている印象もある。

　トレード期限にまだ25歳のシモンズを獲得し、ネッツが優勝を狙える期間は数年間延びたのかもしれない。それでももちろんすぐに勝ちにいかなければいけないチームであり、選手たちは今季中にそれが可能だと信じている。

　ハーデンを放出するトレードは、あの時点で実行せねばならないトレードだった。もうハーデンがネッツに残るつもりはないことは誰もが理解していた。もともとネッツ側が望んだ交換ではなかったとして、ディフェンス、プレーメイキングの力に秀でたシモンズのプレースタイルはチームにフィットするだけに、この移籍劇はネッツにプラスに働くかもしれない。

　みんなシモンズが苦手なプレー（＝ジャンプシュート）の話をしたがるが、ネッツにはシュートが得意な選手が揃っているのだから、その面の心配をする必要はない。プレーメーカー、ディフェンダーとしてのシモンズは極めて優秀だ。いずれにしても、ネッツにとって必須だったトレードが、同時に“正しいトレード”でもあったのかはいずれ明らかになるのだろう。

新生ネッツの強みと懸念材料

　デュラント、アービング、シモンズの３人はまだ一度も一緒にはプレーしていないわけだが、私は彼らが優勝することは可能だと考えている。私はもう何年もデュラントの取材を間近で続けてきて、彼が周囲の選手をベターにする姿を何度も目撃してきた。

　デュラントは誰とでも一緒にプレーでき、同時に誰をもより優れた選手にできる稀有なプレイヤーだ。３人のスターが今季中に噛み合うために十分な時間が残っているのかはわからないが、それぞれが健康を取り戻し、リズムを掴めば、すごいチームになっていくかもしれない。

　今のネッツは以前より一丸となっている印象があるのも好材料だ。ハーデンを含めてのチーム作りがうまくいかず、ハーデンはこれ以上、チームに残りたがっていなかった。チーム内の雰囲気が悪化し、それゆえにトレードを断行する必要があった。そういった経緯を経て、トレードが行われて以降、優勝を狙う強豪チームに必要なまとまりがネッツに生まれてきたように思う。バスケットボールの面でのフィットはまた別の話だが、少なくとも今では、みんなが同じ方向を向いているように見える。

　懸念材料はやはり安定感のなさ、チーム作りの時間の少なさだ。必要なタレントは揃っているとは思うが、主力選手たちが一緒にプレーした時間が短すぎ、何を予測すべきかがわからない。選手たちは自分たちの力を信じているが、これから先にコート上で結果を出していかなければならない。

今季中の優勝争いは可能なのか

　イースタン・カンファレンス全体を見渡していくと、マイアミ・ヒートは本当に良いチームに見えるが、プレーオフを通じて、ヒートのベテランたちが健康を保てるかはわからない。昨季王者のミルウォーキー・バックスは去年ほどにいいチームには見えないとしても、１年前にすでに大舞台で勝てることを証明したチームであり、ヤニス・アデトクンボという切り札を持っている。

　ジョエル・エンビードが軸になったフィラデルフィア・76ersも強いが、ネッツ同様、ハーデンを導入しての新しいチーム作りに十分な時間があるかはわからない。ボストン・セルティックスの最近のプレーは素晴らしいが、プレーオフで勝てるチームかどうかはこれから証明されなければならない。

　イースタンから現時点で１チームを選ぶとすれば、やはりバックス。それでも１つ言えるのは、主にデュラントの存在がゆえに、カンファレンス内の誰もネッツとは対戦したくないと考えていることだ。

　最後に私自身の予想を述べておくと、すべての後で、ネッツはファイナルまで到達できると考えている。デュラントが健康を保ち、アービングがホームでもプレーできるようになり、シモンズも何らかの形で貢献できるなら、イースタンは勝ち抜けるだろう。そこには多くの「If」が存在し、これまで話してきた通り、予想するのは難しいが、今の私はそう考えている。