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怪物レブロンを擁するレイカーズに何が起こっているのか ベテランスカウトが分析

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

レブロン・ジェームズ、アンソニー・デービスという2大スーパースターを擁するロサンジェルス・レイカーズは、今季24勝24敗(1月25日のゲーム終了時点)とまだ好調の波に乗れていない。2シーズン前には優勝を遂げたNBAの名門チームに何が起こっているのか。昨オフ、ラッセル・ウェストブルックをトレードで獲得した補強策はチームにどんな影響を与えているのか。

今回、イースタン・カンファレンス某チームのベテランスカウトにレイカーズの分析を求めた。このスカウトが所属するチーム名は明かせないが、匿名であるがゆえに、正直で大胆な意見が聞けるはずだ。

ウェストブルックの誤算

 レイカーズは昨オフ、性質の悪いギャンブルに手を染めた。ウェストブルックを獲得し、同時に守備の良い選手たちを放出し、ロースターをより高齢にしてしまった。

 ウェストブルックは年齢を重ねてもプレースタイルを変えようとしない。これまで以上に相手をパワーで圧倒しようとするようになり、裏目に出ることが増えている。たまにスティールを決める以外、守備力も後退した。

 もともとケビン・デュラントが(2016年オフに)オクラホマシティ・サンダーから抜けたのは、ウェストブルックとあれ以上一緒にプレーすることを敬遠したからだった。彼と一緒では優勝は難しいと判断し、その考えが正しいことは後にデュラントがゴールデンステイト・ウォリアーズで2連覇を飾ったことで証明された。

 ワシントン・ウィザーズの周囲の人間は、「ウェストブルックはロッカールームに好影響を及ぼす。若い選手のリーダーになっていた」と盛んに強調する。それらは真実なのだろう。ただ、ゲームがスタートし、コート上で強引なプレーを繰り返してしまっては、その好影響も意味はない。ウェストブルックはベンチ降格も受け入れず、今後も例えばビンス・カーターのように、チームに様々な形で貢献できるベテランプレーヤーにはならないはずだ。

レブロンの力を持ってしても?

 レブロン、デービスはどちらも偉大な選手だが、デービスは健康が保てず、レブロンに莫大な負担がかかっている。それでもシーズン中はなんとかやり過ごし、ゲームがスローダウンするプレーオフでは自分たちにはチャンスがあると考えているのは理解できる。レイカーズはスローな高齢チームだが、レブロンという最高の選手を擁している限りはチャンスがあるだろう。

 ただ、今季のチームはシュート力、ディフェンス力に乏しく、レブロンですら万能ではない。特にウェスタンの6位以内に入れず、プレーインゲームから出発した場合、一部の主力選手にかかる負荷は大きすぎるかもしれない。

怪物レブロンもいつしか37歳。支配力は変わらないが、ディフェンスが衰えと見る声もある
怪物レブロンもいつしか37歳。支配力は変わらないが、ディフェンスが衰えと見る声もある写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 現在、ウェスタン・カンファレンスのトップ4に入っているチームでは、フェニックス・サンズ、ゴールデンステイト・ウォリアーズの力が抜けている。メンフィス・グリズリーズも底力があるが、ユタ・ジャズには勝率ほどの強さは感じない。ジャズよりもディフェンスが修復されたダラス・マーベリックスの方が面白く、シュート力不足という弱点はあっても、ダークホース的な怖さはある。

 レイカーズはその5チームよりも下だ。今後にデンバー・ナゲッツが向上した場合、プレーインゲームが免除される6位以内に入れるかはかなり微妙だろう。

 現状ではレイカーズは上位進出が可能なチームではなく、長期視野で考えられるロースターでもない。来季はまた大きく陣容が変わるはずだ。

 繰り返しになるが、このチームになぜウェストブルックを加えようとしたのか、そのアイデアがどこから出てきたのかはわからない。レブロンもその補強策に一枚噛んでいるのかもしれないが、そうだったとすれば、あれほどバスケットボールIQの高い選手がなぜそう考えたのかはどうしても解せない。

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スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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