「クロフォードがポーターをKOしても驚かない」強豪対決の行方と今後を現地記者が予想
11月20日 ネバダ州ラスベガス
マンダレイべイ・リゾート&カジノ
WBO世界ウェルター級タイトル戦
王者
テレンス・クロフォード(アメリカ/33歳/37戦全勝(28KO))
12回戦
元IBF、WBC同級王者
ショーン・ポーター(アメリカ/33歳/31勝(17KO)3敗1分)
ボクシングファン垂涎の一戦のゴングが間近に迫っている。現地時間20日の夜、ウェルター級の強豪対決が実現する。近年はパウンド・フォー・パウンドでもトップ3〜4に入る王者とみなされながら、なかなかビッグファイトを実現できなかったクロフォードがここで実力証明するのか。ラッシングパワーとタフネスを武器に多くの強豪と渡り合ってきたポーターが再び底力を見せるのか。楽しみな一戦はアメリカでもESPN+でPPV中継される。
今回、3人の在米メディア、関係者にこの試合に関する3つの質問をぶつけ、ビッグファイトの行方とウェルター級の今後を占ってみた。
パネリスト
ジェイク・ドノバン(Boxingscene.comのシニアライター。全米ボクシング記者協会(BWAA)でもエグゼクティブを務める Twitter : @JakeNDaBox)
ライアン・オハラ(リングマガジンのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)
ショーン・ナム(Boxingscene.comの通信員として活躍する韓国系アメリカ人ライター。精力的な取材で構築したネットワークによるインサイダー情報に定評がある Twitter : @seanpasbon)
1. 試合予想は
ドノバン : 前日計量時のポーターは良い状態に見えたし、自信に満ちているけれど、やはりクロフォードの方が一枚上のボクサーだと思う。最初の6、7ラウンドは接った戦いになるだろうが、クロフォードは徐々にポーターの動きを見極め、崩していくはずだ。クロフォードが10ラウンドまでにストップ勝ちを飾るか、明白な判定勝利だろう。正直、エロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)まで含め、ウェルター級でクロフォードに勝てる選手はいないと思っている。
オハラ : クロフォードが11回にストップ勝ちを収めると見る。序盤は両者ともに試合から遠ざかっていることが多少影響して拮抗するだろうが、クロフォードがスイッチのうまさを生かしてペースを掴むはずだ。クロフォードは最高級のフィニッシャーでもある。過去数戦のポーターはベストの出来ではなく、一方でクロフォードは自身の存在をアピールする一戦を必要としている。この試合がそれになるはずだ。
ナム : この試合を望んだポーターは称賛に値する。オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)を除けば、現役最高のレジュメを誇っているのはポーターかもしれない。ただ、勝負はレジュメの濃さで決まるわけではない。クロフォードの方がより優れた選手だ。クロフォードはまだウェルター級のエリート選手と対戦経験がないという批判を受けることがあるが、リング上ではそれも関係ない。思慮深さでは定評がある王者は、まだリング上で解決できない問題に直面したことはない。前半は競ったものになるかもしれないが、徐々に的確なカウンターパンチで突き放すだろう。11ラウンドまでにクロフォードがポーターをKOしても驚かない。
2. 今戦後にトップランクとの契約が切れるクロフォードは再契約するのか
ドノバン : クロフォード側にトップランクと再契約すべき明確な理由があるとは思えない。ボブ・アラムはここに来てクロフォードとスーパーライト級の統一王者ジョシュ・テイラー(英国)の対戦話を始めているが、クロフォード、テイラーはどちらも英国のダニエル・キナハンと結びついているのだから、成立させるのにトップランクの助けは必要ない。マニー・パッキャオ(フィリピン)戦を実現させられなかったことが、トップランクとクロフォードの関係に影を落としている。クロフォード陣営はポーター戦のあとに再び熟考するのだろうが、トップランクと再び3年ほどの契約を結ぶことはないだろう。その一方で、クロフォードがトップランクからPBCに鞍替えすると思っている人は多いものの、PBC傘下に入ったからといってスペンス戦に直結するわけではなく、クロフォード自身もそれはわかっている。結論をいうと、クロフォードは今後数戦はFAの立場を試すのではないか。
オハラ : クロフォードはトップランクと再契約すると予想しているが、はっきりとしたことは言えない。
ナム : トップランクは過去数年に渡って市場価格以上の額を払い、エリート選手と戦っていないにもかかわらず、クロフォードは高額報酬ボクサーになった。ホセ・ベナビデス・ジュニア(アメリカ)戦ですら300万ドルものファイトマネーを手に入れたことを考えれば、去るのは難しいだろう。金銭面以外にもう一つ考慮することがあるとすれば、クロフォードは大きな影響力を持ち、それでいて実態の見えないアイルランド人の大物ダニエル・キナハンをアドバイザーとして雇っていると伝えられてきたことだ。キナハンはトップランクのボブ・アラムと多くのビジネスを手掛け、ジャメル・ヘリング(アメリカ)、タイソン・フューリー(イギリス)のアドバイザーも務めてきたことも考慮する必要があるだろう。
3. クロフォード対エロール・スペンス・ジュニア戦は実現するか
ドノバン : もう諦めかけている。スペンスには多くの選択肢があり、今後どれだけウェルター級に止まるかもわからない。WBAが2月にスペンス対ヨルデニス・ウガス (キューバ)を挙行することを認めれば、それがスペンスにとってウェルター級での最後の試合になるんじゃないかと思う。今後を予想すると、現在はスーパーウェルター級のジャーメル・チャーロ(アメリカ)とブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)は再戦後にミドル級へ、ミドル級のジャモール・チャーロ(アメリカ)はスーパーミドル級へ、スペンスはスーパーウェルター級へと、PBC勢はそれぞれ王座を返上して1つずつ階級を上げるのではないかと思う。そうなると、スペンスと戦うためにクロフォードがさらに階級を上げるのかという話になって来るので、もう悲観的にならざるを得ない。
オハラ : 正直言って、その試合は行われないと思う。もうタイミングを逃した感があるし、スペンスはあまりにも多くのアクシデントを経験してきてしまった。
ナム : 実現することを望んでいるが、懐疑的にならざるを得ない。すでに2団体のウェルター級王座を保持するスペンスは、まずはPBCの側で獲得できるすべてのタイトルを集めようとするだろう。WBAタイトルはウガスが保持しているが、最近の流れを見る限り、スペンス対ウガス戦の挙行には時間がかかりそうだ。ウガスはまず若き指名挑戦者のエイマンタス・ステニューニス(リトアニア)と対戦しなければならないかもしれない。今回のポーターが示した通り、ビッグファイトは選手たちが望めば実現するものだが、クロフォード対スペンス戦に関してそれが当てはまるかはわからない。