Yahoo!ニュース

なぜ中谷潤人はアコスタに完勝できた? パッキャオを破った元2階級制覇王者が分析

杉浦大介スポーツライター
Mikey Williams/Top Rank via Getty Images

9月10日 アリゾナ州トゥーソン カジノ・デルソル

WB0世界フライ級タイトル戦

王者

中谷潤人(M.T/23歳/22戦全勝(17KO))

TKO4回

挑戦者

アンヘル・アコスタ(プエルトリコ/30歳/22勝(21KO)3敗)

 9月10日、アリゾナ州トゥーソンのカジノで行われた中谷対アコスタ戦後、この試合をESPNの解説者としてリングサイドで見たティモシー・ブラッドリーが筆者の質問に応えてくれた。

 米国デビュー戦とは思えない堂々とした戦いぶりで中谷が強豪をストップし、アメリカの一部のファン、関係者の間でも反響を呼んだ一戦。現役時代はスーパーライト級、ウェルター級の2階級を制し、マニー・パッキャオ(フィリピン)と通算1勝2敗というライバル関係を築いたブラッドリーの目に中谷の戦いぶりはどう映ったのか。

Photo By Mikey Williams/Top Rank
Photo By Mikey Williams/Top Rank

 支配的な力を持っている

 中谷はすごい選手だね。周辺階級のボクサーたちにとって大変な難敵になるだろう。背が高く、リーチが長く、距離を保つのが上手い。ジャブを撒き餌にして距離を掴み、その後の踏み込みのスピードが素晴らしい。

 少しループ気味のパンチがいいし、ボディ打ちもうまい。アコスタはハードパンチャーだが、中谷はパンチを浴びてもダメージは受けずにタフネスも証明した。本当に良いボクサーだし、私も好きな選手だ。

 私が選手を見る際は、まずどんな弱点があるかを探すもの。中谷は腕が長いから、アコスタ戦でも接近戦では快適に戦えない時間帯も見受けられた。距離が離れた際には中谷がやりたい放題だったが、近づいた時の方がアコスタはいい戦いができていた。

 中谷はくっついた時にパワーのある相手は苦手かもしれない。ただ、彼には見た目以上のフィジカルの強さがある。今の階級でより小さい選手と戦い続ける限り、支配的な力を発揮するだろう。

 試合前から中谷のビデオを見て、アコスタ戦は良いファイトになると思っていた。2人ともパワーはあるが、馬力ではアコスタの方が上なんじゃないかと考えていた。しかし、実際には正反対。アコスタはおそらく中谷を過小評価していて、今夜の戦いに対する準備はできていなかったのだと思う。

 WBC王者マルチネスと統一戦の行方は

 日本人選手は例外なく規律がしっかりしていて、ハードワーカー。リング上で休むことを知らず、厳しい状況でも決して諦めずに挑んでくる。誰であろうと、そんな日本人ボクサーのことはもうリスペクトせずにはいられないよ。

 中谷はWBC同級王者フリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)との統一戦を望んでいる?マルチネスもフリーク(怪物)だ。マルチネス対中谷は目の離せない試合になるだろう。

 マルチネスは小柄だが、クリエイティブな攻撃を得意とし、様々なアングルからパンチを繰り出してくる。手数が出て、パンチ力もあるから、対戦相手に落ち着いたアウトボクシングを許さない。いつ爆発的な攻撃を繰り出してくるか分からないから、相手は常に準備しておかなければいけない。

 中谷もパンチ力があり、ジャブ、右フックが打てるから、距離を保てば優位になる。このカードが実現したら、中谷が勝てるんじゃないかと思う。2人とも偉大なチャンピオンだから、私はどちらもリスペクトしているよ。いずれにしてもすごい試合になるはずで、ぜひ見てみたいファイトだ。

関連記事

「中谷潤人にはスターの要素がある」WBOフライ級王者、米デビュー戦を現地記者が予想

「中谷潤人対アコスタはすごい試合になる」初防衛戦直前、トップランク副社長が語る

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事