9月10日 アリゾナ州トゥーソン カジノ・デルソル

WB0世界フライ級タイトル戦

王者

中谷潤人(M.T/23歳/21戦全勝(16KO))

12回戦

挑戦者、元WBO世界ライトフライ級王者

アンヘル・アコスタ(プエルトリコ/30歳/22勝(21KO)2敗)

 日本が誇る逸材、中谷の米国デビュー戦が目前に迫っている。サイズ、スキル、パワーを備えた王者は、軽量級屈指の強打者でもあるアコスタを相手にどんな戦いを見せるのか。楽しみな一戦はアメリカでもESPN+で放送される。

 この試合を在米メディアはどう見ているのか。今回、軽量級に詳しい3人の記者に3つの質問をぶつけ、中谷の今後を占ってみた。

パネリスト

スティーブ・キム(元ESPN.comのメインライター。韓国系アメリカ人。業界内に幅広い人脈を持つ Twitter : @SteveKim323)

ノーム・フラーエンハイム(アリゾナ州在住のスポーツライター。アリゾナ・レパブリック紙、LAタイムズなどで記事、コラムを執筆する。中谷対アコスタ戦は現地取材 Twitter : @FrauenheimNorm)

ショーン・ジッテル(FightHype.comのレポーター。ラスベガス在住。全米を飛び回って取材し、著名選手からも信頼を得る。中谷対アコスタ戦は現地取材 Twitter : @Sean_Zittel)

1. 中谷対アコスタ戦はどんな試合になるか?

キム : とても良いマッチアップ。アコスタは実績豊富で危険なパンチャーであり、世界王者級の力を持っている。中谷にとって、これまでで最強の対戦相手のはずだ。アメリカでの初戦にもかかわらず、中谷にとって簡単な相手ではない。ワールドクラスのフライ級選手同士の対戦であり、この試合で中谷の王者としての真価が様々な形で示されるだろう。

フラーエンハイム : 中谷のアメリカデビュー戦は興味深いカードになった。彼にはスターの要素が見て取れる。最初の数ラウンドの中谷はナーバスになり、慎重に戦うかもしれないが、リーチの長さとスキルを生かして次第に優位に立つだろう。アコスタもアグレッシブに攻め、エキサイティングな試合になるはず。ファンを喜ばせる劇的な戦いの中で、中谷の良さが発揮されるのではないか。

ジッテル : 日本のボクサーは”タフで運動量の多い選手たち”というイメージだったが、最近では井上尚弥をはじめ、ファンを魅了する攻撃力を持ったエキサイティングな選手たちが続々と出てきている。中谷もその中の1人だ。長身で、リーチを生かして戦い、それでいてボディ打ちも上手く、コンビネーションが打てる。ただ、アメリカで戦ったもう1人の中谷(中谷正義)と同様、ディフェンスには向上の余地があるように思える。アコスタもパワーに秀でた好選手。アコスタが攻勢に出る場面もあるはずで、激しい試合になるだろう。他の日本人選手と同じく、ハートと打たれ強さを備えた中谷が勝ち残ると見るが、一方で守備面で課題があることを示す内容にもなると思う。

2. 中谷対アコスタ戦の勝敗予想は?

キム : アコスタは序盤からプレッシャーをかけてくるはずだ。アウトボクシングなどするつもりはないことは、アコスタ陣営のジョエル・ディアス・トレーナーはすでに公言している。そんなアコスタに対し、中谷はまずは距離を取り、状況に応じて下がることもあるかもしれない。ラウンドが進むにつれ、より多才な中谷が徐々にペースを掴み、終盤は主導権を握ると見る。激しい戦いとなるだろうが、中谷の判定勝ちを推したい。

フラーエンハイム : 中谷の8回KO勝ち。

ジッテル : 終盤のKOで中谷が勝つと思う。

フラーエンハイム記者、ジッテル記者も中谷の戦いぶりを楽しみにしている 撮影・杉浦大介
フラーエンハイム記者、ジッテル記者も中谷の戦いぶりを楽しみにしている 撮影・杉浦大介

3. 中谷が米リングで知名度を上げるためにやるべきことは?

キム : 初防衛戦でアコスタに印象的な形で勝つことが第一歩になる。その後は可能な限り、意義のある試合を頻繁にこなしていくこと。最近のボクサーは試合間隔が開くことが多いが、才能がある選手でも、その才能を実際に披露しなければ意味がない。外国に本拠を置く中谷にとって、ただ勝つだけではなく、アメリカのファンにどう頻繁に露出するかが難しい部分になる。

フラーエンハイム : 中谷は階級を上げていかなければならないだろう。身長171cmの23歳にとってそれが難しいことだとは思わない。10月に予定されたファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)対ローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)戦はゴンサレスの新型コロナウイルス感染で延期になり、それがゴンサレスのキャリアにどう影響するかはわからない。ただ、エストラーダはまだ健在で、アメリカ、メキシコの両方でよく名前を知られた選手でもある。エストラーダ対中谷戦がスーパーフライ級で実現し、その試合がラスベガスで挙行されればインパクトは大きい。そういったシナリオに近づくためにも、まずは10日、アコスタ戦で実力を誇示しなければいけない。

ジッテル : 英語が母国語でない選手は自身の拳でアピールする必要があり、現在の多くの日本人選手たちはそれを成し遂げているように思う。もちろんPPVスターにまで到達するのは難しいとしても、実力を見せることで、評価、知名度を高めることは可能だ。中谷に関しても、良い試合をして勝ち続ければアメリカで成功できるだろう。井上は米リングでもスターになりつつあるから、中谷は同じカードに登場して名前を売るのも良いかもしれない。日本のリングにメインイベンターとして立つより、少し少ないファイトマネーを承諾してでも、投資として井上と同興行で戦う価値はあるのではないか。