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「井岡一翔対田中恒成の結果に驚いた」前WBA世界Sフライ級王者が挙げた勝負のカギ

杉浦大介スポーツライター
(写真:アフロスポーツ)

12月31日(日本時間) 東京都 大田区総合体育館

WBO世界スーパーフライ級タイトル戦

井岡一翔(Ambition/31歳/26勝(15KO)2敗)

TKO8回

田中恒成(畑中/25歳/15勝(9KO)1敗)

 試合後、前WBA世界スーパーフライ級王者アンドリュー・モロニー(オーストラリア)に井岡対田中戦を分析してもらった。

ポイントは的確な左ジャブ

 井岡対田中戦はハイレベルの良い試合でしたね。実は試合前は田中の勝利を予想していたので、展開、結果には驚かされました。

 井岡の上手さが目立ち、特に左ジャブが素晴らしかったと思います。ストレートパンチの的中率が高く、それが試合を制する決め手になりました。井岡の実力は認識していましたが、これほど高確率でパンチを当て続けるとは思わなかったというのが正直なところです。

 鍵になった要素を挙げるなら、井岡のジャブだったと思います。鋭い左は試合を通じて田中の顔面を捉え続けました。ジャブが頻繁に当たったことが、的確な右ストレートにつながり、おかげで左フックもより効果的になったと感じました。

 井岡のディフェンスも印象的でしたね。頭をよく振り、勢いよく攻め込んでくる田中のパンチを上手に外していました。普段の田中は手数が非常に多い選手ですが、思うようにパンチが当たらず、徐々に攻撃が単調になっていったようにも見えました。

もしも井岡と戦うなら?

 同じ階級のチャンピオンなので、私もいずれ井岡とも戦いたいものです。現在の私はWBA同級王者ジョシュア・フランコ(アメリカ)とのラバーマッチに集中しており、まずはタイトルを取り戻さなければいけません。その仕事を果たした後、他のタイトルホルダーと戦いたいと願っており、井岡もその際の候補の一人になるでしょう。

 4階級制覇を果たし、スーパーフライ級でも最高級のボクサーであることを証明した井岡のような選手を相手に私も自分の実力を試したいのです。

 私と井岡が戦ったら、スタイル的に噛み合うでしょうし、中間距離からカウンターを狙い合うことになるのではないかと思います。素晴らしいファイトになるでしょうし、戦えば勝つ自信もあります。ぜひ2021年中に実現させたいので、まずは私の方がそれが狙える位置に戻らなければいけません。

 11月14日のフランコ戦後、ノーコンテストと発表された試合結果に抗議し、ネバダ州アスレチックコミッションに提訴しましたが、残念ながら今のところ特に進展はありません。いずれにしても次の試合はフランコ戦になります。できれば第3戦はオーストラリアで開催し、家族、友人たちの前で戦いたいものです。

 トップランクのボブ・アラム・プロモーターはテオフィモ・ロペス(アメリカ)対ジョージ・カンボソス・ジュニア(オーストラリア)をメインに据えた大興行をオーストラリアで計画しているという話でしたが、私のタイトル戦は別の興行になるかもしれません。どちらにせよ、まずはフランコに勝ち、その後に井岡のような他の世界王者たちと対戦し、2021年を素晴らしい年にしたいと願っています。

アンドリュー・モロニー : オーストラリア出身。29歳。21勝(14KO)1敗1無効試合。2019年11月、エルトン・ダーリー(ギニア)に勝ってWBA世界Sフライ級暫定王者に。2020年3月1日、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア・帝拳)がWBAからスーパー王者として認定されたことで、レギュラー王座に昇格した。 昨年6月、ジョシュア・フランコに判定負けで王座陥落。11月の再戦では2回までフランコを圧倒しながら、不可解なノーコンテスト裁定で王座復帰を果たせなかった。2021年はフランコとのラバーマッチ実現を目指している。

Photo By Mikey Williams/Top Rank
Photo By Mikey Williams/Top Rank

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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