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裏街道を行く3階級王者クロフォードの未来予想図 米英対決の「その先」とは?

杉浦大介スポーツライター
写真:ロイター/アフロ

11月14日 ラスベガス MGMグランド カンファレンス・センター

WBO世界ウェルター級タイトル戦

王者

テレンス・クロフォード(アメリカ/33歳/36戦全勝(27KO))

12回戦

元IBF同級王者

ケル・ブルック(イギリス/34歳/39勝(27KO)2敗)

ブルックは力を残しているか

 現役最高級の評価を集めるクロフォードにとって、ちょうど11カ月ぶりのリング登場になる。今回の対戦相手候補にはマニー・パッキャオ(フィリピン)、ブルック、キース・サーマン(アメリカ)、ヨルデニス・ウガス(キューバ)、ショーン・ポーター(アメリカ)らの名前が挙げられたが、ブルック以外はすべてアル・ヘイモンのPBC所属とあって、ほとんどの業界関係者はブルックとの対戦になると“覚悟”していたのが実情ではあった。案の定、予想通りに決定した米英対決に新鮮味とビッグイベント感はない。

 もっとも、PBC勢との激突と比べれば落ちるとしても、現在3連勝中のブルックとの対戦が悪いカードというわけではない。

 34歳になったブルックには一時の勢いはないものの、負けは依然としてゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、エロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)に喫した2敗のみ。ハイレベルのスキル、パワーを兼備した選手であり、全盛期にはウェルター級最強と目されたこともあった。2016〜17年に負った左右の眼窩骨折の影響もないと主張しているだけに、クロフォードにとって厄介な相手となる可能性を秘めているのだろう。

 2018年6月にウェルター級に上げて以降、クロフォードの戦いぶりはやや不安定な印象もある。同年10月のホセ・ベナビデス(アメリカ)戦では相手の体格に押され、昨年12月の前戦ではエギディウス・カラバウスカス(リトアニア)に“幻のダウン”も喫した。

 その2試合も最終的には強烈フィニッシュに持ち込んだ底力とキラー・インスティンクトは魅力。もちろん今週末の試合でも絶対有利と目されており、判定にせよ、終盤ストップにせよ、クロフォードの明白な形での勝利が濃厚ではあるのだろう。

 ただ、ブルックが2017年5月のスペンス戦以来となるウェルター級のウェイトを無理なく作れた場合という条件付きで、安定王者が過去最大級の苦戦を味わっても驚くべきではないのかもしれない。

スペンス戦実現の条件は

 その実力は多くの関係者から認められているクロフォードだが、33歳となった今でもクロスオーバーのスーパースターダムには辿り着けていない印象がある。

 スーパーライト級では4団体統一を果たし、すでに3階級制覇を達成。各媒体が発表するパウンド・フォー・パウンド(PFP)・ランキングでもトップ3の常連になり、ESPNの強力なプッシュも受けてきた。それでも一般的な知名度が上がらない理由は、シンプルに、カジュアルなファンをも巻き込むビッグファイトに恵まれてこなかったことだろう。

 クロフォードの過去の戦歴を改めて振り返ると、対戦相手にビッグネームが少ないことにすぐに気づかされる。これまでで最強の敵は、ライト級時代にダウン応酬の激闘を演じたユーリオルキス・ガンボア(キューバ)、あるいはWBC、WBO世界スーパーライト級統一戦で対戦したビクトル・ポストル(ウクライナ)か。ネームバリューでいえば、昨年4月に戦ったアミア・カーン(イギリス)、今回のブルックが最大かもしれない。

 ライト、スーパーライト級で戦っていた際には強力なライバルが見つけられず、冒頭で述べた通り、現在もウェルター級の強豪のほとんどはPBC所属。ヘイモンにはわざわざライバルプロモーターの看板選手に塩を送る理由はなく、おかげでクロフォードはウェルター級戦線でも裏街道を行くことを余儀なくされてきた。それでもPFPでエリート扱いを受ける技量は本物であり、殿堂入りも間違いないが、そのキャリアはハイライトを欠いている感は否めない。

 今回のブルック戦のファイトウィーク期間中、当面の試合に関してと同等かそれ以上に、クロフォードの今後がどうなっていくかが主要な話題になっている。

 ある情報源によると、1試合300万ドルの報酬が保証されたトップランクとの契約は来夏〜秋に満了。待望のスペンス戦を実現させるために、そこでクロフォードがPBCに移籍するのではないかという推測、予想は後を絶たない。

 契約満了が近づいているのであれば、PBC側がそれまでにトップランクとのジョイントPPVといった条件を飲んでビッグファイトを組むことは考えにくい。だとすれば、スペンス戦実現はクロフォード移籍次第となるかもしれない。そんな背景から、ブルック戦ではその戦いぶりと同様、試合後にクロフォードがどんな未来予想図を語り残すかにも大きな注目が集まりそうだ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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