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「世界ヘビー級王者就任後もアンディ・ルイスの人間性は変わっていない」 マニー・ロブレス インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
Photo Ed Mulholland/Matchroom Boxing USA

12月7日    

サウジアラビア ディルイーヤ

WBA、IBF、WBO世界ヘビー級タイトル戦

王者

アンディ・ルイス・ジュニア(アメリカ/30歳/33勝(22KO)1敗)

12回戦

前王者

アンソニー・ジョシュア(イギリス/29歳/22勝(21KO)1敗)

ジョシュア攻略の鍵はボディ攻め

ーー再戦が馴染みの薄いサウジアラビア開催になったことは、懸念材料にはなりませんか?

MR : 懸念がまったくなかったとは言いませんが、キックオフ会見で現地を訪れたあと、それも消えてなくなりました。むしろ「サウジアラビアに来てくれ」と周囲の人たちに呼びかけているくらい。女性は会場には来られないのではないかと考えていましたが、そんな雰囲気ではありませんでした。女性客も歓迎されるようです。私たちの家族も連れて行けるし、問題はまったくない。事前に足を運び、街をドライブをして回ったことは正しい選択でした。現地の人々とも触れ合い、今では素晴らしい場所だと感じています。

ーー再戦では両者の適応が重要になると思いますが、あなたは会見の壇上で「ルイスはジョシュアを倒せるスタイルを持っている」と話していました。もう少し詳しく説明して頂けますか? 

MR : 第1戦の際からそう思っていて、実際に私の想定通りの内容、結果になりました。ジョシュアはアンディ・ルイスのようなファイターとの対戦経験はありませんでした。ルイスはフリオ・セサール・チャベス、エリック・モラレス、マルコ・アントニオ・バレラのような偉大なメキシカンファイターとよく似たスタイルを持っています。プレッシャーをかけるのが上手く、ボディ打ちが得意。そういった選手はヘビー級にはルイス以外は存在しない。より軽いクラスにはいても、ヘビー級にはいないのです。

ーー第1戦ではボディ攻撃が鍵だったと思いますか? 

MR : それは間違いありません。他の人たちはなぜかそれを指摘しないので、あなたが言ってくれたことを嬉しく思います。ボディ打ちこそが勝利のポイントだったのです。

ーー一般的には頭部へのフックがジョシュアの致命傷になったという見方がされていますね。

MR : ジョシュアにとっての終幕は7回ではなく、実は第6ラウンドに始まったのです。第7ラウンドの彼はもう終わった状態でした。アンディは6回に強烈なボディショットを打ち込んでおり、ラウンド終了後にコーナーに戻ってきた際には「もうジョシュアは終わりだ」と感じていました。その時点でジョシュアは足にきていて、私たちが考えていた通りに試合は7回で終わりました。

ーー今ではジョシュアもルイスの実力は熟知したと思いますが、リマッチではどんなアジャストメントを予期しますか?よりジャブを重視してくるのではないかと考えられていますが。

MR : おそらくそうでしょうね。ただ、第1戦を振り返り、適応を進めるのは私たちも同じです。互いに準備し、ゲームプランを用意する。そして、その夜により優れている選手が勝ち残る。今の時点で1つだけ約束できるのは、12月7日はエキサイティングなファイトがお見せできるということです。

辛い時期も経験したロブレスだが、情熱的な姿勢は健在だ 写真・杉浦大介
辛い時期も経験したロブレスだが、情熱的な姿勢は健在だ 写真・杉浦大介

ルイスの根本の部分は変わらない

ーールイスがタイトルを奪うまで、あなたは厳しい時間を過ごしていたことはよく知られています。オスカル・バルデス(メキシコ)、ジェシー・マグダレノ(アメリカ)、マイケル・コンラン(イギリス)といった門下生たちがそれぞれの理由で離れていきました。こうしてルイスを世界ヘビー級王者に導き、自らのトレーナーとしての力量が証明されたように感じていますか?

MR : いえ、そういった風には考えません。重要なのは私ではありません。大事なのはボクサーで、やり遂げたのはアンディ・ルイスです。私の仕事は彼の準備を助けること。もちろん人間にはそれぞれのストーリーがあり、私も多くのアップ&ダウンを経験してきました。師匠のような存在だった父親も亡くしました。父親の死こそが私にとって最も大きな出来事。だからこそ、史上初のメキシコ系世界ヘビー級王者の誕生を助けられたことは、同じメキシコ系の私にとって非常に大きな意味があったのです。

ーールイスは業界屈指の好漢として知られていますが、戴冠後は両親に家を買ったり、高級車を買ったり、派手な誕生日パーティを催したり、とかなり散財していることが話題になっています。大金を得てライフスタイルが変わったことは懸念材料になりますか?

MR : 数百万ドルを得た人間には、新しい家を買う権利があると思いませんか?それともこれまでと同じ家に住み、同じ車に乗るべきですか?あなただったらそうしますか?少し違った形で伝えられているように思いますが、彼は自分自身ではなく、家族のために家や車を購入したのです。確かに王者になってこれまでよりお金を遣っているとは思いますが、根本の部分は変わっていません。謙虚な人間のままです。

ーーお金を持っている人間は遣うべきだと自分も思います。

MR : 世界ヘビー級王者になればお金が入ってくるのは当然です。大事なのは自分自身を見失わないこと。お金のために人間が変わってしまったら、それは問題ですが、彼に関してはそんなことはありません。これまでと違う人間になっていたとしたら、私はもう彼に雇われてはいないでしょう(笑)

ーー世界ヘビー級王者とコンビを組むあなたはどんな未来を思い描いていますか?将来の目標は?

MR : まずは防衛を果たさなければいけません。その後も1戦ずつです。頭にあるのはジョシュアとの再戦に勝つことだけで、他は何も考えていません。12月7日の試合に集中しています。

ーーリマッチをクリアすればデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)、タイソン・フューリー(イギリス)とのビッグファイトも視界に入ってきますが、それらも今は考えていないということですね。 

MR : まったく考えてないですよ。ワイルダー、フューリーといった選手たちとの試合を考えるのは、今の私たちにとって意味のあることではありません。今戦でのジョシュアは雪辱を目指し、ハングリーに臨んでくるに違いない。まず私たちは絶対にそれを許すわけにはいかないのです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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