Yahoo!ニュース

「ボクシングは危険だからこそ、クリーンに保たなければいけない」 ダニエル・ジェイコブス インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
Photo By Ed Mulholland/Matchroom Boxing

 

ダニエル・ジェイコブス  31歳

元WBA世界ミドル級王者

 ニューヨークのブルックリン出身。戦績は33勝(29KO)2敗。4月28日にブルックリンのバークレイズセンターでマチエ・スレツキ(ポーランド)とのノンタイトル戦を予定する。今回のインタヴューは4月12日、ブルックリンのグリーソンズジムで収録された。

カネロの禁止薬物問題は”残念なこと”

ーースレツキ戦まであと2週間強ですが、コンディションは?

DJ : 良い感じで来ていますよ。万全です。

ーー地元ブルックリンでの試合になりますが、ホームタウンのファンにどんなファイトを見せたいですか? 

DJ : ブルックリンのファンに素晴らしいショウをお届けしたいです。人々に幸福な気持ちで家に帰ってもらいたいという思いを常に頭に置いています。

ーーエディ・ハーン・プロモーターとの契約第1戦だった前戦(対ルイス・アリアス(アメリカ))は判定決着になりました。今戦ではKOにこだわりますか?

DJ : 僕はこれまでバークレイズセンターでは6戦6勝(6KO)。その連続KO記録を伸ばせるのであれば最高です。そうならなかったとしても、勝利を手にできれば満足できるはずです。圧勝でも、接戦でも、勝ちは勝ち。とにかく勝って、世界タイトルに自分を近づけたいと思っています。

ーーまずはスレツキ戦に集中しなければいけませんが、その後には世界戦略が見どころになってきます。どんなプランを思い描いていますか? 

DJ : この試合後、世界タイトルのベルトを持っている選手と対戦したいですね。現時点では向こう2ヶ月にミドル級戦線がどう変化するかが読みづらい。ただ、目の前の試合で僕が印象的な形で勝てば、ミドル級がどうなっていこうと、自分は好位置に身を置くことができると思っています。

ーーミドル級が混沌とした最大の理由は、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)の再戦がキャンセルになったことですね。この一件について思うことは? 

DJ : 残念なことです。疑われていることが真実であるか、あるいは(カネロに)落ち度があったのだとしたら、この事件は彼がどういった人間かを物語ってしまっているのだと思います。すべてのアスリートは、プロとして、自分の身体に何を入れるかに対して責任を負うべき。状況を考えれば、汚染肉のせいにしたいのは理解できます。ただ、その肉を食べたのは彼自身です。責任を持って、危険に気づき、こんな状況を再び引き起こさないように注意しなければいけません。

ミドル級最強を証明したい

ーー禁止薬物(PED)を使用したのか、汚染肉の影響なのか、依然としてはっきりしない状況です。しかし、ボクシングという危険なスポーツで、しかも同じ階級のボクサーとして、薬物検査で陽性反応が出た選手に対して怒りは覚えませんか? 

DJ : ボクシングの薬物問題は他のスポーツのそれとはまた種類が違うのは事実です。バスケットボール選手がPEDを使ったとして、効果はシュートを打つ機会が増えるくらいでしょう。しかし、ボクシングではPEDを使用した選手の対戦相手は、亡くなったり、2度と戦えなくなる身体になることも十分に考えられます。だからこそ、このスポーツをクリーンに保つことに尽力しなければいけない。誰かが違反を考えたり、薬に頼ることができない業界を作っていかなければいけません。

ーー今後のためにも、真相がどうあれ、カネロには厳しい処分が下されるべきだと考える関係者は多いです。処分を受けたあと、将来的にカネロと対戦する意思はありますか? 

DJ : 誰とでも戦います。GGG(ゴロフキン)だろうと、カネロであろうと、誰であろうと構いません。自分こそがミドル級のベストボクサーだと感じています。ファンが誰が最強だと思っているかはわかりませんが、僕がベストだと証明していくつもりです。

ーー先月のブルックリンでの興行時、同じくミドル級コンテンダーのジャマール・チャーロ(アメリカ)と舌戦を展開したことが話題になりました。チャーロとの対戦の可能性は?

DJ : 十分にあると思いますよ。妨げる要素は少ないし、自分でも戦いたいと思っている相手です。ただ、いろいろなことがはっきりするまで待たなければいけません。

ーー最後になりますが、今週末にはWBA正規王者の村田諒太(帝拳)がエマヌエーレ・ブランダムラ(イタリア)と初防衛戦を行います。このタイトル戦について思うことは?

DJ : 村田に関しても、彼の挑戦者に関しても、それほど詳しく知っているわけではありません。ただ、村田が僕が以前持っていたタイトルを保持していることは知っています。まずは初防衛戦での幸運を願っています。そして、いずれアメリカに来て強豪と対戦し、その実力を証明して欲しいですね。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事