水不足解消へは今年未だに発生していない台風が鍵を握る!?
同期比で過去最低を更新中
首都圏の水がめ~過去最も早いペースで貯水量が減少中~(5月28日筆)
利根川水系8ダム(首都圏の水がめ)の貯水量がこの1か月間急減した状態が続いており、きょう(6月11日)午前11時の貯水量は1億8464万トンで、貯水率はちょうど40%まで落ち込んできています。
この貯水量の低下に伴い、今週火曜日には独立行政法人水資源機構関東管内渇水対策本部が設置され、さっそく8ダムの内、草木ダムの貯水量が落ち込んでいることから、きょう午前9時より渡良瀬川で10%の取水制限が始まりました。
来週の火曜日(14日)には利根川でも10%の取水制限を始めるか、検討することにしているようです。
これに先だち、週明け月曜日(13日)には梅雨前線上の低気圧が本州付近を通過するため、利根川の水源地帯でも久しぶりにまとまった雨が降る可能性がありますが、水不足を解消するにはほど遠いと思われ、取水制限が始まる可能性が高いとみられています。
では、この水不足を緩和(あるいは解消)するためには、どれ位の雨が必要なのでしょうか?
まず梅雨前線による雨が頻繁に降ったり、夏特有の不安定降水(夕立)が毎日のように発生すれば、一気にとはいかないまでも徐々に上向きに転じることがあります。
しかし、過去の例から、大きく緩和、あるいは解消へ向かうためには、比較的、短い期間に100ミリ~200ミリ以上の大雨が水源地帯にまんべんなく降ることが必要な条件となるようです。
このような大雨をもたらすものは主には台風であり、多くの場合、貯水量を一気に5千万トン以上も回復される力を持っています。
では、近年、利根川で取水制限が実施された年の状態をみてみましょう。
水不足解消にはいずれも台風が絡む
近年で最も深刻な水不足に陥ったのは1994年(平成6年グラフ1)です。猛暑と少雨の影響により、最大30%の取水制限が行われ、水道用水では高台で水の出が悪くなったり赤水が出る等の被害が発生し、給水活動も行われました。この時は9月に入ってからの雷雨などで徐々に持ち直し、最終的には9月29日に紀伊半島へ上陸し、列島を北上した台風26号による大雨で、渇水状態が完全に解消されました。
1996年(平成8年グラフ2)の水不足も深刻で、冬期、夏期、2度の渇水に見舞われました。夏期の渇水では最大30%の取水制限が実施され、取水制限期間は41日間にわたりました。この年も9月22日に関東沿岸を通過した台風17号により渇水状態が解消され、この時は東京都心でも日雨量250ミリ以上の記録的な大雨となりました。
2001年(平成13年グラフ3)の水不足は上記2回ほど深刻にはなりませんでしたが、8月10日から8月27日まで18日間、10%の取水制限が行われました。この時も8月22日に関東を通過した台風11号による大雨で渇水状態が解消しました。
そして11年ぶりに取水制限が実施されたのが2012年(平成24年グラフ4)です。この年は7月にはほぼ夏期満水の状態が続き、渇水の心配はありませんでしたが、8月に入ってからの猛暑と少雨により、ほぼ1か月間貯水量は減り続け、9月11日から10月3日まで10%の取水制限が行われました。しかし、9月30日に上陸した台風17号により渇水状態は解消しました。
そして3年前の2013年(平成25年グラフ5)にも取水制限がありました。この年は6月後半~7月上旬にかけて毎日のように雷雨があったため、この期間はほぼ横ばいで推移したものの、7月6日の梅雨明け猛暑とともに再び低下し、7月24日から10%の取水制限が始まりました。その後、8月初めにかけては連日のように雷雨があり、貯水量は盛り返したものの再度低下し、結局渇水状態が解消したのは9月16日に愛知県に上陸した台風18号がもたらした大雨でした。
このように近年の水不足の年を調べてみると、不安定降水(雷雨)でときおり貯水量は回復するものの、渇水状態に終止符を打ったのはいずれの年も台風による大雨ということが言えるかと思います。台風は大雨による災害をもたらす反面、とても貴重な水資源を大量にもたらしてくれる表裏一体の関係にあることがわかります。
ところでこの台風ですが、今年はまだ一つも発生していません。
台風1号は一体いつ発生?
発生が遅いと時々話題にもなっている台風1号ですが、きょう現在、まだ発生していません。
1951年の統計開始以来、台風1号の遅い発生日時は以下の通りです。
1位1998年7月09日
2位1973年7月02日
3位1983年6月25日
4位ことし(6月11日現在、発生なし)
5位1952年6月10日
6位1984年6月09日
今年はすでに4番目に遅い記録となっています。
(台風の進路はデジタル台風より使用させて頂きました。)