Yahoo!ニュース

【速報】#埼玉県虐待禁止条例 10万署名の子育て当事者が #自民党 #こども家庭庁 に要望したこと

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
10万署名を集め埼玉県自民党の暴走を止めた子育て当事者が願うことは?(筆者撮影)

子どもだけでの登下校禁止、お留守番禁止、公園遊びも禁止。

埼玉県自民党県議団が、一方的に強行採決しようとした埼玉県児童虐待禁止条例案が、本日10月13日、埼玉県議会で撤回されました。

埼玉県どころか日本中の子育てするママパパや、祖父母などのご家族、学童や子ども食堂などの支援団体も不安に陥れた、今回の埼玉県条例騒動。

この間、私も10万人以上の署名を集め、埼玉県自民党県議団の暴走をストップした、署名呼びかけ人の野沢さんをサポートし、こども家庭庁への要望書、そして自民党埼玉県議団への要望書を共に考えてきました。

このような #子育て罰 を繰り返さないために、政治家が暴走せず、子どもや家族が安心して生きられる埼玉県・日本になるために、野沢さんは、自民党埼玉県議団、こども家庭庁に何を要望したのでしょうか?

そのポイントは次の3点にまとめられます。

・埼玉県議団だけでなく、日本中の自治体や議会での #再発防止 のためには、 #こども基本法 を全自治体首長・議会で学んでほしい。

・こども基本法にもとづき、こども・子育て当事者の意見表明・参画と意見の反映を実現してほしい。

・子育てを社会で応援してほしい。

以下、自民党埼玉県議団への「10の要望事項」を紹介します。

前文

埼玉県議会において、児童虐待禁止条例改正案(以下、条例案)が提出され、多くの懸念が示された結果、埼玉県自由民主党県議団は条例案を取り下げました。

 今回、子育て支援策の拡充もなしに、県民による親子の通報を一方的に義務付けようとし、埼玉県にとどまらず、全国の多くのこどもや子育て当事者に強い不安を与えました。

また埼玉県自由民主党県議団は条例案について、パブリックコメントを実施したと議会で説明していましたが、その内容は今もあきらかにされていません。

よって、以下の通り要望いたします。

10の要望事項

1.自治体、議会における条例案、こども計画、こども政策をはじめ、こども自身に関わることについては、こども基本法に則り、こども若者、子育て当事者等の意見表明・参画および意見の尊重の手続きを明確化し、その手続きを実現くださるようお願い申し上げます。

2.こども基本法を学ぶ研修を、こども家庭庁のご協力をいただき、埼玉県自民党県議団で実施いただきたくお願い申し上げます。

登下校や公園遊び、おつかい等は、子育て家族にとっても、こども自身の成長にとっても大切な経験です。こども基本法では、こども自身の主体性を尊重し、こどもの権利と最善の利益を実現する理念が重要であることが示されております。この理念について埼玉県自民党県議団の全ての議員のみなさまがご理解を深めていただきますようお願い申し上げます。こども自らが育つ権利を奪うような社会環境を作らぬよう、お願い申し上げます。

3.こども若者、子育て当事者等の意見表明・参画および意見の尊重の手続きに際しては、公正かつ透明性の高い公聴会やパブリックコメントを実施し、その内容や結果については原則公開いただきますようお願い申し上げます。また各会派との議論を深め合意形成ができるような議会運営をお願い申し上げます。

4.こども自身の安全安心の確保のために、社会全体でこどもを守る環境整備をお願い申し上げます。子育て支援の充実、外遊び環境の安全確保や、虐待が起こらないようにしていく仕組みこそが必要です。こども家庭庁はじめ関係省庁、全自治体・議会でのお取組みをお願い申し上げます。

5.現状の学童保育・保育園の待機児童を解消し、時間の拡充をお願い申し上げます。特に埼玉県内の父母運営の学童しか存在しない地域に、公設学童保育を拡充し、また、その際支援員の待遇改善及びこども基本法の理解を深めていただき、学童がこどもにとって、寄り添ってくれる大人がいる場所にしてください。また時間の拡充をすることにより、朝の学童や17時以降の学童などより共働き世帯が生活しやすいようなシステムを再考いただきますようお願い申し上げます。

6.学区域(こどもが歩いて行ける距離)にひとつ以上、適度な距離の大人(プレーワーカーなど)の見守りのあるプレーパーク、児童館などの遊び場・居場所の設置をお願い申し上げます。

7.各市町村にユースワーカーが常駐し、無料で利用できるユースセンターの設置をお願い申し上げます。現在、義務教育を終了した後の青年期への支援が不足しています。週に1度か2度専門家や医師が定期的にきて保険証を持たずとも相談ができるような施設があれば虐待など個人の抱えている問題も相談しやすいと考えます。ユースセンター等の若者の居場所設置への予算確保などのお取り組みをお願い申し上げます。

8.出産から青年期までの伴走型支援をお願い申し上げます。出産から約1ヶ月後、助産師や看護師による自宅訪問があります。その助産師や看護師らが、年代の垣根なくシームレスに寄り添えるシステム、また信頼関係を築き、何か問題が発生した際には関係各所の部署がすぐにつながれるような伴走型支援の仕組みづくりの再考をお願い申し上げます。

9.こどもの権利に関する条例を整備し、こどもが幸せに暮らすためのこどもの意見表明とその意見の尊重をお願い申し上げます。こどもの意見の尊重の重要性と具体的な方法を学び、こどもの声を聞く実践者(こどもアドボケイド)を養成する取り組みをお願い申し上げます。またこども会議の設置をお願い申し上げます。会議にはオンラインやチャット、手紙での参加など、幅広いこどもの意見が拾えるようなお取り組みをお願い申し上げます。

10.現実社会に根ざした条例とは何かを再考することをお願い申し上げます。社会は多様です。その中で現実からかけ離れた条例を提出することや、実態とずれた当事者像にならないようにお願い申し上げます。

多くの人が関わり社会を形成していることをくれぐれもお忘れのないよう、また、県民の代表であるということに驕ることなく県議としての職務を全うしていただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

※こども家庭庁への要望書は こちら からご覧いただけます。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

末冨芳の最近の記事