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【被害者救済】今国会で宗教2世支援立法を、与野党超党派で!#子どもの権利 #こども基本法 #児童虐待

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
写真提供:Chenge.org JAPAN

旧統一教会の被害者救済法の議論が進展しています。

いっぽうで、親の偏った信仰により苦しめられる宗教2世の支援立法については政府の取り組みは、まだこれから、という状況です。

こども政策・教育政策の研究者として、被害者救済がもっとも急がれるのは、自分自身になんの責任もないのに、親の偏った信仰により虐待や権利侵害に苦しむ子どもや若者であるはずだと考え、発信を続けてきました。

※朝日新聞,「毒親」の背景にあるもの 宗教2世の生きづらさ、議論すべき点とは,2022年8月19日(有料記事)

宗教2世の置き去りを懸念する報道もあります。

※Friday,旧統一教会 解散命令が出ても、置き去りにされる「宗教二世問題」,2022年10月26日

1.宗教2世は支援立法を求めている!今国会で成立を!

―7万人署名の応援が支える支援立法要望会見

―あらゆる相談から門前払いされてきた宗教2世

宗教2世は、支援立法を求めて活動してきました。

9月28日は7万人の署名を厚労省に提出しました。

宗教2世は、あらゆる相談から門前払いされるつらい経験をしてきた方々です。

日本テレビの取材に対し、当事者の高橋みゆきさん(仮名)は以下のように答えておられます。

※日テレNEWS,“宗教2世”法整備など求め7万人以上の署名を国に提出 「宗教組織が仕組んだ組織的な虐待」,2022年9月29日

「警察だとか児童相談所とか学校の先生に相談したけど、宗教の問題に対しては『家庭の中で、ちゃんと自力で解決してね』と門前払いされてきた子どもたちが、たくさんいます」

だからこそ宗教2世の願いは、国としてのルール作り=法整備で、当事者の相談を門前払いせず聞いてほしい、国として守ってほしいということなのです。

「この数十年間苦しんできた(宗教)2世たちの声が、ようやく社会に訴えられるようになりつつあるんですけど、家庭内という閉じられた環境を悪用した子どもに対する宗教活動の強制というのは、“統一教会”だけの問題ではありません。日本全体での仕組み作り、ルール作りは確実に必要だと思っています」

いまも、宗教2世の相談は、門前払いのままです。

一刻も早い立法が求められます。

2.10月6日通知(厚労省・法務省・文科省)だけでは自治体・児相・学校は動けない

実は政府も10月6日に厚労省・法務省・文科省が通知を出しています。

児童相談所、学校や法務省の人権相談において、宗教2世からの相談にも、他の虐待や権利侵害事例と同様に、対応するように、とのものです。

迅速な政府の対応は評価できます。

いっぽうで、自治体や児相などの現場の声は厳しいものです。

宗教2世に虐待等を加えるような保護者は、信仰・信念にもとづくゆがんだ価値観によって子どもたちに虐待・権利侵害を行っているため、育児疲れ等の理由による児童虐待と異なり、保護者にアプローチしても改善が期待できないのです。

それどころか、児相や学校が、子どもを守るために親にアプローチしても、たとえば「悪魔や敵対勢力の仕業だ」などととらえ、集団で抗議したり、児相や自治体に対し訴訟を起こしてくるリスクすらあるのです。

このような状況の中、法的効力のない通知だけでは、宗教2世の相談に対応したくてもできない。

法の裏付けや国の支援がないと、現実には宗教2世の相談支援は難しい、というものが私のヒアリングした関係者の「本音」でした。

このような状況だからこそ、宗教2世の支援立法が急がれるのです。

おわりに:こども政策は超党派で!

―与野党を挙げて宗教2世を守る国であれ

―こども基本法成立のレガシーを宗教2世にも

被害者救済立法と同様に、宗教2世支援立法の動きも野党先行で進展してきました。しかし自民党・公明党にも宗教2世の救済を真剣に考え、対話と行動を進めている国会議員もいます。

私自身は、与党に対しても野党に対しても「こども政策は超党派で、宗教2世支援も超党派で」というお願いをしてきました。

今年6月に成立した子どもの権利の国内法である、こども基本法では、与野党が国会で真剣に対話し、超党派で法を成立させてきた実績があるからです。

だからこそ私は信じているのです、宗教2世支援立法も与野党超党派での立法が可能であると。

宗教2世の問題が、自民・公明・立憲・維新の4党協議で「被害者本人だけでなく配偶者や『2世』と呼ばれる子供についても救済する必要があるとの認識でも一致」と報道されています。

※日テレNEWS,“統一教会”被害者救済 4党は配偶者や「2世」子供も救済で一致,2022年10月25日.

宗教2世の虐待・権利侵害の被害の深刻さについては、9月1日に立憲民主党のヒアリングを契機として、政治家にもひろく共有されることとなりました。

自民党の山田太郎議員・自見英子議員の主催するChildren First勉強会は、9月28日に宗教2世の当事者を招いて、被害の実態や必要な支援についてヒアリングを行っています。

公明党の高木陽介政調会長は、10月17日の衆議院予算委員会にて、宗教2世の苦しみについて岸田総理に質問し「きめ細かな対応が重要との認識を持って取り組みたい」との総理答弁を引き出しています。

※毎日新聞,岸田首相、旧統一教会の宗教2世に「きめ細かな対応が重要」,10月17日

このほかにも、水面下で宗教2世の声を聞き、虐待・権利侵害のための法整備や予算措置の重要性を認識している与野党の国会議員も増えています。

こども基本法成立のレガシーは、党派は違えども、子どもや若者のために、協力すべきときには立場を超えて、対話をし前進するという与野党の国会議員の信頼関係を結んだことです。

すでに、こどもまんなかの与野党の議員の足並みはそろっています。

いまこそ与野党をあげて宗教2世を守るべき時です。

国会で宗教2世支援立法を、与野党超党派で実現を。

当事者の願いでもあり、私だけでなく宗教2世の子どもや若者を心配するすべての国民の願いでもあります。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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