Yahoo!ニュース

【解説】こどもの日に知っておきたい子どもの権利 #こども基本法 できるとどうなる?

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
こども基本法のある日本は、子どもと進み、大人も愛し愛される日本に!

5月5日のこどもの日にあたり、子どもも、若者も、大人も知っておくべき、子どもの権利、こども基本法のポイントをまとめます。

※この記事は、小学校高学年以上の子ども若者にもわかるように、むずかしい法律の言葉などをあまり使わず、なるべくわかりやすくしています。

1.子どもの権利、どんな権利?

まず子どもの権利とは、どんな権利か説明していきます。

簡単に言えば、子どもの権利条約という国際条約に説明された、特に子どもにとって大切な権利のことを言います。

1989年に国連で世界中の国が賛成して作られ、日本も子どもの権利条約を守り実現する国になることを1994年に国会で決めました。

(条約を守り実現することを国会で決めることを、批准(ひじゅん)と言います。)

この中で特に重要とされているのが、4つの権利です。

〇生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。

〇子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考えます。

〇子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)

子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。

〇差別の禁止(差別のないこと)

すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。

※日本ユニセフ協会・「子どもの権利条約」4つの原則

「安全安心に成長する権利」

「もっとも良いことが実現される権利」

「意見を伝え参画する権利」

「差別されない権利」

と簡単に言い換えることもできますね。

そもそも権利とは、すべての人間が人間らしく生きるために、自分も相手や見知らぬ他人も、同じように大切な存在と認め合うための、世界共通のルールです。

いま成長している子どもたちが、子どもらしく生き、大人や友人たちと安心できる人間関係を持ち、幸せに生きるために、特に大切とされる権利が子どもの権利なのです。

大人たちは、子どもたちの権利を実現するために、子ども若者の意見も聞きながら、一緒に行動していくことが大切になります。

実は子どもの権利には、遊ぶ権利や、休む権利なども定められています。

離婚してしまった親を持つ子どものための権利。

ウクライナだけでなく世界中の紛争地域の子どもたちが守られるための権利。

貧しさのために親に売られてしまう子どもたちを守るための権利。

世界中の子どもたちのための権利が子どもの権利条約には定められているのです。

どんな権利があるのか詳しく知りたい人は、次のサイトが参考になります。

※日本ユニセフ協会の作った子どもの権利条約のポスター(なんと40もの子どもの権利があるのです!)

※セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「こどものケンリ・大人も子どもも知っておきたい話

あなたはどんな子どもの権利が大切だと思いますか?

2.日本で子どもの権利は大切にされていますか?

日本は1994年に国会で、子どもの権利条約を守ることを決めました。

しかし、みなさんは、子どもの権利が、日本で守られ実現されていると思いますか?

「安全安心に成長する権利」

子ども若者も安全に育っていますか?もちろん多くの子ども若者は親や、たくさんの大人たちに愛され、大切にされています。

しかし、虐待やいじめ、ちかん、性暴力、暴言、えこひいき、無視や体罰など、子どもに対してひどいことを平気でする大人だって日本には少なくありません。

「もっとも良いことが実現される権利」

子どもの最善の利益、もっとも良いこと、とは何でしょう?

それは安全安心で幸せに暮らせることです。

実は日本の子どもたちは、身体的健康は世界一なのに、自分自身の生活に満足している子どもが世界でも最低水準にあるなど「両極端な国」であることが、国際機関の調査からわかっています。

いじめの被害者は約17%、「すぐに友達ができる」と回答した子ども(15歳)も先進国で最低水準で少なく、子ども同士もお互いに安心できない関係ではないかと心配な状況があります。

※ユニセフ報告書「レポートカード16」・先進国の子どもの幸福度をランキング

・日本の子どもに関する結果(2020年9月15日公表)

「意見を伝え参画する権利」

様々な国の学校や教育のことも研究したり、仲間たちと学んできた私から見ると、日本は「大人が子ども若者の意見を聞かない国」のひとつです。

長年、子どもの権利の実現、こども基本法の制定に取り組んでこられた日本財団の調査でも、日本の18歳は「自分は大人だと思う」「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」が、とても低い国なのです。

大人も子どもも、自分が声をあげれば、誰かが聞いてくれ、社会を変えられる、と思っていないのではないでしょうか?

私自身も、「なまいきを言うな」「子どもはだまってろ」など、意見を伝えることすら難しい日本の大人たちの言葉に傷けられてきました。

そんな日本をやめたい、変えたいからこそ、大人になって、こども基本法を作るお手伝いをしているのです。

「差別されない権利」

障害を持つ子どもたちへのインクルーシブ教育、病気があるけれど医療器具を使えば学べる子どもたちへの支援、外国につながる子どもたちへの日本語教育などは、年々充実してきています(もちろん教育学の研究者としては十分ではない、とは思いますが、それでも多くの大人が一生懸命取り組んでいます)。

いっぽうで、貧困状態の子どもたちへの取り組みは、まだまだ進まず、「差別」と言わざるをえない状況があります。

日本は、教育格差が大きく、親が低所得であれば、学校の勉強がわかるようにすらしてもらえない子どもたちも、先進国の中ではかなり多い国であることがわかっています。

これは子ども自身の責任ではなく、子どもに関わる大人の責任です。

※ユニセフ報告書「レポートカード16」・先進国の子どもの幸福度をランキング

・日本の子どもに関する結果(2020年9月15日公表)

親が低所得であったり、病気や障害を持っていて十分に学べない子どもたち(ヤングケアラー)にこそ、たくさんの支援や丁寧にかかわってくれる学校の先生、様々な相談にのってくれる学校のソーシャルワーカーなどたくさんの大人が必要です。しかし日本政府も学校もこのような「差別」をなくすための取り組みをまだ実現できていません。

親が貧乏だから、病気だから仕方ない、これを読みながらつぶやいたあなたのその発想こそが「差別」です。

自分で自分自身を「差別」して、あきらめている子ども若者もいる日本です、私はそのことが悲しくて、くやしくてなりません。

それを見て見ぬふりをする政治家や公務員、学校の教員に、全体の奉仕者として働く資格はないとも思っています。

どの子も、安心して学び、やりたいことを見つけたり、信頼できる大人と相談しながら考えたり、友達と遊んだり、休んだりすることがあたりまえです。

そのあたりまえ、を実現するために、私はこれからも子どもたちを大切にする仲間とともに全力で頑張ります。

3.こども基本法、どんな法律?

ここまで見てきたように、子どもの権利条約を守り実現することを1994年に決めた日本ですが、約30年たった2022年の日本でも残念ながら子どもの権利は守られ実現されているとは言えない状況があります。

だからこそ、いま、日本では、子どもを大切にするすべての国会議員が、力を合わせて子どもの権利を日本の法律として実現しようとしているのです。

日本の法律にすれば、日本のすべての大人が子どもを大切にするルールになります。

また子ども若者が自分自身が、安全安心で、幸せに生きていく権利や、大人にも意見を言えそれを一緒に実現していく権利などを、国・自治体や、家族、学校や友達とも、進めていくことのできる日本になっていきます。

そのポイントは以下の通りです(法律の通り、こども、と書きます)。

・こどもが権利の主体として位置づけられています。

・こどもは18歳で区切られていません。「心身の発達の過程にある者」と、若者の権利も大切にする法律になっています。

・こどもには生きる権利、育つ権利、守られる権利、そして愛される権利があります。

・こどもが自分に関係するすべてのことや様々な社会活動に意見を述べ、参画する権利があります。

・大人も、こどもの最善の利益を優先して考え、こどもの意見を尊重することも決められています。

子どもの権利のうち特に重要な4つの権利が、しっかりと、こども基本法に決められているのです。

またこどもの年齢規定がなく、若者の権利も大切にされたり、愛される権利が規定されたり、子どもの意見の表明だけでなく、大人(特に国・自治体)も子どもの意見を尊重することがしっかり決められているなど、子どもの権利条約以上に充実した内容になっている部分もあります。

こども基本法を作るために、自由民主党・公明党(与党)も、立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、れいわ新選組など、主な政党の国会議員が一生懸命話し合ってきました。

子どもがワガママになるのでは、子どもの権利を利用する悪い大人が増えるのではと心配していた国会議員とも丁寧に対話してくださった、議員や関係者もいます。

政治には関心がない子ども若者も多いとされる日本ですが、このようなすばらしい政治家や大人たちがいる民主主義の国・日本を私は誇りに思います。

大人向けのこども基本法の説明は次の記事にまとめています。

※末冨芳「こども基本法、法案国会提出!30年越しで実現される子どもの権利の国内法の大きな大きな意義とは!?」(2022年4月8日)

おわりに.こども基本法がある日本は、子どもと進み、大人も愛し愛される日本に!

5月5日はこどもの日、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」日と祝日法に定められています。

2020年のこどもの日、一斉休校中の日本で、私は子どもの声を聴かない日本の政治に絶望していました。

2021年のこどもの日も、子どもが公園で遊ぶだけで怒鳴ったり、若者バッシングに明け暮れる日本の大人たちに失望していました。

その状況は続いてもいますが、少しずつ変わってもいます。

―コロナ禍の中でも、子どもたちの意見を聞き、子どもが楽しめる学校行事を工夫する学校もあります。

―校則も子どもの意見を聞いて、見直しをしようとする教育委員会・学校も増えており、それを文部科学省も応援しようとしています。

―乳幼児にマスクを強要しようとする愚かな政治家があらわれても、それに科学的な根拠をもって反論し、子どもを守る政治家ももっとたくさんあらわれました。

―公園で遊んだり、観光地で楽しんだり、修学旅行を満喫する子ども若者を、よかったねとやさしく楽しい気持ちで見守る大人も増えているのではないでしょうか。

2022年のこどもの日、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」ための法律である、こども基本法の制定に向けた進んでいる日本に、私は希望を見いだしています。

もちろん、こども基本法を作っただけでは、何も変わりません。

こども基本法に命を吹き込むのは、子どもであり、大人でもあります。

とくに今まで、日本は「大人が子ども若者の意見を聞かない国」だったからこそ、子どもの権利を学び、成長しなければならないのは大人たちのほうでしょう。

子どもの権利を学んだ子どもたちは、わがままになるどころか、子ども同士も大人とも意見を尊重しあったり、大人も愛し愛されることを大切に考えるようになります。

これは、基本的人権をほんとうの意味で学び、身に着けることができたということです。

この記事の最後に、三重県東員町の子どもの権利条例の前文を紹介します。

子どもの権利を学び、意見表明をした子どもたちが考えた前文を、大人が議会で議決した、子どもと大人で作りあげた、とても素晴らしい文章です(みんなといっぽずつ未来に向かっていく東員町子どもの権利条例・平成27(2015)年6月19日)。

私たちは「子ども全員が大切にされてほしい」、「子どもが安心できる場所があってほしい」、「子ども全員がやさしい笑顔とあたたかい笑顔がつくれるようになってほしい」など思っています。お互いの意見を尊重し合える事も大切です。私たちのほかにも、このようなことを思っている人はたくさんいると思います。

(中略)

町民一人ひとりが愛し愛されるように、もう一度自分を振り返ってみてはどうでしょう。

みんなが幸せに暮らせる町を創りあげましょう。

大人のみなさんは、基本的人権をほんとうの意味で学び、身に着けることができていますか?

自信がないな、全然できていないな、私もそうです。

だからこそ、子ども若者たちと学び考え、進むことを大切にしませんか?

こども基本法がある日本は、子どもも大人も、お互いの意見を尊重し、愛し愛される、幸せな国・社会にむけて、よりよい成長をしていける。

私はそのような希望をこども基本法に見いだしています。

きれいごとだと批判するのは簡単です。

そのようなみなさんこそ、大切にされ幸せになるべき方だとも思います。

私自身はこども基本法のある日本において、子ども若者たちとも、大人たちとも対話したり、声にならない声にも耳を澄ませながら、前に進んでいきたいと思います。

子どものみなさん、若者のみなさん、大人のみなさんも、尊重しあい、幸せに暮らせる日本に向けて、ともに進んでみませんか?

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

末冨芳の最近の記事