Yahoo!ニュース

ひとり親・ふたり親かわりなく困窮する子どもに平等な給付金を!#コロナで困窮する子どもたちを救おう

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
#コロナで困窮する子どもたちを救おう!署名サイトより、Change.org

いま開催されている国会(衆議院予算委員会)でも、ふたり親を含む困窮子育て世帯への緊急給付金をめぐる論戦が活発になっています。

こうした中で子どもの貧困対策の最前線で、子どもや困窮世帯の命を守るために活動してきた支援者・研究者たちも、署名キャンペーンを立ち上げました。

春の進学・新生活シーズンを前に、困窮世帯への支援が急がれる状況なのです。

#コロナで困窮する子どもたちを救おう(署名キャンペーンサイト)

この記事では、ひとり親・ふたり親困窮子育て世帯に平等な給付金を支給することの重要性を指摘します。

1.先進最悪水準のひとり親貧困の中で拡充されてきたシングルペアレント政策はやはり重要

―児童扶養手当・臨時特別給付金は基盤支援政策として重要

ひとり親の貧困率は、コロナ禍前の2018(平成30)年値でも47.7%(国民生活基礎調査)で、先進最悪水準でした。

ひとり親貧困の中で拡充されてきた児童手当や、就労支援制度などのシングルペアレント政策はやはり重要です。

これらのシングルペアレント(主に母子世帯)政策については、厚生労働省内閣府で確認できます。

支援政策の中でもっとも重要なのは、低所得世帯のひとり親限定の現金給付である児童扶養手当です。

児童扶養手当が、苦しい生活を下支えすることで、母子世帯の9割弱が就労し(これは戦先進国のシングルマザー就労率の中では最高水準)、最後のセーフティネットである生活保護に落ち込むことを予防してきた、すぐれた現金給付政策なのです。

コロナの中で就労が難しくなったことで、児童扶養手当を受給しているひとり親困窮世帯への、ひとり親世帯臨時特別給付金が支給されました。

2.いっぽうで支援政策が不足し追い詰められるふたり親困窮世帯

―ひとり親困窮世帯約33万に対しふたり親困窮世帯約140万世帯

―ボリュームゾーンを取り残す子どもの貧困対策

いっぽうで、ふたり親困窮世帯は児童手当以外に生活を下支えする支援政策がほとんどなく、非常に苦しい状態です

1月26日の記事でも指摘しましたが、困窮状態の子どものボリュームゾーンはふたり親世帯で生活しています。

平成30年度国民生活基礎調査の子育て世帯数と相対的貧困率から算定すると、ひとり親困窮世帯約33万、ふたり親困窮世帯約140万世帯、約170万の困窮子育て世帯が日本に存在することが分かっています。

1世帯の平均子ども数は約1.71人、つまりこれらの世帯に所属する子どもたちは、約290万人いると推定されます。

この事実は、研究者や支援団体、省庁関係者の間の公知の事実です。

ひとり親支援の中で発展してきた支援政策を、困窮ふたり親にも適用するべきであるという指摘が内閣府・子供の貧困対策に関する有識者会議でも複数の構成員から指摘されてきた状況がありました。

3.ひとり親ふたり親かかわりなく困窮する子どもに平等な支援を!

―食べ物、服も靴も買えない子育て困窮世帯

―3万円の臨時給付で子どもたちは前向きに春を迎えられる!

だからこそ、いま、ひとり親ふたり親かかわりなく困窮する子どもに平等な支援が必要なのです。

食べ物、服も、靴も買えない、電気ガス水道も止まっている、命や暮らしを支えるベーシックニーズと呼ばれる基本的生活条件すらおびやかされている状態を、「絶対的貧困」と言います。

支援制度の少なさでいえば、ふたり親困窮世帯のほうが「絶対的貧困」に落ち込みやすい可能性すらあります。

春の進学進級シーズンをなんとか子どもたちに迎えさせたくても、ふたり親だって働き口がなかったり、仕事もへっているのです。

現在国会提出されている「子どもの貧困」給付金法案のポイントは第1子5万円、第2子以降は1人あたり追加で3万円を、というものです。

5万円、3万円で何ができるのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、3万円・5万円の現金給付こそが、親子の気持ちを前向きにし、命や学びをつなぐための万能薬なのです。

公益財団法人あすのばは、1500人の低所得世帯の子ども若者、保護者への調査から、現金給付こそ万能薬であるという提言を公表しています。

公益財団法人あすのばホームページより
公益財団法人あすのばホームページより

その効果は、貧困の当事者の声があきらかにしています。

現金がいま給付されれば、子どもたちの気持ちが前むきになり、学力低下や不登校のリスクが低くなります。

親の虐待も予防でき、相談や支援につなぎやすくすることができます。

おわりに:菅総理、与野党の議員のみまさま

どうかひとり親・ふたり親かわりなく困窮する子どもに平等な給付金をお願いします!

最後に、この国の子どもの貧困対策を、議員や省庁のみなさんとともに進めてきた研究者として、そして子どもを持つ母でもある一国民としてお願いいたします。

ひとり親・ふたり親かわりなく困窮する子どもに平等な給付金を!

子どもたちはこの国の宝であり、未来そのものなのですから。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

末冨芳の最近の記事