Yahoo!ニュース

【がんばれ受験生】首都圏緊急事態宣言でも共通テストは通常実施を前提に【1/16・17外出自粛応援を】

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
大学入試センターホームページより

首都圏1都3県の知事が政府に緊急事態宣言を要請しました。

受験生やそのご家族は、今年の入試はどうなるのだろうと、不安を抱かれたかもしれません。

1.首都圏緊急事態宣言でも共通テストは通常実施を前提に

 私の現時点での結論から先に申しあげます。

 首都圏緊急事態宣言でも共通テストは通常実施の方向と判断しています。

 理由は2つあります。

(1)萩生田文部科学大臣と文部科学省は、緊急事態宣言でも共通テストは通常実施との方針を明確にしている。

(2)首都圏1都3県知事要請の中に、入試延期は含まれていない。

2.萩生田文部科学大臣、文科省ともに共通テストは「予定通り実施」

―政府をあげて共通テスト実施にむけた準備をしてきた

―個別試験は各大学の情報確認を

 文部科学省、大学入試センターは、共通テストは第1~第3日程まで設定し、新型コロナウイルスやインフルエンザ等に感染しても、受験機会が得られるよう異例の対応をとっています。

 また政府も新型コロナウイルス感染症対策分科会を開き、大学入学共通テストの感染防止対策などを協議して、共通テストにおける感染症対策のルールを作成してきました。

 つまり、政府をあげて、共通テスト実施にむけた準備を進めてきたのです。

 過去の災害時の経験にもとづき、共通テストを受験していれば、とくに国公立大学の個別試験が受けられない場合でも、救済措置が可能になるというメリットが、共通テスト実施にはあるためだと推測しています。

 また新型コロナウィルス感染者のための追試験の場合には、追試験合格者は大学の定員管理の対象外となるなど、救済措置についても8月時点から準備がされてきました(日本経済新聞・追試験合格者は規制対象外 大学入学定員、コロナ対応・2020年8月21日)。

 萩生田文部科学大臣は11月27日に「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令された場合でも、来年1月の大学入学共通テストは実施すべきだとの考えを示した。小中高校などの全国一斉休校も考えていないと」と閣議後記者会見で明言しています(読売新聞11月27日報道)。

 2020年12月18日の記者会見でも、萩生田文部科学大臣は、あらためて以下のように、大学共通テストは「予定通り実施」との方針を明言しています。

 来年1月16日から第1回の大学入学共通テストが始まります。既に受験生の皆さんのお手元には受験票が届いていることと思いますが、感染への不安や試験が予定通り実施されるのだろうかといった不安を抱えながらも勉強されている受験生もいるかもしれません。

 大学進学を目指し、共通テストを受験する予定の50万人以上の受験生の皆さんだけでなく、受験生を支えてきた保護者や指導されてきた高校の先生方などのこの日を迎えるまでの努力が無駄にならないよう、これまで申し上げてきた通りですね、試験は、予定通り実施したいと思います。

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年12月18日,文部科学省サイト)より

 各大学の個別試験については、それぞれの大学の判断で実施や延期が決められます。

 共通テストが終わった後に、志望校のサイトやSNSなどをチェックすることも大切です。

3.知事が大学入試延期を要請しないのは、大学・家計への巨額の損害賠償が発生するため!?

 知事の政府への要請文の全文が確認できませんが、報道からは大学入試延期は要請されていないと判断できます。

 もっとも大きな理由は、大学・家計への巨額の損害賠償が発生するためだと推測しています。

 9月入学騒動で日本教育学会試算が明らかにしたように、大学入試を延期して”大学だけ9月入学”にした場合、とくに私立大学が本来学生から納入されるはずであった2725億円(推計値・単年度)の授業料・入学料への損害賠償を政府が行う必要性があります。

 また、緊急事態宣言による試験日程の変更による追加コストは、政府要請が行われるとするならば、政府に補償責任があることになります。

 入学時期を遅らせることを余儀なくされる家計・受験生の側にも、入試延期により余分にかかる学習経費等の補償は必須になります。

 大学進学者はおよそ55万人、仮に春の緊急事態宣言時と同様に1人10万円の学習経費等補償が必要だとすれば、550億円の予算が必要になります。

 このような財政的な理由からも、緊急事態宣言にもとづき政府・知事から入試延期が要請される可能性は低いだろうという判断をしています。

 毎年の試験監督業務にあたるひとりの大学教員から見れば、大学入試はおしゃべりもなく、飲食も黙ってするルールであれば、飲食や通常の学校の授業と比較しても、感染症拡大のリスクが高い活動だとは想定することが難しいです。

 多くの受験生やそのご家族も、感染症予防に懸命にがんばっておられます。

 後述するように、大人の側が、受験生を応援する気持ちを持ち、共通テストの日の公共交通機関利用を控えれば、移動中の感染リスクも下げることは可能です。

4.共通テスト受験生のみなさんへ

―健康観察記録は記録持参が必須!

―換気対策として防寒具は多めに

 共通テスト受験生のみなさんへ、センター試験監督経験者として、例年通りの注意事項(健康管理、忘れ物や遅刻に注意)以外に、3つ気を付けておいたほうがいいことを伝えます。

(1)共通テスト受験に際しては健康観察記録を記録し、会場持参してください。

※1月8日付の大学入試センター理事長メッセージに下記の記述がありました。再度修正いたします。

 毎朝、自主検温等の健康観察を行い、その結果を「受験上の注意」に掲載している健康観察記録に記録し、試験会場へ持参してください。

(2)試験場の換気回数が多くなると思います。

  防寒具(座布団代わりになるものも含め)の多めの持参をおすすめします。

(3)具合が悪い場合には、ためらわず第二・第三日程の受験を

 とくに健康観察記録の推奨は例年にないルールになっています。

 受験生のみなさんは、すでに十分気を付けておられると思いますが、心配な場合には記録しておくことも重要でしょう。

 健康観察記録は、大学入試センター「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト受験上の注意」の最後から2ページ目に掲載されています。

受験生の活用が推奨されている健康観察記録
受験生の活用が推奨されている健康観察記録

 また当日に具合が悪い場合には、自分自身や同じ試験会場の受験生のために、第二日程(1月30・31日)・第三日程(2月13・14日)の受験をためらわないでください。

 第二日程、第三日程の受験方法は、大学入試センター「令和3年度試験・受験上の注意」p.16に記載されています。

5.日本社会の大人のみなさんへお願い

―受験シーズンは外出自粛で受験生を応援しませんか?

―1月16・17日は共通テストで移動しなければならない受験生・監督官が多くなります

 最後に日本社会の大人のみなさんへお願いです。

 読者のみなさんにも、高校受験や大学受験などで、不安だったり緊張した経験があると思います。

 受験生やその家族の不安や緊張が理解できるならば、これからの受験シーズンはできる範囲でよいので、外出自粛で受験生を応援しませんか?

 1月16・17日は共通テストで移動しなければならない受験生・監督官が多くなります。

 できる範囲でよいので、受験生の応援の気持ちをもって、ステイホームや移動時間にお気をつけくださると、受験生や監督官も安心して移動できます。

 とくに移動が多いと予測されるのは以下の時間帯です。

1月16日・17日の朝の8~9時

1月16日・夕方の18時10分~19時30分

 受験者数の多い共通テスト英語が終了し移動する時間帯は、土曜夕方で人出も多くなりがちな時間帯となります。

 この時間帯だけでも、電車・バス利用などを避けていただけると、受験生・監督官もみなさんもお互いに感染リスクを下げることができます。

 国公立大学の二次試験実施日程である2月25日-26日も、やはり朝夕の時間帯は受験生の移動が多くなりますので、応援ステイホームを心掛けていただけると、受験生が挑戦しやすい環境を社会で作ることができるでしょう。

 また各地域の高校入試が集中する日程については、都道府県が外出自粛を呼びかけるなどの応援も必要かもしれません。

 いずれにせよ、共通テストは予定通り実施を前提に、受験生のみなさんは準備をすすめることをおすすめします。

 そしてウィズコロナの冬だからこそ、社会全体で受験生を応援しませんか?

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

末冨芳の最近の記事