会社の七五三問題を解決する【定着と活躍】重視の人事研修・現場間連携の必要性

(写真:アフロ)

こんにちは。アクシス株式会社 代表・転職エージェントの末永です。

中途の人材採用支援をしつつ、月20万人以上の読者を持つ「すべらない転職」というメディアを運営している中で、Yahoo!ニュース上では2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。

「大嘗宮の儀」が終了した本日11月15日といえば、「七五三」です。国内行事が続きますね。

週末は、家族でお参りされるご家庭も多いのではないでしょうか。

14日夜から行われていた、新しく即位した天皇が一代に一度だけ行う重要な祭祀(さいし)「大嘗祭(だいじょうさい)」の中心となる「大嘗宮の儀」は、15日午前3時15分ごろに終了した。

出典:一代に一度の祭祀…「大嘗宮の儀」が終了

毎年11月15日は七五三です。

 最近では、11月15日前後の週末や各ご家庭の都合の良い日にお参りや記念撮影をする場合が多くなっています。当日に限らず、10月から11月にかけて、七五三の着物を身につけたお子さんを見かけるのはこのためなんですね。

出典:11月15日は七五三 歳ごとに違う儀式の意味とは

さて、今回は、「七五三」になぞらえた、「七五三問題」についての話です。

みなさん、「七五三問題」をご存知でしょうか?

「なんとなく”七五三”そのものではないのだろう」と想像された方、鋭いですね。

「早期離職」に関するワードです。「中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が3年以内に新卒入社先を早期離職する問題」をもじっています。

「七五三」になぞらえて、なんとも数値がきれいに並んでいますよね(笑)

新入社員にも企業にもデメリットの大きい1年以内転職

転職エージェントを生業とする中で、企業側ではなくビジネスパーソンの視点に立ってみれば、「3年で転職」というのはキャリア形成に大変有効な年数であるのでそもそも3年以内に離職することを「早期離職問題」と捉えるか否かについては正直議論の余地があるものの、

「1年以内の転職」はキャリアアップを目指す新入社員にとってもデメリットとなりやすいと思います。

実際転職するとなっても「継続力がない」「自分の意志決定を正解にする意欲のない他責の人だ」などのネガティブな烙印を押されてしまう可能性が高いからです。

そのような状況にもかかわらず、厚生労働省の調査によると、2018年卒業の大学生の1年以内に転職される方は11.5%。新卒10人のうち1人が辞めてしまうという状況です。

では、企業側にとってみたらどうでしょうか?

私自身、日頃転職者の方だけでなく様々な企業の採用や組織設計のお手伝いをする中で、「人材不足」は非常に多くの企業で抱えている問題だと痛感しています。

実際、2020年3月卒業予定の大学生に対する求人倍率は1.83倍で、中小企業に限れば8.62倍というように未だ人材難が深刻です。

求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒))
求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒))

そんな中で採用した新入社員が1年以内に辞めてしまったら、大きな痛手ですよね。

採用・入社後の定着・活躍に目を向けられていない企業の新人研修

しかし、日頃様々な企業の人事担当者と関わらせていただく中で、意外と採用・入社後の定着・活躍に目を向けられていない企業は多いように感じています。

この記事をご覧になっている企業の人事担当者は「当社では研修や懇親会をやっているしバッチリだ!」と感じられるかもしれません。

しかし、本当にそうでしょうか?

研修が行われている企業の中にも、人事主導の新人研修には”名刺交換の仕方”などの杓子定規系のものに留まってしまっていたり、さらには新入社員を楽しませることが目的のコンテンツの座学研修や懇親会になってしまっていたりということがほとんどではないかと思います。

研修中は同期同士の繋がりを深めることができ、一見有効に働いているように感じるかもしれません。

しかし現場配属後の一人一人の新入社員にとってその後の会社人生のリアルは、現場での人間関係や実務です。

そこでいざ現場配属・実務に移ったときの「定着・活躍」に着目した際、上記のような人事主導の研修がデメリットとして働いてしまう場合も考えられるのではないでしょうか?

入社後ギャップならぬ配属後ギャップ

デメリットとは正しく、「ギャップに苦しむ新入社員が出てきてしまうこと」です。

「研修中の楽しさと実際の仕事の厳しさ」や「理論と実践」などのギャップに戸惑ったり、苦痛を感じたりしてしまう、というケースです。

新入社員にとって、5月は間違いなく最初の山場です。これには確たる理由があります。まず、余程の大企業や新人研修に力を入れている勤め先でない場合は、1ヶ月間が新人研修の期間となっています。4月末には新入社員への研修は終わり、新入社員の配属先をどうするか、人事部のほうで検討していくということです。

出典:新入社員が一番つらいと感じる時期・辞めたい場合・辛い理由

新入社員の消費者感覚を加速させる”もてはやし”研修

この入社直後と配属後のギャップの拡大は加速傾向にあると考えています。

時代として、先ほども述べたように、「就活生が売り手市場」です。

そのため、採用場面において不必要なまでに内定者や新入社員側がもてはやされてしまうということが起こります。

この流れが新人研修の際にもそのまま続き、新入社員の入社後の定着・活躍という目的とズレた内容になってしまうという事も多いのではないかと感じています。

このような研修を行ってしまうと、新入社員の「消費者感覚」が抜けないという問題があるのではないでしょうか

実際に多くの業界・企業・職種の中途採用支援をしていると様々な仕事について触れる機会がありますが、仕事とはどのような仕事であれ、一定の泥臭さや大変なことの方が多いです。

誰かがやりたくないことややれないことを代わりにした対価としてお金をいただくのですから、辛いことがあって当然です。

この感覚や背景を認識しないままに、現場配属後、初めて急激に体感することになるのです。

それゆえに新入社員は入社時と配属後のギャップに苦しむことになるのだと思います。

そしてそれを見た現場の管理職の方は、仕事の本質が見えていない新入社員を見て、「甘い」と苛立ちを感じ、より強く当たってしまうなどして、人間関係や信頼関係が築けなかったり、現場での教育に苦しむという悪循環に陥ってしまうのではないでしょうか。

ギャップを埋める!仕事の本質を伝える研修

では、このギャップを埋めるためにはどうしたらいいのでしょうか?

先ほど述べた”もてはやし”研修を止め、仕事の本質を伝える研修をするということです。

弊社の新卒社員や長期インターン生も入社当初は先ほど述べたような消費者視点の強い場合がほとんどです。

弊社は小規模企業・ベンチャー企業で一人一人に向き合うことのできるフェイズなので、仕事の本質について伝える面談に多くの時間を費やすということをしています。

しかし会社が大きくなればなるほどそうはいきませんし、新入社員を担当する直属の上司が「仕事の本質」について言語化できていなかったり、新人に教えてあげられない場合も多いのではないでしょうか。

そこでせっかく一括採用しているのであれば、個々の現場の上司に任せるのではなく、人事サイドの研修として「仕事の本質」について教えた方が効率的ではないかと思います。

ギャップを埋める!人事・現場間の情報連携

さらにその上で、「人事・現場間の連携」を行っていくことも、新入社員の配属後のギャップを減らすのに役立つと思います。

これは言葉通り、採用から配属までの間に最も新入社員と関わる人事部と、配属後に関わっていく現場の部署の間で連携をとっていくことなのですが、何の連携をとるのでしょうか?

それは「新入社員1人1人の情報」です。

採用面接時から新入社員自身が語っていた志望動機や過去の原体験などを現場管理職や先輩社員に共有し、「どのような想いでこの会社で働こうと思ったのか」を現場側に共通認識を持ってもらうことが重要ではないかと思います。

大体、多くの企業は新卒の採用面接・就活時に学生に対して「君はどうなりたいの?」「キャリアビジョンは?」と質問攻めにする癖に、いざ採用・現場配属した途端、「会社の方針に沿っていいからやれ」に切り替わるというのは、冷静に会社を1人の人間と例えてみると、ある意味精神病質的というかおかしいと思うのです。

ご自身が上司として部下を持っている方は想像しやすいと思うのですが、「この新人はやる気があるのだろうか」「何を思ってこの会社に来ているんだろうか」「やる気がないように感じるな」と憤りをおぼえた経験はないでしょうか。

しかし新入社員としても、特に大企業の場合、配属は希望通りにならない事の方が多いので、「最初にやりたい仕事ではなかった」「なんのために働いているのかわからない」などと苦痛を感じている場合ももちろん考えられます。

そこで、人事部の方ができるのは、新入社員の入社時の想いや経緯を現場の直属の上司に共有することではないかと思います。

そして現場の上司に、新入社員1人1人に向き合ってもらい、彼らの入社時のビジョンや意欲と現場の仕事の紐付けをしてもらうよう働きかけることが重要であると考えています。

私自身、新卒時はリクルートエージェント(現リクルートキャリア)に入社しましたが、大企業であるもののこの連携がしっかりと行われており、配属された現場のマネージャーが私の志望動機やキャリアビジョンを最初から把握してくれており、配属部署の仕事内容との紐付けをしてくれ、その後の運用としても「君は○○を目指してうちの会社に入社して手段として今この仕事をしているのに、どうしてこの仕事に向き合えていないの?」というようなフィードバックをしてくれており、スムーズに仕事の意味付けができ、納得感を持って働く事ができました。

「七五三問題」を解決するためには現場の社員まで巻き込んでいくことが必要ですが、そこでキーとなるのはやはり採用時から新人と関わっている人事部の方の巻き込み力です。

「連携」は実際のところ面倒な事が多くコンフリクトもあるかと思いますが、自らの採用努力を報われるものにするためにも、配属後の定着・活躍のための「連携」と思えば、捉え方も変わってくるのではないでしょうか。