結果を出すのが先か、時短を達成するのが先か、悩む若者になんと言えばよいのか〜今はトレードオフの時代〜

一体どっちやねん!(写真:アフロ)

■世の中は矛盾だらけ。若者は矛盾への鬱憤がたまっている

言うまでもなく世の中は矛盾だらけです。会社も職場ももちろん矛盾だらけです。上司から降りてくる指示を見ても、さまざまな矛盾を感じる若者は多いでしょう。

少し前に、サイボウズの広告のコピーがネットで大変話題になりました。曰く、「結果出せおじさんと、早く帰れおじさん……ふぅ(ため息)」「ノー残業、楽勝!予算達成しなくていいならね」など。「一体、どっちをすればいいと言うのか」「明らかに指示が矛盾してるじゃないか!」などのコピーが、日頃「数字も、時短も」と要求され鬱憤がたまっていた若者たちの共感を呼び、拡散につながったのだと思います。

■「矛盾を両立させろ」と言われ続けてきた中高年たち

一方、中高年世代の人々は、この若者の感覚に違和感を覚える人もいるのではないでしょうか。我々世代は、「結果を出すこと」と「早く帰ること」のように、一見すると矛盾に見えるもの同士を「両立させろ」とずっと言われ続けてきたため、世の中はそんなものだと思っています。

我々の世代の古典的ビジネス書『ビジョナリー・カンパニー』にも、『「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かす』という言葉が出てきます。偉大な会社は、変化か安定か、低コストか高品質かといったような、相反する両極端を二者択一ではなく、両方を同時に実現させようとするという意味です。一時期、某元都知事が繰り返し使っていた、ヘーゲル哲学の「アウフヘーベン」という言葉もありました。

対立するものを、どちらかを取るのではなく、なんとか両立させるアイデアを考えるということです。昼食にカレーかうどんのどちらにしようと考えて、カレーうどんにする、というようなものです。オッサンは、矛盾慣れしているのです。

■矛盾を両立できたのは、市場の成長という背景があったから

さて、この違いを、中高年世代は辛抱強い、若者はダメと考えてはいけないと思います。というのも、中高年世代が矛盾になんとか対処することができたのは、戦後の高度成長からバブル景気までの、すべての矛盾を飲み込んでくれる市場の成長という背景があってのものだからです。「二兎を追うもの一兎も得ず」ではなく、二兎を追っているうちに市場が成長していって両方とも結局満たせてしまうようなことがあって、矛盾を解決しなくても良かったのです。

もちろん、本当の意味での「ANDの才能」「アウフヘーベン」による矛盾の解決をしてきた素晴らしい中高年世代の人々もたくさんいたと思うのですが、実際にはほとんどの場合、矛盾を解決しないまま、厳しい二者択一としないまま、許されてきたにすぎないのではないでしょうか。むしろ、そういう中高年世代は、日本が成熟化していくに従って、今度は二者択一の厳しさにさらされているわけですが、結局それを若者に丸投げすることで、問題から逃げています。いわゆる「働き方改革」で生じているさまざまな問題などはその典型例でしょう。

■これからは「トレードオフ」の時代。何かを犠牲にする勇気のほうが難しい

今でも、「ANDの思想」や「アウフヘーベン」が実現できれば、それに越したことはありません。素晴らしいことだと思います。しかし、環境は変わりました。今は、逆に、両立しがたい、矛盾する選択肢があった場合に、どちらかを捨てて、どちらかを取るという「トレードオフ」、つまり、何かを実現するために、何かを犠牲にする、捨てるという二者択一の勇気を持つことのほうが難しいこと、チャレンジしなくてはならないことに変化したのではないでしょうか。

それをうまくできているのはむしろ若者です。家庭と仕事をうまくやっていくために、飲みニケーションを捨て、伸びない給与で生活を支えるために物欲を捨て、と、オッサン達がいろいろ捨てられずどんどん追い詰められていく中、軽やかに自分の人生の目的を達成しています。上司として部下を持つオッサン達は、昔の感覚のままで「ANDの思想」だとか言っていないで、有限な若者の時間から、何をしなくてよくさせてあげるか、何を取り去ってあげることができるかを考えてあげるべきだと思います。

OCEANSにて、中高年の皆様向けに、20代を中心とした若手を理解するための記事を連載しています。よろしければ、こちらもご覧ください。