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近づいてはいけない「コミュニティ・クラッシャー」。ゆがんだ承認欲求が、ウソの陰口でチームを壊す

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
もっともらしいウソが、一番タチが悪いことを、奴らは知っている(写真:beauty_box/イメージマート)

■コミュニティ・クラッシャーとは

大学のクラブやサークルで様々な人と恋愛を繰り広げ、人間関係を壊してしまう人のことを「サークル・クラッシャー」あるいは「コミュニティ・クラッシャー」(以下クラッシャー)と呼ぶそうです。こと恋愛に限らずとも、所属するコミュニティを崩壊の危機にさらしてしまう人がいるものです。

私も直接、間接にいろいろなケースを聞いています。ママ友グループや町内会、職場など現場は様々ですが、1人の人が意識的か無意識的かによらず、コミュニティを徐々に壊していくのを聞くと身の毛がよだちます。今回は、その見分け方と対処方法について考えてみたいと思います。

■人の「信頼」や「絆」を毀損する言動を繰り返す

クラッシャーがどのようにコミュニティを壊すかについては、様々な方法がありますが、主に以下の5つのことを行っているようです。

1つめは「リーダーや主要メンバーの陰口を言うこと」。最も典型的な例がこれで、その場にいない人の悪口や陰口を、それはもうあることないことボロクソに言うことで、コミュニティにおけるその人の信頼を毀損しようとする行為です。

もちろん心ある人は「そんな風には見えないけどなあ」と思いながらも、「火のないところに煙は出ない」と徐々に蝕まれていき、「まあ本当かどうかわからないけど、本当だったら被害を受けるのだから遠ざかっておこう」というようになり、対象者を孤立させます。せっかくあるコミュニティ内の絆を壊していくわけです。

2つめは「ウソをつくこと」。平気でもっともらしいウソをつくのも、クラッシャーの特徴です。あまりに平気でウソをつくために、聞いた人は「そうなんだ」と思ってしまい、逆に本当のことを言っている人がウソつきに見えてきます。

「ウソも百回繰り返せば真実になる」ではありませんが、ふつうのやさしい神経の人だと、完全なウソをそんなに繰り返すはずがないと思い、「そこまで言うなら本当なんだろう」となります。ウソを真実化することで、本当のことを言っている人々をウソつきに変えていき、これまた信頼関係を崩していくわけです。

■重要人物には徹底的に媚び、弱い人を子分化する

3つめは「重要人物に媚びること」。なぜクラッシャー自身がコミュニティから排斥されないかというと、押さえるところを押さえているからです。コミュニティ内の重要人物にだけは、とことん媚びて信頼を得ておくのです。

コミュニティの重要人物は様々な人とネットワークを結んでいるので、一つひとつのつながりをそれほどきちんと吟味することができない場合があります。本当ならクラッシャーの悪意を嗅ぎ取って、ビシッと関係を断ち切って欲しいところですが、少ししか接点のないクラッシャーに瞬間最大風速で目一杯媚びられると「まあちょっと変な人だけど、悪い人ではなさそう」くらいのイメージになります。

一度そう思ってしまうと、重要人物は懐の広い鷹揚な人も多いので、クラッシャーが言動を問題視されたときにも「そんな悪気はないんじゃないかな。何か誤解でもあったんでしょう」などと助け舟を出してしまいます。そしてクラッシャーは生き延びます。

4つめは「群れを作ること」。コミュニティにおいて数は力です。自分を支援してくれる人が多ければ、大きな声が出せるようになります。弱気な子分気質の人を見つけると、「私はあの人とツーカーだ」といったように重要人物との偽のリレーションを使ったり、モノを分け与えたりしてメリットをほのめかすことで、その人を子分化していきます。

ウソを言ったり陰口を叩いたりするたびに、子分たちに「そうだよね?」とプレッシャーをかけ、「は、はい」と言わせて抱え込みます。多くの「は、はい」を集めれば、意見を言うときに「私だけじゃなくて、みんなが言っている」と押し切ることができます。まともな人でも「みんな言ってるなら、本当にそうなんだ」と巻き込まれてしまいます。

■感情的な振る舞いを見せつけ、自分を安全地帯に置く

5つめは「アンタッチャブルな雰囲気を作ること」。クラッシャーがそういうことをいろいろしても、所詮は「ウソの固まり」なわけですから、まともな場で冷静に理性的に裁かれれば、すぐにボロが出ます。

そこでクラッシャーは激しく怒ったり不機嫌になったり、無視したりと、感情的な振る舞いを要所要所で見せつけ、「あの人に何か言うと怖い」というムードを作ります。触れてはいけない(アンタッチャブル)と思わせることで、自分を安全地帯に置くわけです。

ここまでくると、まともな人は「なんかあの人の言っていることはおかしいなあ」と思っていても、それをわざわざ指摘して反撃を受けるのが馬鹿らしくなり、コミュニティから距離を置くようになります。結局、何が本当で何がウソなのか、誰が正義で誰が悪いのか(本当はクラッシャーがウソで悪いのですが)などの、コミュニティに関するすべてのことがどうでもよくなっていくわけです。

クラッシャーたちがなぜこれまで述べたような意味不明の行動を取るのかと言えば、ゆがんだ承認欲求が背景にあると考えます。真実のルールにおいては、コミュニティ内でなかなか這い上がれずリスペクトを勝ち得ないとき、クラッシャーたちは誰かを非合理に引きずりおろして下に見ることで、疑似的に承認欲求を満たそうとします。

ですから、クラッシャーから逃れるためには、まず「はいはい、あなたはスゴイですね」と軽くあしらっておけばよいとも言えます。「左様、私はすごいのである」と心の中で思うはずですが、そこで「こいつを子分にしよう」と思われてはなりません。

ちょっとホメた後は猛ダッシュで逃げて、間違っても「あいつは自分の味方(子分)」と思われてはいけません。クラッシャーに加担することになってしまいます。これは消極的な逃れ方といえるでしょう。

■最終的には勇気を持って対峙するしか方法はない

一方で、逃げているだけでは、そのうちクラッシャーにコミュニティを壊されてしまうだけです。自分にとってそのコミュニティが重要なものである場合は、もう覚悟を決めてクラッシャーと対決するしかありません。

どうすればよいかは、実は簡単です。クラッシャーの言っていることは理不尽なことが多いので、事実をできる限りたくさん集め、重要人物を含んだたくさんの人がいる場で、きちんと糾弾すればよいのです。

「それができたら、わけないよ」という声が聞こえてきそうですが、本当にそのコミュニティが重要であれば、そうするしかありません。クラッシャーは、コミュニティ維持に対するフリーライダー(ただ乗りの人)の心のすき間に乗じて生息する魔物なのです。

本当はコミュニティの各人が責任を持って、一つひとつの事実を確認していくだけで、クラッシャーの言動を無化することができます。しかし多くのコミュニティ(特に大学サークルやママ友などのゆるい組織)は、そこまでやるコミットメントがないので、いとも簡単に壊れていくのです。

コミュニティ・クラッシャーは利己的な欲望(承認欲求)のために、コミュニティという人々の共有財産、居心地の良い場所を壊す罪悪な人です。自分がそうならないことはもちろん、そういう人を見つけたら、逃げたりスルーしたり、無関心になったりすることなく、勇気を持って対峙しましょう。かく言う自分も、なかなかできないものですが……。

キャリコネニュースより転載・改訂

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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