■はじめに

 本日、2度目の緊急事態宣言が発令されました。

 国民生活に計り知れない深刻な影響が生じますので、改めて緊急事態宣言の法的な根拠と仕組みを確認しておきたいと思います。

■新型コロナに対する対応と緊急事態宣言

A.対策本部の設置

 日本で初の新型コロナ患者が確認されたのが昨年1月16日で、令和2年1月30日、政府はただちに〈新型コロナウイルス感染症対策本部〉を新型インフルエンザ等対策特別措置法第15条1項にもとづいて設置しました(以下、条文は特措法の条文)。政府対策本部(長は総理大臣)は、政府行動計画に基づいて基本的な対処の方針を定めます(18条1項)

  • この特措法は平成24年に公布された法律であり、新型インフルエンザ等が全国的にまん延した場合を想定して対策の実施に関する計画、発生時の措置、緊急事態措置などについて特別の規定を設けた法律です(1条)。

 その後、3月13日に特措法が改正され、新型コロナ感染症がこの法律の「新型インフルエンザ」とみなされ、同法が新型コロナに対しても適用可能となりました。このときから具体的に国の新型コロナ対策が動き出しました。

B.都道府県の対応(緊急事態宣言期間外)

 政府に対策本部が設置された場合、都道府県は直ちに知事を長とする都道府県対策本部を設置し(22条)、政府の対策本部と緊密に連携します。

 この段階で知事ができることの中でとくに住民に対する措置としては、次の点が重要です。

 都道府県対策知事は、新型コロナ対策を「的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し」、対策の実施に関し必要な協力の要請(お願い)をすることができます(24条9項)。

  • これは、たとえば手洗いやうがいなどの一般的な感染対策の広報活動、これについてのボランティア団体への要請、また、学校や社会福祉施設等でのイベントの延期や制限、一般住民への外出自粛などについて要請することなどです。

C.緊急事態宣言が発出された後

―緊急事態宣言とは―

 新型コロナの全国的かつ急速なまん延によって、国民生活および国民経済に重大な影響が生じるおそれがある場合に、(1)緊急事態の概要を示し、(2)緊急事態として実施すべき緊急措置および期間(2年までで、延長は1年)、(2)実施すべき区域を限定して、公示します。これが〈緊急事態宣言〉です(32条)。

 この宣言によって国および都道府県等は具体的な緊急事態措置を講じることが可能となります。

―緊急事態宣言にいたるまでの手順―

  1. 厚労省等によって情報収集がなされ、政府対策本部長に報告
  2. 政府対策本部長は、専門家会議に諮問
  3. 専門家会議によって「緊急事態」に該当するとの判断があった場合には、政府対策本部長は緊急事態宣言を発する。

―緊急事態宣言下で知事ができること(まん延防止についての措置(45条)―

(1)住民に対する不要不急の外出自粛の要請(1項)

 住民に対して一定期間、区域を限って、病院への通院や通学、食料の買い出し、職場への通勤などの生活の維持に必要な場合を除いてみだりに外出しないこと(不要不急の外出自粛)や、その他新型コロナの感染の防止に必要な協力を要請することができます。

 なお、これは法的強制力のない行政指導であって、罰則はありません。また、上記の24条9項による外出自粛要請と基本的には変わりはありません。

(2)学校や興行場等の使用制限等の要請および指示(2項・3項)

 当該施設の使用制限や停止、またはイベント等の開催制限や停止、営業自粛などの要請・指示を、施設の管理者や主催者に対して行うことができます(今回は休校要請は今のところありません)。

(3)施設名や所在地の公表について(4項)

 知事は、まず第2項の「要請」を行い、これに応じない場合に第3項の「指示」を行います。「要請」と「指示」は明確に区別することが難しいですが、「要請」は簡単にいえば「お願い」であり、開催者が対応に苦慮する場合もあることから「要請」という柔らかな言葉が使われたものと思われます。「指示」はそれよりも若干強いものとなります。しかし、ともに不服従の場合の罰則はありません。

 知事は、施設名や所在地などを「公表」できることになっていますが、これには要請や指示に従わない者に対する懲罰的意味はありません。公表はあくまでも「要請」や「指示」を行ったことそれじたいを公表するものであり、公表についての要件として対象者の不服従が前提とはなっていません。ですから、これを懲罰的に運用することは間違っています。

 公的な補償は規定されていません。これは、施設等の使用制限があくまでも新型コロナのまん延防止という観点からのものであること、そして、事業等に危険が内在する場合の社会的制約であり、本来自粛されるべきものであることといった理由からだとされています。

 とは言っても国民や事業者が経済的な困難に遭遇することは間違いありません。この点、法は政府関係金融機関等による公的融資を規定するのみです(60条)。もともと、今回のような全国的で長期にわたるような感染まん延は想定されていなかったのではないかと思われます。不十分な内容だといわざるをえません。

(4)医療等の提供体制の確保に関する措置(47~49条)

 医療機関が不足する場合、知事は臨時のプレハブやテントなどの臨時の医療施設を病院の外などに開設したり、そのための土地等を一時的に使用することができます(49条)。

 これらの実効性を担保するために、立入検査も可能です(72条1項、2項)。この立入検査を拒否した場合は、30万円以下の罰金に処せられます(第77条)。

(5)国民生活および国民経済の安定のための措置

 電気・ガス・水道事業者、運送・通信・郵便事業者等は、その事業の実施について必要な措置を講じなければなりません(52条、53条)。これらを止めることは想定されていません。

 他方、(1)医療品やマスク、食料品などの売り渡しを業者に要請することができ(第55条1項)、(2)これに従わない場合には収用(取り上げること)ができ(同条2項)、(3)業者らが勝手に売らないようにそれらの保管を命じることもできます(同条3項)。違反した場合には、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科されます(第76条)。

(6)財政上の措置について

 国および都道府県は、特別の処分が行われたときは損失を補償しなければならず(62条1項)、また、都道府県は、要請等に従って医療の提供を行う医療関係者がそのために死亡等したときは損害を補償しなければなりません(63条)。

■補足(24条9項と45条の関係)

 緊急事態宣言下ではなくとも、上記のように、都道府県の対策本部長である知事は、住民に対して外出・営業自粛要請を行うことは可能(24条9項)です。

 緊急事態宣言が出されると、今度は知事は45条1項に基づく外出自粛要請、同条2項に基づく営業自粛要請を出すことができます。要請に応じなければ、さらに指示を出します(同条3項)。そして、要請や指示を行ったという事実は(行政の濫用を牽制する意味で)必ず公表されます(同条3項)が、これは上述したように(不服従が公表の要件ではないので)懲罰的な意味合いはなく、あくまでも行政指導の一環であり、市民に対する情報提供として行われます。

 具体的には、24条9項と45条の関係は次のようになります。

 知事がまず第24条9項にもとづいて、たとえば業種を限定して「酒類を提供する飲食店」一般に対する時短営業などの要請を行ったところ、通常どおり営業を続けている「居酒屋A」があった場合は、緊急事態宣言下であれば、その経営者に対して第45条2項に基づいた個別の営業自粛を要請し、さらに同条3項に基づく営業自粛の指示を行う。そして、要請や指示を行ったという事実が同条4項にもとづいて公表されます。(了)

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