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エージェント会社を設立した元浦和レッズのエスクデロ競飛王<後編>

林壮一ノンフィクションライター
(写真:アフロスポーツ)

 2005年に浦和レッズでプロデビューし、日本だけでなく、韓国、中国、タイ、エルサルバドルでプレーし、現在はオーストラリアのノース・ギ―ロング・ウォリアーズでプレーするエスクデロ競飛王(35)が従兄弟と、プロサッカー選手のエージェント会社を立ち上げた。

 その名は<EDS global fútbol experience>。昨日に続き、競飛王の言葉をご紹介する。

写真:エスクデロ競飛王提供 佐々木選手はボカ・ジュニアーズの女子チームで背番号29となった
写真:エスクデロ競飛王提供 佐々木選手はボカ・ジュニアーズの女子チームで背番号29となった

 早くも、<EDS global fútbol experience>と契約する佐々木ユリア選手がボカ・ジュニアーズの一員となり、村上俊輔選手はClub Atlético Germinalに、岩本陸選手はClub Atlético Pilarに入団した。

 「コミュニケーションを取ること。そして、一つ一つのプレー、それぞれが最後になるかもしれない気持ちで取り組んで欲しいと、僕は入団テストに向かう選手たちに告げました。今回は、3人全員がプロ契約を結ぶことが出来、ほっとしています」

写真:エスクデロ競飛王提供
写真:エスクデロ競飛王提供

 カタールW杯ファイナルのPK戦を制し、同大会3度目の優勝を飾ったアルゼンチンは、世界王者だ。サッカーに取り組むそもそもの姿勢が、日本とは大きく違う。その点について競飛王は話した。

 「日本ではハングリー精神という言葉をよく使いますが、本当にこの意味を知ってる選手は少ないです。まず感じて欲しいのは、アルゼンチンでは毎日が人生を左右する勝負だということ。その厳しい環境で、どのように選手がサッカーに向き合っているか、またはアルゼンチンの人々のサッカーに対する熱意、サッカーに対する考え方を理解してもらいたいです。

 世界チャンピオンの国でボールを蹴れば、間違いなく意識は変わります。日本に戻っても、そんな闘志や情熱を忘れずに、かつ謙虚な気持ちを忘れない選手に育ってほしいです。

写真:アフロスポーツ

 僕は7歳から6年間、アルゼンチンでサッカーの基礎を身に付けました。アルゼンチンでは最初に教わるのは、ずる賢さ、足の裏を使う事、ボディーコンタクトです。それら全てをフットサルで学びます。一通り出来るようになって初めて、大きなフィールドでサッカーをします。

 日本にも4歳から12歳までのチームやフットサル大会が沢山あれば、さらに強くなると感じますね。僕がサッカーを始めたばかりの子供をコーチする際には、『自分で考える事』を重視します。サッカーはやらされるのではなく、自分が好きでやるものです。ですから、上達するにはどうしたら良いかを考えてほしいのです。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 誰だって最初から上手くはいかないものです。そんな時は、練習するしかない。自分でメニューを考えることで、何が足りないのか、どうやったら上手くなるのかが分かります。僕も父からずっと、そう言われてきました。小さい頃はずっと一人でドリブル練習、トラップ練習、シュート練習を繰り返しました。

写真:アフロスポーツ

 今後の<EDS global fútbol experience>の狙いは、日本とアルゼンチンの架け橋になる事です。日本人選手をアルゼンチンに連れて行くことで、アルゼンチン選手に日本人の礼儀正しさ、プロ意識を感じてもらいたい。日本人にはアルゼンチンのサッカー文化を見てほしいです。

 そしてJリーグにまたアルゼンチン人が沢山来られる環境にしていきたいですね。父がずっとアルゼンチンと日本のサッカーを繋げたい、あるいは繋げていたのを間近で見てきたからこそ、僕もこういったプロジェクトを立ち上げました。今、父にも多くの問い合わせが届いています。将来的にはチームでのアルゼンチン遠征も考えております」

写真:築田純/アフロスポーツ

 若い世代に<本物>を体感させるーーー。世界チャンピオンの国でボールを追うことが出来たら、人間的にも成長するだろう。ワクワクする事業だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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