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2年連続ダンクコンテスト優勝者の挑戦

林壮一ノンフィクションライター
写真:AP/アフロ

 今年のNBAダンクコンテストは、「188cm83kg」と伝えられるマック・マクラングが、シャキール・オニールを飛び越える圧巻のジャンプを披露し、50点満点を叩き出して優勝した。昨年の王者でもあるマクラングにとっては、2連覇である。

 彼は高校時代のユニフォームを、シャックに着用してもらったうえで、とっておきのパフォーマンスを見せた。今回のダンクコンテストでマクラングに食い下がっていたボストン・セルティックスの顔、ジェイレン・ブラウンも、その跳躍力には拍手を送るしかなかった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 これだけの身体能力がありながら、マクラングはNBAに定着できず、現在、オーランド・マジックの下部組織であるGリーグ、オセオラ・マジックでプレーしている。自身のキャリアで、NBA選手としてコートに立ったのは、僅かに4度だ。

 NBAという組織も、煌びやかなスターたちも、25歳のGリーガーが宴に参加することを快く迎え入れている点が、実にアメリカらしかった。ダンクコンテストにおける連続Vを達成したのは2015年&2016年のザック・ラビーン以来で、他にはネイト・ロビンソン、ジェイソン・リチャードソン、マイケル・ジョーダンしか挙がらない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 大歓声に包まれたマクラングは語った。

「シャックが僕の高校時代のユニフォームを着てくれて、ありがたかった。ちょっと感傷的になってしまった。彼が『あぁ、着るよ。ミスするなよな』って応じてくれたので、『もちろん、しっかり決めますよ』って答えたんだ」

写真:REX/アフロ

 確かにファンの目を釘付けにした見事なダンクで、5人の審査員全員から満点とされたマクラングだが、NBA選手としてのプレーが約束されたわけではない。Gリーガーの年俸とは4万ドルを少し超えるレベル。今回のダンクコンテストで彼が下したブラウンの年俸は、3183万357ドルと、まるで比較にならない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「これは私の物語であり、私はそれを受け入れています」とマックラングは言ったが、その身体に宿った才能を絞り尽くし、花を咲かせてもらいたいものだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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