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再起した第63代日本ライト級チャンプ

林壮一ノンフィクションライター
撮影:筆者

 2023年4月26日、3度目の防衛戦で日本ライト級タイトルを手放した宇津木秀。この12月14日に、およそ8カ月ぶりのリングに上がり、柳堀隆吾を5回KOで下して再起した。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「タイトルを失った4月の仲里周磨戦で反省したことは、第一にメンタル面です。そこを課題に準備してきました。

 リングに上がる前、とても落ち着いていられたんです。強気にはなっていましたが、感情を抑えながら、自分のペースで戦える状態になっていたと思います。僕は緊張し過ぎて熱くなってしまうので、月に2~3回のメンタルトレーニングを受けています。集中しながらも逸る思いを紛らわし、いい緊張感が保てました。

 今の練習メニュー、テーマ、コンディションについてカウンセラーと話し、『次に向けて〇〇しましょう』『試合が近付いたら、1週間ごとに分けて、◎◎のように進んできましょう』という感じなんですが、その成果を実感しています」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 宇津木は2022年2月8日に日本王座に就き、同年6月14日に初防衛に成功。だが、この時の計量後の食事後に嘔吐している。チャンピオンとなったプレッシャーによるものであった。

 「今回は、ドキドキしながら試合当日を待つということは無かったです。程良い緊張感でした。キャリアなのかもしれませんね」

 仲里戦を3回KOで落とした宇津木は、相手のパンチを貰わないことをテーマとして調整した。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「相手のパンチを食らわないようにしていました。足ではずしたいという気持ちもあったんですが、思ったように動かなかったんですよ。カードに頼りっぱなしだったかなと。ただ、頭の動きは意識しました。柳堀選手のパンチは見えていましたね」

 ディフェンス面を強化すると同時に、宇津木は接近しての右アッパー、オーバーハンドライトを的確にヒットすべくトレーニングを重ねた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「柳堀選手は思ったよりも腕が長くて、距離を感じました。そこはやり難かったですね。常に慌てないことだけを考えました。自分のパンチが効いても、フィニッシュさせなくていい。どんどん弱らせていって、最後に決める作戦でした。

 試合を決めた第5ラウンドは序盤に上下にパンチを散らして、上手くパンチが当たっていたので、距離が詰まっていました。で、ちょっとボディーを狙うと見せて、上に打てば入るかなと。やってみたら、ドンピシャでしたね」

 12月14日の勝利で、宇津木は自身の戦績を13勝(11KO)1敗とした。初黒星から確実に何かを掴んだ前日本ライト級王者は、2024年に勝負を懸ける。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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