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間もなくゴング! WBA/IBF/WBOヘビー級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 WBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオン、オレクサンドル・ウシクと、WBAレギュラー王者のダニエル・デュボア戦のゴングまで残すところ6時間となった。同ファイトは、ポーランド、ヴロツワフで催される。

 前日計量は、ウシクが100.2kg、デュボアは105.8kgであった。

写真:ロイター/アフロ

 ウシクがリングに上がるのは、2022年8月20日のアンソニー・ジョシュア戦以来である。

写真:ロイター/アフロ

 WBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオンは、ロシアに侵攻された祖国の状況を受け入れ、叫び声を上げている。

 「アンソニー・ジョシュアとの戦いの後、私は最前線に行き、軍隊との時間を共有した。双眼鏡を覗くと、900メートル先でロシア軍が走っていた。戦車が爆発し、家が壊れる様も見えた。

 手足を失った人々の姿も目に飛び込んできた。まだ歩ける人が死者のように映った。至る所に遺体がある。車で走ると、街自体が死んでいた。エネルギーはゼロになっている。公園には、おもちゃが転がってたが、遊んでいる子供はなかった。やはり、街が息をしていないことを感じた」

写真:ロイター/アフロ

 ウシクは敬虔なクリスチャンである。神への思いも伝える。

 「前線にいる兵士のほとんどが、一般人だ。私が出会った一人は銀行家で、別の方はベーカリーで働き、また他の方は実業家だった。彼らは自由のために戦っている。我々は、自由を勝ち取らなければならない。

 私は誰に対しても怒りを感じたくない。この世界をありのままに愛したい。が、もはや考えを変えた。今、なぜ神が私たちを困難な道に連れて行き、多くの物を奪ったのかを理解した」

写真:ロイター/アフロ

 ウシクは、祖国を背負ってリングに上がる。国民が、3冠ヘビー級チャンピオンにどれだけの思いを寄せているかを十二分に理解している。

写真:ロイター/アフロ

 「繰り返すが、私たちは自由を勝ち取る。神が決して諦めないようにと伝えてくれる。最後まで戦うんだ」

 さて、ウシクはどんなファイトを見せるのか。戦争が終結し、ウクライナ、そしてロシアに一日も早く平和が訪れることを願ってやまない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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