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拳四朗戦まで1週間、合計100ラウンドのスパーをこなした京口紘人

林壮一ノンフィクションライター
撮影:筆者

 10月21日に、12ラウンドのスパーリングを行ったWBAライトフライ級スーパー王者の京口紘人。バンタム級やスーパーバンタム級ら3名のパートナーを相手に、上々の仕上がりを見せた。

 1週間後の統一戦に向け、トータルで100ラウンドのスパーリングをこなしてリングに上がる。

撮影:筆者
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 小林尚睦トレーナーは言う。

 「紘人は色んなパンチを打てるチャンピオンです。更なるパターンのコンビネーションもモノにしました。攻撃が多彩になりましたね。練習中も自分の意見を述べながら、こちらの狙いを即、吸収する力を持っています。

 拳四朗戦で課題としているのは、ミドルレンジでのディフェンスです。拳四朗選手は、例のお酒の騒動でヒールになった後、矢吹正道選手に一度負けて、またタイトルを獲り戻した。今、凄く強くなっていると思います。よく返り咲いたなと、個人的にはリスペクトしていますよ。

 紘人とは噛み合うでしょうね。序盤、足を使うでしょうが、各ラウンドで出方を変えてくると予想します。ただ、相手のパンチが当たる距離っていうのは、こちらのパンチも当たります。踏み込みの差、ステップの差が出るでしょう。僕は紘人が後半にKOすると見ていますよ」

撮影:筆者
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 小林トレーナーは、京口の最大の武器は「確固たる自分を持っている点」だと力説する。

 「アメリカ・テキサスでの試合も、メキシコ・グアダラハラの試合でも、紘人は雰囲気に吞まれることなく、動じなかった。会場にバスで移動したり、ずっとTVカメラに追いかけられていても、それを楽しめるんですよね。

 世界チャンピオンでも、海外の大舞台が大好きだというメンタルって日本人にはなかなかいないじゃないですか。そこで、自分を出し切ることが出来る強みがあります」

撮影:筆者
撮影:筆者

 2016年に大阪商業大学を卒業した京口を迎え入れることを決め、「必ず世界チャンピオンにする」と約束した渡辺均ワタナベジム会長も語る。

 「プロデビューから僅か1年3カ月で世界タイトルを獲得。2階級制覇。16戦全勝11KO。そして何より、2試合連続で海外での防衛に成功したことを私は評価しています。京口の体には、自分でも気付かないほどの自信が宿っているでしょう。

 元々、ボクシングに賭けるひた向きさは確かなものでしたが、ここ数カ月の立ち居振る舞いは、我がジム全員の手本になっています。

 拳四朗は1敗していますよね。無敗と1敗には大きな差があります。それプラス、海外で修羅場を潜った精神力がアドバンテージになるでしょう。大丈夫、勝ちますよ!」

撮影:筆者
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 確かに寺地拳四朗が酒に酔い、不法侵入及び器物破損といった話題を巻いていた頃、WBA王者は地道にトレーニングを重ねて己を追い込んでいた。ボクシングを始めた頃に教えを受けた辰吉丈一郎の言葉を、京口が忘れたことは無い。だからこそ、自分を高めるために敵地での戦い---海外に踏み出したのだ。

 渡辺の言葉である「1敗と無敗の差」は、ボクシングだけでなく、自分を律すること、ボクシングに対する姿勢の差とも受け取れる。

 11月1日、さいたまスーパーアリーナ。3年1カ月ぶりに日本のリングに上がる京口は、どんな進化を見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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