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揺れるボストン・セルティックス

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨シーズンのボストン・セルティックスは、12年ぶりにNBAファイナルまで駒を進めた。

 セルティックスと言えば、忘れられないのは2008年シーズンだ。ケビン・ガーネット、ポール・ピアース、レイ・アレンの3大巨頭に、生意気盛りのラジョン・ロンドを束ねたドック・リバース監督のコーチングは見事だった。

 ファイナルの相手となったロスアンジェルス・レイカーズは、コービー・ブライアントがチームを牽引したが最終戦を前に力尽きた。

写真:ロイター/アフロ

 監督就任1年目で、セルティックスをファイナルまで勝ち上がらせたイーメイ・ユドーカの手腕が評価されたが、彼は1年間の職務停止処分を受けた。したがって、2022-23シーズンは1試合も指揮を執れない。セルティックスがチームのポリシーとして、そう判断した。

 理由は、セルティックスに勤務する複数の女性従業員と不適切な関係にあったことが公になったからである。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ユドーカは、サンアントニオ・スパーズで9季アシスタントコーチを務め、満を持してヘッドコーチの座を掴んだというのに……。昨シーズンのファイナルでは、2勝4敗でゴールデンステイト・ウォリアーズに屈したが、セルティックスの戦いぶり、間違いなくファンを魅了した。

 チームの決定を受け入れたユドーカは、「選手、ファン、セルティックスという組織、また自分の家族に謝罪します。チームを混乱させてしまい、誠に申し訳ございません」と、スポーツチャンネルESPNを通じて声明を出した。

エース、テイタム
エース、テイタム写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 現在のセルティックスのエースであるジェイソン・テイタムは、「彼はそこから何を学んだんだろうね」と発言。新シーズンに向けたキャンプスタート直前で準備を重ねていたところだった。

 このクラスの大物となると、それほど動揺は無さそうだが、ポイントガードのマーカス・スマートは、球団発表を耳にした折「地獄に突き落とされた感じだ。ただ、驚くばかりだ。誰も実際に起きたことを知らない。ここ数日、困惑しているよ」と語った。

昨季ファイナルで闘志を見せたスマート
昨季ファイナルで闘志を見せたスマート写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 シューティングガードのジェイレン・ブラウンも「誰も真実を伝えてくれない」、パワーフォワードのグラント・ウィリアムズは「何も知らされていないよ」と述べた。

背番号7のブラウンも昨シーズン、いい仕事をした
背番号7のブラウンも昨シーズン、いい仕事をした写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 今シーズンはアシスタントコーチであるジョー・マズーラが采配を振るとのことだが、その場しのぎ感は否めない。ここで選手たちが結束するか、あるいはバラバラになるかだが、突然の指揮官交代はマイナスであろう。

 2021-2022シーズンで、「強いセルティックス」が戻っていただけに、残念だ。17度の優勝を誇る名門の奮起に期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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