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アルゼンチン人コーチが語る「最大のライバル、ブラジルを追う29試合負けなしの母国代表」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、チェンマイ・ユナイテッド(タイ1部リーグ)所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 2019年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を執る彼が、現在ワールドカップ南米予選2位で首位ブラジルを追う祖国について語った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 来る26日、ワールドカップ南米予選で、我がアルゼンチン代表はベネズエラと戦います。首位のブラジルとは勝ち点4差。あちらが12勝0敗3引き分けで我々は10勝0敗5引き分け。互いに残すところ3ゲームで、最終戦でブラジルとの直接対決となります。

 現在のブラジルは本当に強いです。チッチ 監督は、実にいいサッカーをやっています。CBのチアゴ・シウバが強く、コウチーニョも調子が上がってきたようですし、カゼミーロも安定しています。今ケガをしていますが、相変わらずネイマールも怖いし、レアル・マドリードのロドリゴとヴィニシウス・ジュニオールも危険なFWですよね。

 でも、アルゼンチンも2019年7月3日にコパアメリカ準決勝でブラジルに0-2で敗れて以来、29試合負けなしと好調を維持しているんですね。

写真:ロイター/アフロ

 29試合のなかには、昨年のコパアメリカ決勝で、ブラジルに勝利したゲームも含まれています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210712-00247465

 僕は、現時点でアルゼンチンとブラジルに差はまったく無いと思います。

 今日のアルゼンチンは若手の台頭が目覚ましく、世代交代がいい感じで進んでいます。さらに、昨シーズンの国内リーグ得点王でプレミアリーグへの移籍が秒読み段階にあるフリアン・アルバレス、アトレチコ・マドリードのボランチ、ロドリゴ・デ・パウル、ユベントスのパウロ・ディバラ、パリ・サンジェルマンのディ・マリア、そしてメッシと、左利きの選手が多いんですよ。

 チームを構成する際、複数のレフティーが入っていると、非常にいいアクセントを生みます。

リオネル・セバスティアン・スカローニ監督
リオネル・セバスティアン・スカローニ監督写真:ロイター/アフロ

 また、リオネル・セバスティアン・スカローニ監督は43歳と若く、選手とのコミュニケーションの取り方が上手いんです。決して上から目線になること無く、一人一人と会話する時間を持ち、じっくりと意見を聞く人です。

 「君の役割は〇〇だが、どうやりたい?」「今の要求について思うところはあるか?」「誰との息が合う?」「やり難くないか?」なんて指揮官に聞かれたら、プレーし易いじゃないですか。言葉に力を持つ監督なんですね。

 これまでのアルゼンチン代表監督にはいなかったタイプで、その手腕は国内で高く評価されています。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 不動のエースがメッシであることは間違いありませんが、34歳の彼にとって最後のW杯になるでしょう。長く「代表では勝てない」と非難されてきたメッシも、ようやく去年のコパアメリカで優勝し、アルゼンチン国民の溜飲を下げました。

 1978年、1986年のV以降、強豪と言われながらも勝てていないので、代表選手たちは「歴史を変えなければいけない」という思いが強く、エネルギーに満ち溢れています。そして、メッシは有終の美を飾りたいと、高いモチベーションでアルビセレステを纏っています。

 秋の本大会に向け、南米予選の残り3試合、特にブラジル戦をいかに勝利するか。本当に見物だと感じますね。日本の皆さんも、きっとアルゼンチンサッカーから学ぶ点があるでしょうから、是非、大いに期待しながらご覧になってください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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